こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『橈骨遠位端骨折に対してホットパックと水治療法どちらが有効か?』
について解説させていただきます。
橈骨遠位端骨折は高齢者の4大骨折のうちの一つとされており、超高齢社会に突入する日本においては、今後ますます増加傾向になることが予測されます。
橈骨遠位端骨折は以下に示す条件で発生リスクが高いと報告されています
・女性
・グルココルチコイド使用歴あり
・骨粗鬆症や骨量減少
・血清ビタミンD低値
・中手骨における骨皮質の多孔性や橈骨遠位端部の骨微細構造の劣化
・片脚起立時間15秒未満
・氷晶雨や路面の凍結、低気温といった気象
そんな中、2018年に、橈骨遠位端骨折の保存療法においてホットパックと水治療法のどちら治療が有効かを検討した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Hand Ther (IF: 1.95; Q3)
. Jul-Sep 2018;31(3):276-281.
doi: 10.1016/j.jht.2017.08.003. Epub 2017 Oct 12.
The short-term effects of hot packs vs therapeutic whirlpool on active wrist range of motion for patients with distal radius fracture: A randomized controlled trial
橈骨遠位端骨折患者に対するホットパック vs 治療用ワールプールの手首可動域に対する短期的効果: 無作為化比較試験
Mike Szekeres 1, Joy C MacDermid 2, Ruby Grewal 3, Trevor Birmingham 4
Affiliations expand
- PMID: 28893496 DOI: 10.1016/j.jht.2017.08.003
Abstract
Study design: Blinded randomized controlled trial.
概要
研究デザイン。盲検化ランダム化比較試験。
Introduction: It is generally accepted that heat is beneficial for improving range of motion (ROM). However, the mechanism of action is not clearly understood, and the optimal method of heat application has not been established.
はじめに 温熱が可動域(ROM)の改善に有効であることは一般的に認められている。しかし、その作用機序は明確に理解されておらず、最適な温熱の適用方法は確立されていない。
Purpose of the study: To investigate the immediate effects of using a moist hot pack (MHP) vs therapeutic whirlpool bath (WB) for improving wrist ROM during a therapy session for patients with distal radius fracture.
研究の目的 橈骨遠位端骨折患者の治療セッションにおいて、モイストホットパック(MHP)と治療用渦流浴(WB)の使用による手関節ROM改善効果を即座に調査すること。
Methods: About 60 adult patients, with a mean age of 54 years in the MHP group and 53 years in the WB group, with healed distal radius fracture were randomized into 2 groups of 30. Patients in group 1 were placed in an MHP for 15 minutes during therapy. Patients in group 2 had their arm placed in a WB and were asked to perform active wrist ROM exercises for the same period. This occurred for 3 consecutive therapy visits, with wrist and forearm ROM being measured before and after heat during each visit.
方法 橈骨遠位端骨折が治癒した平均年齢54歳の成人患者約60名(MHP群、WB群53歳)を30名ずつ2群に無作為に割り付けた。第1群の患者には治療中に15分間MHPを装着させた。第2群の患者にはWBに腕を入れ、同じ時間、自動手関節ROM運動を行わせた。これは連続3回のセラピー訪問で行われ、各訪問時に手関節と前腕のROMが温熱の前後で測定された。
Results: The multivariate analysis of variance demonstrated that the canonical variate for ROM was significantly different between groups (F[6,53] = 6.01; P < .05), indicating that patients in the WB group had a significantly larger increase in ROM than patients receiving MHP application.
結果 多変量分散分析の結果、ROMの正準変量は群間で有意に異なり(F[6,53] = 6.01; P < .05)、WB群の患者はMHP適用患者よりもROMが有意に増加したことが示された。
Discussion: Both WB and MHP improved wrist ROM during therapy sessions in this study, making both these acceptable options for clinical use when the goal is to precondition a patient for other treatments.
考察 本研究では、WBとMHPの両方が治療セッション中に手関節のROMを改善した。このことは、患者が他の治療のための事前条件を整えることが目的である場合、これら両方の選択肢を臨床的に使用することを容認できる。
◆論文の結論
Conclusions: Individuals who received WB showed a statistically greater increase in wrist ROM than those receiving MHP during a therapy session, although the difference between groups may or may not be clinically important considering the small changes in ROM observed in this study.
結論 しかし、この研究で観察されたROMのわずかな変化を考慮すると、群間の差は臨床的に重要であるかどうかわからない。
◆まとめ
上記論文では橈骨遠位端骨折患者60名(平均年齢54歳)をホットパック群30名と水治療法群30名の2群に振り分けて、治療効果を比較しております。
それぞれ15分間の温熱療法を連続3回の訪問診療にて実施し、治療前後で手関節と前腕の関節可動域を測定しております。
結果として2群ともに関節可動域は改善し、2群間の比較においてはホットパック群よりも水治療法群の方が有意に関節可動域が改善したようです。
上記論文の結果を踏まえると、橈骨遠位端骨折治療においてホットパックおよび水治療法といった温熱療法は手関節、前腕の可動域を短期的に改善させるようです。
また、大きな差はなかったようですが、ホットパックよりも水治療法の方が効果的ではあるようです。
これらの治療の長期的な結果も気になるところではありますね。
今回は、『橈骨遠位端骨折に対してホットパックと水治療法どちらが有効か?』
について解説させていただきました。