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『外反母趾に対する装具療法は有効か?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『外反母趾に対する装具療法は有効か?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

について解説させていただきます。

 



外反母趾は、母趾中足指節(MTP)関節で母趾が外反した変形であるとされています。

外反母趾の要因としては様々ですが、遺伝や性差、加齢による影響が挙げられ、特に女性に圧倒的に多いとされています。

また、ハイヒールやつま先の細い靴を多用することで、第1中足指節関節(母趾MTP関節)に外反力が作用して変形すると、一般的には認識されております。

外反母趾の定義としては、外反母趾角度が20°以上を外反母趾としています(外反母趾診療ガイドライン 2014)。

外反母趾が発症しやすい要因としては

解剖学的要因:第一中足骨内反、足根中足関節の不安定性、足趾の長さ、全身性関節弛緩

外的要因:体重、靴の形態

などが一般的に挙げられていますが、明確にはなっていないものもあります。

 



◆外反母趾の特徴:

・第一中足骨の内反

・母趾MTP関節部の突出

・母趾基節骨の外転、回内変形

・開張足

 



◆外反母趾変形を生じる病態

・母趾MTP関節部での外反と内側支持機構の弛緩

・第1中足骨の内反

・扁平足

・開張足

・母趾の回内

・母趾種子骨の外側偏位

・M1-M2角が大きい(第1中足骨と第2中足骨の長軸がなす角)

・第1中足骨が長い

・第1中足骨頭が丸い

・種子骨の外側偏位

など

 



◆外反母趾の症状

・中足痛

・第2趾MTP関節脱臼、足趾変形

・第2,3TMT(足根中足関節)関節症

・趾節間外反母趾

・内反小趾

・感覚障害

・軟骨損傷

・種子骨―第1中足骨関節の関節症

・内転中足

・母趾の筋力低下

・歩行障害

・外反母趾が足部より中枢に及ぼす影響(膝関節など)

など

 



◆外反母趾診療ガイドライン2022 改定第3版

外反母趾に関しては、2008年に初版の「外反母趾 診療ガイドライン」が出版され、その6年後である2014年には改訂第2版が南江堂から出版されています。

そして2022年5月27日に改訂第3版が出版されました。

ガイドラインは約6年で、時代遅れの傾向になることがあり、3~5年で更新するべきとの見解があるようです。

このガイドラインでは、世界中から有益な論文を様々な視点から検証し、再編された後に出版されています。


【監修】日本整形外科学会、日本足の外科学会

初版は1982年から2002年までの論文を検索しており、改訂第2版では2003年から2012年の範囲でヒットした2,500件以上の論文から199件が新たに追加されております。

改定第3版では2014年以降にランダム化比較試験(RCT)の論文が増えており、これらがより多く反映されているとのことです。

 



◆外反母趾に対する装具療法のエビデンス

このガイドラインの中から、

『外反母趾に対する保存療法として装具療法は有用か』

という項目がありますので見てみたいと思います。

この項目では世界中の論文7編から再編されています。

推奨文と推奨グレードの基準に関しては以下の通りです。

 

【推奨文】

★軽度から中等度の外反母趾に対して運動療法を行うことを弱く推奨する

・推奨度2 エビデンスの強さC

外反母趾に対しては、歩行時や夜間に使用する矯正装具、インソールなどが主に用いられています。

装具療法による除痛効果と変形矯正効果について検討されています。

 



◆除痛効果

第3版で新たに検索された論文は3編ありました。

軽度から中等度外反母趾に対して、custom-mold siliconeのtoe separatorを夜間に最低6時間以上装着して治療した装具療法群と対照群(無治療)の成績を比較した報告(Chadchavalpanichaya N,et al:Prosthet Orthot Int.2018)では、12か月後の疼痛については、対照群と比較して装具療法群のほうが有意に減少していたとのことです。しかし、装具療法と併用し、保存療法(通常のフットケア、靴指導、薬物療法)もそのまま継続されていたことから、夜間装具のみの除痛効果かどうかは明らかではないとのこと。

 

また、軽度から重度までの外反母趾に対して、カスタムメイドの足底挿板(インソール)を用いて、その成績を前向きに調査した研究(Nakagawa R,et al:J Orthop Sci.2019)では、治療後は時間経過とともに疼痛が有意に減少し、治療後12か月で疼痛スコアは最低となっていたと報告されています。さらに、この除痛効果は治療後24か月にわたって維持されていたとのことです。この論文では足底挿板(インソール)単独の治療となっています。

 

中等度外反母趾に対してシリコン製のtoe separatorを1日8時間以上装着して、さらに母趾外転筋の筋力強化トレーニングを週に3セッション、12週間行って、その成績を調査した報告(Abdalbary SA,et al:J Am Podiatr Med Assoc.2018)では、装具療法と運動療法を併用した群でVASが治療前の平均56mmから3か月後に22mmまで有意に低下した。1年後も24mmとその効果は持続していたとのことです。一方、対照群(自然経過)では疼痛は改善しておらず、両群間でも有意な差を認めています。しかし、この論文では装具療法単独ではなく、運動療法も併用しているため、装具療法のみの除痛効果と判断するのは困難であったとされています。

以上のように装具療法単独での治療効果については質の高い論文が不十分と判断され、推奨Grade は『C』であり弱い根拠に基づいているまでで、とどめられています。

 



◆変形矯正効果

第3版で新たに検索された論文は2編ありました。

軽度から中等度外反母趾に対し、custom-mold silicone toe separatorを夜間に最低6時間以上装着していた装具療法群と、未治療の対象群を比較した報告(Chadchavalpanichaya N,et al:Prosthet Orthot Int.2018)では、12か月後のHV角(外反母趾角)が装具群で平均3.3°減少し、対照群では1.9°増加となり、両群間で統計的に有意な差が認められたとのことです。

また、軽度から重度までの外反母趾に対して足底挿板(インソール)を用いた前向き介入研究(Nakagawa R,et al:J Orthop Sci.2019)では、2年後のHV角(外反母趾角)の変化は認めなかったと報告されています。この研究では重症度の内訳として、軽度(HV角20~29°)7例(13%)、中等度(HV角30~39°)13例(25%)、重度(HV角40°以上)33例(62%)と中等度から重度の症例が多かったとのことです。

変形矯正効果については質の高い論文が少ないとのことから、推奨Grade は『C』であり弱い根拠に基づいているまでで、とどめられています。

これらのように外反母趾に対する装具療法については、除痛および変形矯正効果は推奨GradeCと弱い根拠に基づいて推奨されております。

今回は、『外反母趾に対する装具療法は有効か?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

について解説させていただきました。

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