こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『非特異的腰痛85%の時代は終わった?』
について解説させていただきます。
1992年に原因のわからない腰痛(非特異的腰痛)が85%もあるという衝撃的な報告が現代において広まってきました。(Deyo RA, et.al.1992)
若手時代に私自身もこの医療・科学が進んだ現代において、原因のわからない腰痛が85%もあるわけがないと思い、腰痛の勉強をし始めました。
しっかりと腰痛の知識を持っていれば、原因のわからない腰痛が85%なんて数字にはなりません。
きっちりと画像を診て、問診して、理学所見をとれば、大半の腰痛の病態は理解できるようになりました。
「原因のわからない腰痛が85%」という言葉が独り歩きしましたが、正確には「画像で判断できない腰痛が85%」という方が正しいのかもしれません。
この『非特異的腰痛85%』の時代に終止符を打ってくれている論文が下記になります。
Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low
Back Pain Study
Hidenori Suzuki*, Tsukasa Kanchiku, Yasuaki Imajo, Yuichiro Yoshida, Norihiro Nishida,
Toshihiko Taguchi
PLoS One. 2016 Aug 22;11(8)
Abstract 要約
Study Design
Cross sectional data from the Yamaguchi low back pain study conducted in Yamaguchi prefecture,
Japan, was used for this analysis.
【研究デザイン】
この分析には、日本の山口県で実施された山口県腰痛調査の横断的調査が使用されました。
Methods
A total of 320 patients were recruited from walk-in orthopedic clinics in Yamaguchi Prefecture,
Japan. Patients visited the clinics primarily for low back pain (LBP) and sought treatment
between April and May 2015. A self-questionnaire was completed by patients, while
radiographic testing and neurological and physical examination was performed by the
orthopedist in each hospital. The cause and characters of LBP was determined following
examination of the data, regional anesthesia and block injection.
【方法】
山口県の整形外科医院から320名の患者を募集した。
患者は2015年4月から5月にかけて、主に腰痛のために診療所を訪れ、治療を受けました。患者さんには自己問診票を記入していただき、各病院の整形外科医がX線検査、神経学的検査、身体的検査を行いました。腰痛の原因と項目は以下のように決定されました。
データの検査、局所麻酔、ブロック注射。
Results
‘Specific LBP’ was diagnosed in 250 (78%) patients and non-diagnosable, ‘non-specific
LBP’ in 70 (22%) patients. The VAS scores of patients were: LBP, 5.8±0.18; leg pain, 2.9
±0.18 and the intensity of leg numbness was 1.9±0.16. Item scores for SF-8 were: general
health, 46.6±0.40; physical function, 43.5±0.51; physical limitations, 42.8±0.53; body pain,
42.1±0.52; vitality, 48.4±0.37; social function, 46.9±0.53; emotional problems, 48.9±0.43;
mental health, 46.9±0.43.
【結果】
「特異的腰痛」と診断されたのは250名(78%)、診断不能な「非特異的腰痛」は70名(22%)でした。
患者のVASスコアは 腰痛: 5.8±0.18、 下肢痛:2.9±0.18、下肢のしびれの強さは1.9±0.16でした。SF-8の項目得点は、一般的な健康:46.6±0.40、身体機能:43.5±0.51、身体的制限:42.8±0.53、身体の痛み:42.1±0.52、生命力の強さ:
42.1±0.52、活力:48.4±0.37、社会的機能:46.9±0.53、感情的問題:48.9±0.43、
精神的健康:46.9±0.43。
Conclusions
The incidence of non-specific LBP in Japan was lower than previous reports from western
countries, presumably because of variation in the diagnosis of LBP between different health
care systems. In Japan, 78% of cases were classified as ‘specific LBP’ by orthopedists.
Identification of the definitive cause of LBP should help to improve the quality of LBP
treatment.
【結論】
日本における非特異的腰痛の罹患率は欧米諸国の報告に比べて低いが,これは医療制度の違いによる腰痛の診断のばらつきによるものと考えられる。
日本では、78%の症例が整形外科医によって「特異的腰痛」と分類された。
腰痛の決定的な原因を特定することは、腰痛治療の質の向上に役立つはずです。
この研究は山口県で行われた他施設共同研究です。
この研究では画像で判断できない腰痛(非特異的腰痛)は79%であるが、理学所見を補助的に追加し、診断可能な腰痛は78%であったと報告しています。
ですので画像でわかない腰痛は約8割で、今までの定説であった原因のわからない腰痛85%と似通った数字となっています。
ただ、診断ができないわけではないことが今回の研究ではっきりとデータで示されております。
ちなみに、画像で分からない腰痛の原因としては、
◆筋筋膜性腰痛
◆椎間関節性腰痛
◆椎間板性腰痛
◆仙腸関節性腰痛
が挙げられています。
これらの腰痛は理学所見を取ることで診断が可能となります。
よって、腰痛の方がいても、腰痛の知識があれば、ほとんどのケースで原因が特定できるということになります。
今回は、『非特異的腰痛85%の時代は終わった?』について解説させていただきました。