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『片麻痺の肩関節痛に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『片麻痺の肩関節痛に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。

 



脳出血や脳梗塞後といいた脳卒中後の片麻痺患者においては、主に筋緊張が亢進している痙性タイプと、筋緊張が低下している弛緩性タイプに分けられると思います。

その2つの脳卒中後の片麻痺タイプにおいて、発生機序は違えど肩関節痛を生じることがしばしばあると思います。

そんな中、2021年に、肩関節痛のある片麻痺に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法の効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところであります。

 



◆PRP(多血小板血漿)療法とは

platelet-rich plasma:PRP療法(多血小板血漿)とは、自分の血液を採取して、特殊な技術を駆使し、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。

そして、自分の傷んでいる部位に注射することで組織の修復や関節炎の症状を軽減させ、早期治癒を図る再生医療であります。

早期の競技復帰をめざしたプロスポーツ選手も、多血小板血漿(PRP)療法を行っていることもあります。

ヨーロッパやアメリカでは、自己治癒力をサポートする治療として頻繁に行われているようです。

現時点(2022年4月)ではm多血小板血漿(PRP)療法は自費診療になりますので、少し治療費は高価になります。

 



◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

Neurol Sci (IF: 3.31; Q3)

. 2021 May;42(5):1977-1986.

 doi: 10.1007/s10072-020-04710-0. Epub 2020 Sep 29.

Efficacy of platelet-rich plasma in the treatment of hemiplegic shoulder pain

肩関節痛のある片麻痺の治療における多血小板血漿の有効性

Asude Uzdu 1Yeşim Kirazlı 1Hale Karapolat 1Burcu Unlu 1Göksel Tanıgör 2Funda Atamaz Çalış 1

Affiliations expand

Abstract

Objective: The aim of this study was to examine the effects of platelet-rich plasma (PRP) on pain and functional outcomes in patients with hemiplegic shoulder pain. We compared the effects of PRP against saline solution by designing a double blind, randomized, prospective study.

概要

目的 本研究の目的は、肩関節痛のある片麻痺患者の痛みと機能的転帰に対する多血小板血漿(PRP)の効果を検討することであった。二重盲検無作為化前向き試験を計画し、生理食塩水に対する多血小板血漿(PRP)の効果を比較した。

Design: Forty-four patients with hemiplegia were included in this study. All patients received a total of 3 injections, 1 week apart. The first group received PRP injections while the second group received placebo injections. After 3 months of follow-up, 40 patients completed the trial. Primary outcome measure was movement-induced pain score (VAS), and secondary outcome measures were spontaneous pain score, shoulder passive range of motion (ROM), functional independence measure score, and the amount of paracetamol used. All subjects were evaluated at baseline, 1 week, 1 month, and 3 months after the completion of the last injection.

デザインは 片麻痺の患者44名を本研究に組み入れた。全患者に1週間間隔で計3回の注射を行った。第1グループには多血小板血漿(PRP)注射を、第2グループにはプラセボ注射を行った。3ヶ月のフォローアップの後、40人の患者が試験を完了した。主要評価項目は運動誘発性疼痛スコア(VAS)、副次評価項目は自発性疼痛スコア、肩関節他動可動域(ROM)、機能的自立度評価スコア、パラセタモールの使用量であった。すべての被験者は、ベースライン、最後の注射終了後1週間、1ヶ月、3ヶ月で評価された。

Results: Both groups showed an improvement in spontaneous and movement-related pain scores and shoulder passive ROM values on 1st and 3rd month visits (p < 0.05). No significance difference was detected between groups (p > 0.05). Similarly, FIM scores improved significantly in both groups (p < 0.05) but no difference was found between groups. Paracetamol use did not differ significantly between groups.

結果 両群とも1ヶ月目と3ヶ月目の診察時に自発痛と動作関連痛のスコアと肩の他動ROM値の改善を示した(p<0.05)。両群間に有意差は認められなかった(p>0.05)。同様に,FIMスコアも両群で有意に改善したが(p<0.05),群間差は認められなかった.パラセタモールの使用量も群間で有意差は認められなかった。

 



◆論文の結論

Conclusion: The PRP injections were found not to be superior to placebo. Improvements in both groups can be attributed to the use of rehabilitation techniques and exercises in all patients. There is still need for further research to show whether PRP is a treatment option in the course of hemiplegic shoulder pain.

結論 多血小板血漿(PRP)注射はプラセボに優るものではないことが判明した。両群における改善は、すべての患者におけるリハビリテーション技術とエクササイズの使用に起因するものである。肩関節痛のある片麻痺の経過において多血小板血漿(PRP)が治療の選択肢となるかどうかについては、さらなる研究が必要である。

 



◆まとめ

上記論文では片麻痺の患者44名に対して、多血小板血漿(PRP)注射群とプラセボ注射群の2群に分けて効果を検証しております。

評価は治療前、治療1週間後、1か月後、3か月後に疼痛スコア(VAS)、自発性疼痛スコア、肩関節他動可動域(ROM)、機能的自立度評価スコアを測定しております。

結果として両群ともに1ヶ月目と3ヶ月目に自発痛と動作関連痛のスコア、肩他動ROM値、FIMスコアの改善を示しておりました。

上記論文の結果を踏まえると、多血小板血漿(PRP)とプラセボ注射に効果の差はみられなかったということですので、多血小板血漿(PRP)療法は、様々な外傷や障害に適応されていますが、肩関節痛を伴う片麻痺においては、効果は乏しいようです。

今回は、『片麻痺の肩関節痛に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。