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『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する手術および保存療法各種の成績は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する手術および保存療法各種の成績は?』

について解説させていただきます。

 



ジャンパー膝(膝蓋腱炎)はBlazinaら(1973年)によってはじめて定義されております。

ジャンプや着地、ダッシュ等の動作が頻繁に繰り返され、膝伸展機構(大腿四頭筋―膝蓋骨―膝蓋腱―脛骨結節)に過度の負荷がかかることで引き起こされる慢性障害とされています。

症状としては膝に痛みがあらわれますが、特に膝蓋骨の下方に圧痛を認めることが多いです。

バスケットボールやバレーボールなどの跳躍動作を繰り返すスポーツに多いoveruse syndromeのうちのひとつとされています。

ジャンパー膝の発症要因としては様々ですが、特に、大腿四頭筋の柔軟性低下や優れた跳躍能力等の特徴がみられることが報告されています(Henk W,et al:Br J Sports Med.2011)。

 

そんな中、2017年に、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)に対する、手術および保存療法各種の効果を検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところであります。

 



◆PRP(多血小板血漿)療法とは

platelet-rich plasma:PRP療法(多血小板血漿)とは、自分の血液を採取して、特殊な技術を駆使し、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。

そして、自分の傷んでいる部位に注射することで組織の修復や関節炎の症状を軽減させ、早期治癒を図る再生医療であります。

早期の競技復帰をめざしたプロスポーツ選手も、多血小板血漿(PRP)療法を行っていることもあります。

ヨーロッパやアメリカでは、自己治癒力をサポートする治療として頻繁に行われているようです。

現時点(2022年7月)では多血小板血漿(PRP)療法は自費診療になりますので、少し治療費は高価になります。

 



◆体外衝撃波治療(shock wave)

体外衝撃波治療(shock wave)は衝撃波を患部に照射する新しい整形外科の治療法です。腱付着部炎などの有痛性疾患の痛みをとるために応用されています。

1回の治療時間は約10分で、一定の期間をあけて、複数回照射を実施します。

体外衝撃波治療は集束型衝撃波と拡散型圧力波の2種類あり、集束型の方が治療効果は高いですが、治療者は医師に限定されます。拡散型については収束型と比較すると効果は少し劣りますが、医師の指示の下、理学療法士が治療を実施することが可能です。

日本では集束型においては難治性足底腱膜炎に対して、保険が適応されています。(2022年7月現在)

拡散型については消炎鎮痛の分類で保険適応されています。

よって、日本での体外衝撃波治療(shock wave)は、自費診療で行っている診療機関も多くあります。

 



◆論文紹介

Review

 Arthroscopy (IF: 4.77; Q1)

. 2017 Apr;33(4):861-872.

 doi: 10.1016/j.arthro.2016.11.007. Epub 2017 Jan 16.

Treatment Options for Patellar Tendinopathy: A Systematic Review

膝蓋腱症の治療オプション。システマティックレビュー

Joshua S Everhart 1Devon Cole 2John H Sojka 2John D Higgins 2Robert A Magnussen 1Laura C Schmitt 3David C Flanigan 4

Affiliations expand

Abstract

Purpose: To compare the efficacy of common invasive and noninvasive patellar tendinopathy (PT) treatment strategies.

概要

目的:一般的な侵襲的および非侵襲的な膝蓋腱症(PT)の治療戦略の有効性を比較することである。

Methods: A systematic search was performed in PubMed, Google Scholar, CINAHL, UptoDate, Cochrane Reviews, and SPORTDiscus. Fifteen studies met the following inclusion criteria: (1) therapeutic outcome trial for PT, and (2) Victorian Institute of Sports Assessment was used to assess symptom severity at follow-up. Methodological quality and reporting bias were evaluated with a modified Coleman score and Begg’s and Egger’s tests of bias, respectively.

