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『頚椎症性脊髄症を放置するとどうなる?~頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020より~』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『頚椎症性脊髄症を放置するとどうなる?~頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020より~』

について解説させていただきます。

 



頚椎症性脊髄症とは

頚椎症性脊髄症は、頚椎脊柱管の狭い状態で頚椎の加齢性変化による脊髄圧迫に不安定性や外傷が加わって、脊髄麻痺を発症する疾患の総称とされています。

◆症状

・四肢のしびれ感(両上肢のみも含む)

・手指の巧緻運動障害(箸が不自由、ボタンかけが不自由など)

・歩行障害(小走り、階段の降り困難など)

・膀胱障害(頻尿、失禁など)

◆症候

・障害高位での上肢深部腱反射低下

・障害高位以下での腱反射亢進、病的反射の出現、myelopathy handを認めるもの

◆画像診断

・単純X線像で、椎間狭小、椎体後方骨棘、発育性脊柱管狭窄を認めるもの

・単純X 線像でみられる病変部位で、MRI、CT、または脊髄造影像上、脊髄圧迫所見を認める。

⇒診断の目安として、症状・症候より予想される脊髄責任病巣高位と画像所見の圧迫病変部位が一致する

◆除外項目

・頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)、椎間板ヘルニアによる脊髄症、頚椎症性筋萎縮症

・脳血管障害、脊髄腫瘍、脊髄変性疾患、多発性末梢神経障害などが否定できる

頚椎症性脊髄症は50歳以上の発症が多く、男性に多いとされている(男性が約63~70%)。

頚椎症性脊髄症の発生頻度は、要治療患者は人口10万人あたり数人。

 



頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020 改定第3版

頚椎症性脊髄症においては、2005年に初版の「頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン」が出版され、その10年後である2015年に改訂第2版が出版された。

そして2020年9月に『頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020 改定第3版』が南江堂から出版されました。

ガイドラインは約6年で時代遅れの傾向になることがあり3~5年で更新するべきとの見解があるようです。


このガイドラインは、世界中から有益な論文を様々な視点で検証し、科学的根拠のある論文を集め、検証されています。

頚椎症性脊髄症においては明確な定義がないのが現状であります。

頚椎症性脊髄症 診療ガイドラインでの定義では

「頚椎症性脊髄症は,頚椎脊柱管の狭い状態で加齢性の頚椎変化(後方骨棘,椎間板狭小と後方膨隆)による脊髄圧迫に,頚椎の前後屈不安定性や軽微な外傷が加わって脊髄麻痺を発症する疾患の総称」とされています。

【監修】日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会

2009年10月1日から2018年9月19日で、英文2,525論文、和文1,862論文から再編されて審査し、最終的に418論文が採択されている。

この中から、

『頚椎症性脊髄症の自然経過はどのようであるか』

『頚椎症性脊髄症の生命予後はどのようであるか』

という項目がありますので見てみたいと思います。

この項目では世界中の論文20編から再編され、そのうち和文は5編です。

生命予後については2論文しか報告がなく少ない状態です。

 



◆頚椎症性脊髄症の自然経過

重症例、進行例では手術が必要であるという点は諸家の報告で意見が一致している。

軽症例では進行する頻度は高くないが、進行した場合は予後不良となるため注意が必要であること、また軽症例の定義が明確でないことに注意を要する。

・1972年のNurickの報告では、頚椎症性頚髄症91例を最長20年の観察で、初診時に症状の軽度なものは経過が良好であるが、重症例は経過も不良であるとされている。

・1979年の佐々木らの報告では、頚椎症性脊髄症54例を1年以上、最長11年経過観察したところ、服部の分類Ⅰ型では改善が44%と多く、Ⅱ型では改善が少なく憎悪例が32%あり、Ⅲ型では改善傾向はほとんどなかったが、Ⅰ型,Ⅱ型でも脊柱管狭窄があれば症状が悪化する危険性があるとしている。

・2000年のMatsumotoの報告では、頚椎症性脊髄症29例を平均3年間経過観察した結果、JOAスコアが13/17点以上の軽症例のうち72%が予後良好としている。

・2013年のWuらのの報告では、台湾において12年間のNational Health Insurance Research databaseを用いた検討で、13,461人の計推奨患者をフォローアップすると166例がその後、脊髄損傷を生じ、非手術群でその頻度が高いとしている。

※服部の分類

I 型:脊髄中心部障害(上肢筋萎縮,上肢運動障害, 上肢反射低下,上肢感覚障害)

II 型:I 型+後側索部(I 型の 症状+下肢反射亢進)

III 型:II 型+前側索部(II 型の症状+ 下肢・躯幹の温痛覚障害)

 3 つの型に分類し,この順で神経 症候が進行するとされている

 



◆頚椎症性脊髄症の生命予後

本症の自然経過の生命予後に関するエビデンスレベルの高い論文はないが、高齢者における手術例と非手術例の生命予後の比較検討や手術例の検討から、術後下肢運動機能の回復が良好な例では十分な生命予後が期待できる

・1年以上の経過観察を行った手術症例545例を対象として、標準化死亡比を計算した結果、1.38と一般国民と比較して有意に高値であった。また平均寿命も9年短縮していた。

・JOAスコア13点以下、70歳以上の頚椎症性脊髄症38例を手術例と非手術例に分け、初診後5年での生存率を比較したところ、手術群0.915に対して非手術群では0.745であった。また非手術群では下肢運動機能低下が著しく低下し歩行不能例が増加していた。

これらのことからわかることは術後下肢運動機能が回復した良好な例では十分な生命予後が期待できると考えられる。

今回は、『頚椎症性脊髄症を放置するとどうなる?~頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020より~』

について解説させていただきました。