こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『慢性頚部痛に対しての頚部屈筋エクササイズは痛みを緩和させるか?』について解説させていただきます。
慢性頚部痛は様々な原因があります。
頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニア、頚部脊柱管狭窄症、変形性頚椎症、不良姿勢から生じる頚部痛、など原因は多岐にわたります。
そんな中、2007年に、慢性頚部痛患者に対しての頚部屈筋の運動が即自的に痛みを軽減させるかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Pain (IF: 5.82; Q1)
. 2007 Nov;8(11):832-9.
doi: 10.1016/j.jpain.2007.05.014. Epub 2007 Jul 19.
Specific therapeutic exercise of the neck induces immediate local hypoalgesia
頸部の特異的な治療的運動が即時的な局所痛覚減退を引き起こす
Shaun O’Leary 1, Deborah Falla, Paul W Hodges, Gwendolen Jull, Bill Vicenzino
Affiliations expand
- PMID: 17644487 DOI: 10.1016/j.jpain.2007.05.014
Abstract
This study compared the effect of 2 specific cervical flexor muscle exercise protocols on immediate pain relief in the cervical spine of people with chronic neck pain. In addition, the study evaluated whether these exercise protocols elicited any systemic effects by studying sympathetic nervous system (SNS) function and pain at a location distant from the cervical spine.
概要
本研究では、2種類の頸部屈筋運動プロトコルが、慢性頸部痛患者の頸椎における即時的な疼痛緩和に及ぼす影響を比較した。さらに、頸椎から離れた場所での交感神経系(SNS)の機能と痛みを調べることで、これらの運動プロトコルが全身的な効果を引き出すかどうかを評価した。
Participants were randomly allocated into either a cranio-cervical flexion (CCF) coordination exercise group (n = 24) or a cervical flexion (CF) endurance exercise group (n = 24). Measures of pain and SNS function were recorded immediately before and after a single session of the exercise interventions. Pain measures included visual analogue scale (VAS) ratings of neck pain at rest and during active cervical motion and pressure pain threshold (PPT) and thermal pain threshold (TPT) recordings over the cervical spine and at a remote site on the leg. Measures of SNS function consisted of blood flow, skin conductance, skin temperature, heart rate, and blood pressure.
参加者は、頭蓋-頸椎屈曲(CCF)協調運動群(n=24)または頸椎屈曲(CF)持久運動群(n=24)のいずれかに無作為に割り付けられました。痛みとSNS機能の測定は、運動介入の1セッションの直前と直後に記録した。痛みの測定には、安静時と頸部を動かしたときの頸部の痛みを視覚的アナログスケール(VAS)で評価し、頸椎と脚の遠隔地で圧痛覚閾値(PPT)と温痛覚閾値(TPT)を測定した。SNS機能の測定は、血流、皮膚コンダクタンス、皮膚温度、心拍数、血圧で行った。
Immediately after 1 session of exercise, there was a reasonably sized increase of 21% (P < .001, d = 0.88) and 7.3% (P = .03, d = 0.47) in PPT locally at the neck for the CCF exercise and the CF exercise, respectively. There were no changes in local neck TPT with either exercise. Pressure pain threshold and TPT at the leg and SNS did not change after exercise. Only the CCF exercise demonstrated a small improvement in VAS ratings during active movement (change on 10-cm VAS: CCF, 0.42 cm (P = .04).
1セッションの運動直後、首の局所PPTはCCF運動で21%(P < 0.001, d = 0.88)、CF運動で7.3%(P = 0.03, d = 0.47)という適度な大きさの増加が見られた。いずれの運動でも頸部局所TPTには変化がなかった。脚部とSNSの圧痛閾値とTPTは運動後に変化しなかった。CCF運動のみが、運動時のVAS評価にわずかな改善を示した(10cmのVASの変化:CCF、0.42cm(P = 0.04))。
◆論文の結論
This study shows that specific CCF therapeutic exercise is likely to provide immediate change in mechanical hyperalgesia local to the neck with translation into perceived pain relief on movement in patients with chronic neck pain.
本研究では,慢性的な頸部痛を持つ患者において,CCFを用いた治療的運動を行うことで,頸部の機械的痛覚過敏を即座に変化させ,運動時の痛みの軽減につなげることができる可能性が示された。
Perspective: This study showed an immediate local mechanical hypoalgesic response to specific exercise of the cervical spine. Understanding the pain-relieving effects of exercise will assist the clinician in prescribing the most appropriate exercise protocols for patients with chronic neck pain.
見解。この研究では、頸椎の特定の運動に対して、即時的な局所の機械的痛覚低下反応を示した。運動による痛みの軽減効果を理解することは、慢性的な首の痛みを持つ患者に最も適切な運動プロトコルを処方する上で臨床家の助けとなるだろう。
◆まとめ
上記論文では慢性頚部患者48名を頭蓋-頸椎屈曲(CCF)協調運動群(24名)と頸椎屈曲(CF)持久運動群(24名)に振り分けて、即時的な頚椎の疼痛緩和に及ぼす影響を比較しております。
また交感神経系(SNS)の機能との関連も併せて調査されております。
評価は運動介入の直前と直後に、痛みとSNS機能の測定しております。
痛みについては、頚部の安静時痛と頸部の運動時痛を視覚的アナログスケール(VAS)で評価し、頸椎と脚の遠隔地で圧痛覚閾値(PPT)と温痛覚閾値(TPT)を測定しております。
交感神経系(SNS)機能の測定は、血流、皮膚コンダクタンス、皮膚温度、心拍数、血圧で測定しております。
結果としては頚椎の圧痛覚閾値が両群ともに有意に増加しており、頭蓋-頸椎屈曲(CCF)協調運動群の方がより増加率が高かったようです。
いずれの運動でも頸部局所温痛覚閾値、脚部圧痛閾値、交感神経系は変化がなかったようです。
また頭蓋-頸椎屈曲(CCF)協調運動群が、頚椎運動時VASがわずかに改善を示しております。
今回の論文から読み取ると、慢性頚部痛に対してのエクササイズとしては、
頚部屈筋の持久性の運動よりも、頭蓋-頸椎屈曲の協調性運動を選択することで、頚椎の圧痛覚閾値が増加し、頚椎運動時VASを即時的に改善させる可能性があることがわかりました。
今回は、『慢性頚部痛に対しての頚部屈筋エクササイズは痛みを緩和させるか?』について解説させていただきました。