こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『近年、腰椎手術はOLIFやXLIFが増えています~PLIFは今後減っていく?~』
について解説させていただきます。
目次
◆腰椎手術概論
◆PLIFについて
◆椎体間固定術の侵入経路
◆XLIF、OLIFについて
◆腰椎手術概論
腰椎の手術では大きく分けて2つのコンセプトがあります。
・除圧術
・固定術
この2つです。
または除圧術と固定術の組み合わせた手術があります。
・除圧術はその名の通り圧を下げる手術になります。
脊髄付近の退行変性や加齢的変化を中心とした軟部組織等による、硬膜(脊髄、馬尾)への狭窄や圧迫されている状態を開放する為に、椎弓切除術が行われることがほとんどです。
椎弓切除術も棘突起縦割式や片側進入両側除圧、棘突起切除など何種類か方法がありますが、椎弓や黄色靭帯などを切除していき、硬膜(脊髄、馬尾)への狭窄、圧迫を解除することを目的に行います。
・固定術に関しては、その名の通り、脊椎をスクリューとロッドで固定します。
固定術は腰椎変性すべり症や脊椎の変形の進行予防、圧迫骨折や破裂骨折の圧潰進行予防などで行われます。
1椎間や2椎間固定、またはそれ以上の椎間にまたがって固定術がされると、その固定された椎間は動きが失われますが、不安定性の状態はなくなります。
◆PLIFについて
そして除圧術と固定術の2つが組み合わされている代表的な手術にPLIF(プリフ)があります。
PLIF:Posterior Lumbar Interbody Fusion(腰椎後方椎体間固定術)
PLIFは除圧術+椎体間固定術+後方固定術と3つの手術操作がされています。
上の写真の症例のように側弯が強かったり、すべり症があったり、椎間関節を切除し除圧しなければならない症例になると、椎弓切除術だけでは術後の不安定性が危惧されます。
よって固定術が追加されるケースが多くなります。
固定術を追加する場合、後方固定(スクリューとロッドによる固定)が一般的です。
その場合は
1椎弓切除術+PLF(Posterior Lateral Fusion)
2椎弓切除術+PPS:percutaneous pedicle screw(経皮的椎弓根スクリュー)
3PLIF
のいずれかが選択されることが多いです。
1椎弓切除術+PLF(Posterior Lateral Fusion)はOPEN(術創部を展開して)で固定術を行います。
2椎弓切除術+PPS:percutaneous pedicle screw(経皮的椎弓根スクリュー)は椎弓切除術を終えて一旦術創部を閉創してから経皮的にスクリューを打ち込み(PPS)固定術を施行します。
※PPS:
経皮的に透視やナビゲーションシステムを使用し、椎弓根経由で椎体内にスクリューを挿入し固定する
通常は展開が不要であり、軟部組織の損傷も軽減し低侵襲
3PLIF
一方PLIFになるとInterbody Fusion(椎体間固定術)の操作が加わります。
後方の固定だけだと安定性が不十分と判断される場合は、上の椎体と下の椎体を固定し癒合させるため、椎間板を一部切除し、人工の椎間板のようなケージというものを設置します。
ケージには人工骨や自家骨を埋め込み、上の椎体と下の椎体を癒合しやすくさせる工夫がされています。
よって椎体(前方)部分と後方固定部分で固定する主義となっております。
ただPLIFは後方からの操作になりますので、術侵襲が大きくなります。
傍脊柱筋、椎弓、椎間関節、黄色靭帯と侵襲が入り、硬膜をよけてケージを左右に1つずつ挿入するために、術侵襲が大きくなり、出血量も多くなる傾向にあります。
そういった観点から、術後の腰下肢痛の残存率も高いとの報告も散見されます。
Interbody Fusion(椎体間固定術)の術式ではPLIFが一般的にあり一番有名です。
一般的な整形外科医や脊椎外科医ならPLIFをできる医師は多いです。
◆椎体間固定術の侵入経路
近年は後方からの進入路だけでなく様々な進入路から低侵襲のInterbody Fusion(椎体間固定術)が報告され始めています。
・ALIF:Anterior Lumbar Interbody Fusion(腰椎前方椎体間固定術)
1930年代にCapenerがALIFを報告(長管や尿管、大血管への手術操作が必要で重篤な合併症の報告も認める)
・PLIF:Posterior Lumbar Interbody Fusion(腰椎後方椎体間固定術)
1953年にClowardがPLIFを報告し、現在では最も一般的なInterbody Fusion(椎体間固定術)の手技となっている。
ALIFの様々な重篤な合併症を回避するきっかけとなる手術手技となる。