方法は以下の通り。PubMed、Google Scholar、CINAHL、UptoDate、Cochrane Reviews、およびSPORTDiscusで系統的検索を行った。15の研究が以下の包括的基準を満たした。(1) PTの治療成績試験、(2) Victorian Institute of Sports Assessmentを使用してフォローアップ時の症状重症度を評価したもの。方法論の質と報告の偏りは、修正ColemanスコアとBeggの偏り検定、Eggerの偏り検定でそれぞれ評価した。

Results: A total of 15 studies were included. Reporting quality was high (mean Coleman score 86.0, standard deviation 9.7), and there was no systematic evidence of reporting bias. Increased duration of symptoms resulted in poorer outcomes regardless of treatment (0.9% decrease in improvement per additional month of symptoms; P = .004). Eccentric training with or without core stabilization or stretching improved symptoms (61% improvement in the Victorian Institute of Sports Assessment score, 95% confidence interval [CI] 53% to 69%). Surgery in patients refractory to nonoperative treatment also improved symptoms (57%, 95% CI 52% to 62%) with similar outcomes among arthroscopic and open approaches. Results from shockwave (54%, 95% CI 22% to 87%) and platelet-rich plasma (PRP) studies (55%, 95% CI 5% to 105%) varied widely though PRP may accelerate early recovery. Finally, steroid injection provided no benefit (20%, 95% CI -20% to 60%).

結果 合計15件の研究が含まれた。報告の質は高く(平均Colemanスコア86.0、標準偏差9.7)、報告の偏りを示す系統的な証拠はなかった。症状の期間が長くなると、治療に関係なく転帰が悪くなった(症状が1ヵ月長くなるごとに改善度が0.9%減少;P = 0.004)。体幹の安定化またはストレッチを伴う、または伴わない偏心トレーニングは症状を改善した(Victorian Institute of Sports Assessmentスコアで61%の改善、95%信頼区間[CI]53%~69%)。非手術的治療に抵抗性の患者に対する手術も症状を改善し(57%、95%CI 52%~62%)、関節鏡アプローチと開腹アプローチで同様の結果が得られた。衝撃波(54%、95%CI 22%~87%)および多血小板血漿(PRP)(55%、95%CI 5%~105%)の研究結果は、PRPが早期回復を促進する可能性はあるものの、大きく異なるものであった。最後に、ステロイド注射は利益をもたらさなかった(20%、95%CI -20%~60%)。

 



◆論文の結論

Conclusions: Initial treatment of PT can consist of eccentric squat-based therapy, shockwave, or PRP as monotherapy or an adjunct to accelerate recovery. Surgery or shockwave can be considered for patients who fail to improve after 6 months of conservative treatment. Corticosteroid therapy should not be used in the treatment of PT.

結論 PTの初期治療は、回復を促進するための単独療法または補助療法として、遠心性収縮スクワットベースの療法、衝撃波、またはPRPで構成することができる。6ヶ月の保存的治療で改善しない患者には、手術や衝撃波を検討することができる。PTの治療において、コルチコステロイド療法は使用すべきではない。

 



◆まとめ

上記論文では、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)に関する包括的基準を満たした15論文から治療オプション(手術、保存療法各種)について、治療効果を検証しております。

症状の期間が長くなると、治療に関係なく転帰が悪くなるとのことです(症状が1ヵ月長くなるごとに改善度が0.9%減少)。

保存療法においては、遠心性収縮トレーニングによって症状は改善するそうです(Victorian Institute of Sports Assessmentスコアで61%の改善)。

また、体外衝撃波の改善率は54%、多血小板血漿(PRP)の改善率は55%であり早期回復を促進する可能性があるとのことです。

ただし、ステロイド注射の効果は乏しかったようです(改善率20%)。

保存療法に抵抗性のある患者に対する手術は症状改善率57%であり、関節鏡アプローチと開腹アプローチで同様の結果が得られています。

上記論文の結果を踏まえると、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の初期治療としては保存療法として、スクワットのような遠心性収縮トレーニング、体外衝撃波、またはPRP(多血小板血漿)療法が有効と思われます。

ただし、ステロイド注射は望ましくないとのことです。

また、6ヶ月の保存的治療で改善しない患者においては、手術を視野に検討しても良いかもしれませんね。

今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する手術および保存療法各種の成績は?』

について解説させていただきました。

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