こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『足根洞症候群に対しての手術は有効か?』
について解説させていただきます。
足根洞症候群:sinus tarsi syndromeは、O’Conner(J Bone Joint Surg.1958)が腓骨外果前方に開く、足根洞の圧痛と後足部の疼痛、不安定感を特徴とする症候群と報告しています。
外側靭帯損傷とは異なり、腓骨傾斜や足関節前方引き出しなどの足関節不安定性がないにもかかわらず、長期に外果周囲の歩行時痛や圧痛、不安定感を訴える症例があるのが特徴としています。
足根洞症候群の原因は明確ではないですが、距骨下関節嚢や骨間距踵靭帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、瘢痕化による骨間距踵靭帯の機能不全などがあげられています。
局所麻酔薬による症状の消失が治療的診断法で、後距骨下関節造影と腓骨筋の筋電図により客観的な所見が得られるとされています。
そんな中、2018年に、足根洞症候群に対しての手術の成績を検討した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
◆論文紹介
Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc (IF: 4.34; Q1)
. 2018 Oct;26(10):3135-3139.
doi: 10.1007/s00167-017-4813-2. Epub 2017 Nov 30.
Arthroscopic treatment combined with the ankle stabilization procedure is effective for sinus tarsi syndrome in patients with chronic ankle instability
慢性足関節不安定症患者における足関節安定化術と組み合わせた関節鏡治療が足根洞症候群に有効であること
Sheng-Kun Li 1, Yu-Jie Song 1, Hong Li 1, Baofu Wei 2, Ying-Hui Hua 3, Hong-Yun Li 4
Affiliations expand
- PMID: 29189883 DOI: 10.1007/s00167-017-4813-2
Abstract
Purpose: This study aimed to investigate the results of arthroscopic treatment combined with ankle stabilization procedure for sinus tarsi syndrome (STS) in patients with chronic ankle instability (CAI).
概要
目的】本研究は、慢性足関節不安定症(CAI)患者におけるsinus tarsi syndrome(STS):足根洞症候群に対する関節鏡視下手術と足関節安定化術を併用した結果を検討することを目的とした。
Methods: A total of 57 patients (31 males and 26 females, average age 29.9 ± 8.4 years ranging from 15 to 52 years) with STS and CAI who accepted operation from 2013 to 2015 were included in this retrospective study. Surgical procedures included thorough tarsal sinus debridement and repair or reconstruction of lateral ankle ligaments according to the quality of ligaments. American Orthopedic Foot and Ankle Society (AOFAS) score, Karlsson score, and Tegner score were evaluated preoperatively and at final follow-up.
方法 2013年から2015年に手術を受け入れたSTS(足根洞症候群)とCAI(慢性足関節不安定症)の患者57名(男性31名、女性26名、平均年齢29.9±8.4歳、15歳から52歳まで)をこのレトロスペクティブ研究に対象とした。手術方法は、足根洞の徹底的なデブリードメントと、靭帯の質に応じて足関節外側の靭帯の修復または再建を行った。米国整形外科足関節学会(AOFAS)スコア,Karlssonスコア(足関節機能的安定性スコア),Tegnerスコア(活動スコア)を術前と最終フォローアップ時に評価した.
Results: All the patients accepted thorough debridement of tarsal sinus. Of these, 53 patients (93.0%) had an arch structure between the posterior subtalar joint and the middle subtalar joint. Further, 54 patients accepted lateral ankle ligament repair, and 3 patients accepted ligament reconstruction. A total of 40 patients were followed up with an average time of 30.7 months. The modified AOFAS score increased from 62.5 (27-90) to 93 (67-100), the Karlsson score increased from 57 (30-82) to 90 (55-100), and the Tegner score increased from 1 (1-3) to 5 (1-8).
結果 全例が足根洞の徹底的なデブライドメントを受け入れた。その結果,53名(93.0%)が後距骨下関節と中距骨下関節の間にarch構造を有していた.さらに、54名の患者が足関節外側靭帯修復術を、3名の患者が靭帯再建術を受け入れている。合計40名の患者を平均30.7ヶ月でフォローアップした。修正AOFASスコアは62.5(27-90)から93(67-100)へ、Karlssonスコアは57(30-82)から90(55-100)へ、Tegnerスコアは1(1-3)から5(1-8)へ増加した。
◆論文の結論
Conclusions: Arthroscopic treatment combined with the ankle stabilization procedure could get satisfactory results for STS in patients with CAI. The arch structure composed by medial calcaneal component of the medial root of the inferior extensor retinaculum (MCC) might contribute to the pathological mechanism of STS.
結論 足関節安定化術と関節鏡視下手術を併用することにより,CAI(慢性足関節不安定症)のSTS (足根洞症候群)に対して満足のいく結果を得ることができた.また,STSの病態形成には,下伸筋支帯の内側根の踵骨内側部で構成されるアーチ構造が関与している可能性が示唆された.
◆まとめ
上記論文では足根洞症候群と慢性足関節不安定症の患者57名(男性31名、女性26名、平均年齢29.9±8.4歳、15歳から52歳まで)に対しての手術成績について検討しております。
手術の方法は 足根洞のデブリードメントと、靭帯の質に応じて足関節外側靭帯の再建を行っております。
手術前と最終フォロー時に米国整形外科足関節学会(AOFAS)スコア,Karlssonスコア(足関節機能的安定性スコア),Tegnerスコア(活動スコア)で評価しております。
結果として、57名のうち54名の患者が足関節外側靭帯修復術を、3名の患者が靭帯再建術を施行したようです。
合計40名の患者を平均30.7ヶ月フォローアップしており、修正AOFASスコアは62.5(27-90)から93(67-100)、Karlssonスコアは57(30-82)から90(55-100)、Tegnerスコアは1(1-3)から5(1-8)へ増加したとのことです。
上記論文の結果を踏まえると、CAI(慢性足関節不安定症)のSTS (足根洞症候群)に対しての、足関節安定化術と関節鏡視下手術の併用は、満足の得られる効果があることがわかりました。
運動療法で改善が乏しい症例では手術を検討することも考慮する必要がありそうですね。
今回は、『足根洞症候群に対しての手術は有効か?』
について解説させていただきました。