こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『慢性アキレス腱症への等尺性収縮運動で疼痛は即時的に軽減するのか?』について解説させていただきます。
アキレス腱は人体の中で最大の腱ではありますが、アキレス腱症は非常に発生頻度の高いスポーツ外傷として報告されています。
治療法に関しては手術療法、保存療法ともに成績は良好とされています。
アキレス腱症はプロスポーツ選手から、一般のレクリエーションスポーツレベルの方まで生じる外傷であります。
『アキレス腱断裂の治療で早期運動療法は有効か?(保存療法&手術療法)』
『アキレス腱断裂を予防する方法とは(アキレス腱断裂 診療ガイドライン2019より)』
そんな中、2020年に、アキレス腱症に対して等尺性収縮運動が即自的に疼痛を軽減させるかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Scand J Med Sci Sports (IF: 4.22; Q1)
. 2020 Sep;30(9):1712-1721.
doi: 10.1111/sms.13728. Epub 2020 Jun 14.
Isometric exercises do not provide immediate pain relief in Achilles tendinopathy: A quasi-randomized clinical trial
アキレス腱症においてアイソメトリックエクササイズは即時的な疼痛緩和をもたらさない。準ランダム化臨床試験
Arco C van der Vlist 1, Peter L J van Veldhoven 2, Robert F van Oosterom 2, Jan A N Verhaar 1, Robert-Jan de Vos 1
Affiliations expand
- PMID: 32474979 PMCID: PMC7496962 DOI: 10.1111/sms.13728
Abstract
Background: Isometric exercises may provide an immediate analgesic effect in patients with lower-limb tendinopathy and have been proposed as initial treatment and for immediate pain relief. Current evidence is conflicting, and previous studies were small.
概要
背景 等尺性運動は下肢腱障害患者に即時的な鎮痛効果をもたらす可能性があり、初期治療や即時的な疼痛緩和のために提案されてきた。現在のエビデンスは相反するものであり,先行研究は小規模であった.
Objective: To study whether isometric exercises result in an immediate analgesic effect in patients with chronic midportion Achilles tendinopathy.
目的 慢性アキレス腱症患者において,アイソメトリックエクササイズが即時的な鎮痛効果をもたらすかどうかを検討する.
Methods: Patients with clinically diagnosed chronic midportion Achilles tendinopathy were quasi-randomized to one of four arms: isometric calf-muscle exercises (tiptoes), isometric calf-muscle exercises (dorsiflexed ankle position), isotonic calf-muscle exercises, or rest. The primary outcome was pain measured on a visual analogue scale (VAS) score (0-100) during a functional task (10 unilateral hops) both before and after the intervention. Between-group differences were analyzed using a generalized estimation equations model.
方法 臨床的に慢性アキレス腱症と診断された患者を、等尺性下腿三頭筋運動(つま先立ち)、等尺性下腿三頭筋運動(足関節背屈位)、等張性下腿三頭筋運動、安静の4群のいずれかに準ランダム化した。主要アウトカムは,介入前と介入後の機能的課題(片側ホップ10回)中の疼痛をVASスコア(0~100)で測定した.群間差は一般化推定方程式モデルを用いて解析した。
Results: We included 91 patients. There was no significant reduction in pain on the 10 hop test after performing any of the four interventions: isometric (tiptoes) group 0.2, 95%CI -11.2 to 11.5; isometric (dorsiflexed) group -1.9, 95%CI -13.6 to 9.7; isotonic group 1.4, 95%CI -8.3 to 11.1; and rest group 7.2, 95%CI -2.4 to 16.7. There were also no between-group differences after the interventions.
結果 91名の患者を対象とした。等尺性(つま先立ち)群 0.2(95%CI -11.2~11.5), 等尺性(背屈)群 -1.9(95%CI -13.6~9.7), 等張性群 1.4(95%CI -8.3~11.1), 安静群 7.2(95%CI -2.4~16.7) 4つの介入のいずれにおいても10ホップの痛みには有意差は認められなかった.また、介入後の群間差はなかった。
◆論文の結論
Conclusion: The isometric exercises investigated in this study did not result in immediate analgesic benefit in patients with chronic midportion Achilles tendinopathy. We do not recommend isometric exercises if the aim is providing immediate pain relief. Future research should focus on the use of isometric or isotonic exercise therapy as initial treatment as all exercise protocols used in this study were well-tolerated.
結論 本研究で検討した等尺性エクササイズは、慢性アキレス腱症患者において、即時的な鎮痛効果をもたらさなかった。我々は、即時の疼痛緩和を目的とするのであれば、アイソメトリックエクササイズを推奨しない。本研究で使用された全ての運動プロトコルは良好な忍容性を有していたため、今後の研究では初期治療としてアイソメトリックまたはアイソトニック運動療法の使用に焦点を当てるべきである。
◆まとめ
上記論文では慢性アキレス腱症の患者91名に対して等尺性下腿三頭筋運動(つま先立ち)群、等尺性下腿三頭筋運動(足関節背屈位)群、等張性下腿三頭筋運動群、安静群の4群に振り分け、即自的な疼痛の軽減効果があるかを検討しております。
評価は介入前、介入後の片脚ホップ10回での疼痛(VAS)で測定しています。
結果として、安静群以外は比較的痛みの軽減はされていますが、有意差はなく、4群間での有意差もなかったそうです。
上記論文の結果から考えると、慢性アキレス腱症に対して、疼痛を即時的に軽減させるという観点では等尺性収縮は有効ではなかったようです。
しかしながら、等尺性収縮運動は早期の初期治療としては有効なトレーニングであると思われますので、適応を考えて選択するべきかと思います。
今回は、『慢性アキレス腱症への等尺性収縮運動で疼痛は即時的に軽減するのか?』について解説させていただきました。