・TLIF:Transforminal Lumbar Interbody Fusion(経椎間孔(片側進入)腰椎椎体間固定術)
1982年にHarmsがTLIFを報告されておりPLIFと比較するとやや低侵襲となります。
TLIF:Transforminal Lumbar Interbody Fusion
経椎間孔(片側進入)腰椎椎体間固定術
PLIFが後方正中からのアプローチであるのに対して、TLIFは後方のやや片側よりからの進入路となります。
対側の後方スクリューをPPS(経皮的椎弓根スクリュー)で打ち込むとPLIFより低侵襲となります。
・LLIF:Lateral Lumbar Interbody Fusion(腰椎側方経路椎体間固定術)
PLIFやTLIFよりも側方からの進入路のより低侵襲の手術手技になります。
XLIFやOLIFに細分化されています。
後方からの手術と比較し、骨削除や硬膜操作が加わらないため、手術時間や出血量、術侵襲が少なくなると言われています。
後方のスクリュー固定は側臥位でのInterbody Fusion(椎体間固定術)を終えてから腹臥位でPPS(経皮的椎弓根スクリュー)を打ち込むことが一般的です。
エキスパートが行えば1時間30分から2時間程度で手術が終わります。
・XLIF:eXtreme Lateral Interbody Fusion(側方経路腰椎椎体間固定術)
2001年にPimentaがが開発した内視鏡下に大腰筋内に側方からのアプローチする術式が現在XLIF(2006年)として一般化されている。
・OLIF:Oblique Lateral Interbody Fusion (腰椎前外側椎体間固定術)
2012年にHynesがOLIFを報告しています。
腹部前側方部からのアプローチとなります。
・PLF:Posterior Lateral Fusion(腰椎後外側固定術)
Interbody Fusion(椎体間固定術)のない後方からの固定術のみ
◆XLIF、OLIFについて
近年、症例報告数が増加傾向である、XLIF、OLIFについて少し解説します。
上の写真のように画像所見で矢状面から見るとPLIFとOLIFは違いがわからないと思われます。
違いとしてはアプローチの進入路とケージの大きさにあります。
XLIFやOLIFのようなLLIFでは
★低侵襲
★ケージが大きいこと
が最大のメリットとなります。
Interbody Fusion(椎体間固定術)での一般的なケージの挿入は
XLIFやOLIFのようなLLIFでは大きいサイズのものを1つ挿入します。
PLIFやTLIFでは小さいサイズのものを左右に1つずつ挿入します。
PLIFやTLIFといった後方アプローチでは硬膜をよけて椎体間にケージを挿入するため、大きいものを挿入できません。
一方、XLIFやOLIFのようなLLIFでは側方経路でのアプローチですので、硬膜の操作が必要ない為、大きなケージを挿入することができます。
このことが利点として働きます。
★ケージが大きいメリット(XLIF/OLIF)
・ケージが大きいため、終盤と接触する面積が大きくなり、終盤損傷に伴うケージの沈み込みを抑制できる。
・大きいケージの挿入により、椎間板腔の左右対称性が再現され、アライメントの矯正が得られる。
・椎体横径と同サイズのケージになるため、側屈の制動が強い
・後縦靭帯や黄色靭帯を温存した状態で椎体間高の高さを回復させるため、これらの靭帯が左右対称性に再度緊張することで靭帯性の整復が得られます。
椎間高の回復に伴って、椎間孔が回復し、黄色靭帯や後縦靭帯が頭尾方向に牽引され、肥厚・弛緩していた靭帯が伸展され、硬膜への圧排が軽減する。
XLIFやOLIFのようなLLIFはこのようなメリットがあります。
後方組織の除圧術が追加で必要な症例では、PPSを打ち込む前に椎弓切除術を追加するケースもあります。
ちなみにOLIFでは以下のような術侵襲になります。
・OLIFの術侵襲
皮膚、皮下組織、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、後腹膜腔、大腰筋
XLIFもOLIFも大腰筋の侵襲がありますので、術側大腰筋が一時的に機能不全を起こす症例が多いですが、長期的に見ると回復することが多いです。
XLIFやOLIFは脊椎外科医や整形外科医の中でもエキスパートでなければできない手術になります。
しかし、PLIFと比較して低侵襲であり、ケージも大きくできるため、アライメントの再獲得や硬膜の圧排からの回復が得られ、メリットが大きいことから、今後さらに増加傾向になるのではないかと思われます。
今回は、『近年、腰椎手術はOLIFやXLIFが増えています~PLIFは今後減っていく?~』について解説させていただきました。