こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『五十肩(拘縮肩)への関節モビライゼーションの効果は?』について解説させていただきます。
『五十肩の最新治療法の効果~サイレントマニピュレーション~』
40歳以上の方は経験していることが多くなってきているかもしれませんが、五十肩で肩関節痛に悩まされてる方は多くいらっしゃると思います。
五十肩は退行変性(老化)によって肩の組織が傷んできて炎症を起こし、肩関節の関節包が狭小化(狭くなる)が生じて、肩関節の痛みや肩の運動制限が起こるといわれております。
よって、60歳前後の方は、特にこの五十肩症状になりやすくなります。
五十肩は医療用語では『肩関節周囲炎』や『拘縮肩』、『凍結肩』と呼んだり様々です。
五十肩の病態としては関節包炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋腱炎、石灰性沈着性腱板炎
など多岐に渡ります。
五十肩の症状としては肩関節の痛み(運動時痛、夜間痛)と運動制限の大きく2つあります。
五十肩は基本的には経過が長くなることが多く、早く完治する方では1~3か月程度で症状が治る方もおられますが、治るまで数年(2年~7年)かかることもあります。
そんな中、2016年に五十肩(拘縮肩)の治療として、関節モビライゼーションの効果を検証する論文が海外で報告されています。
内容が気になりますので見ていきたいと思います。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Clin Rehabil (IF: 2.599; Q1)
. 2016 Aug;30(8):786-94.
doi: 10.1177/0269215515597294. Epub 2015 Jul 30.
Does adding mobilization to stretching improve outcomes for people with frozen shoulder? A randomized controlled clinical trial
ストレッチにモビライゼーションを加えると五十肩の転帰が改善するか?無作為化比較臨床試験
Derya Çelik 1, Ebru Kaya Mutlu 2
Affiliations expand
- PMID: 26229109 DOI: 10.1177/0269215515597294
Abstract
Objective: To assess the effectiveness of joint mobilization combined with stretching exercises in patients with frozen shoulder.
目的 五十肩患者における関節モビライゼーションとストレッチ運動の併用の有効性を評価すること。
Design: A randomized controlled clinical pilot trial.
デザイン 無作為化比較臨床試験を行った。
Setting: Department of Orthopedics and Traumatology.
設定 場所: 整形外科および外傷学教室
Subjects: Thirty patients with frozen shoulder.
対象: 五十肩の患者30人
Intervention: All participants were randomly assigned to one of two treatment groups: joint mobilization and stretching versus stretching exercises alone. Both groups performed a home exercise program and were treated for six weeks (18 sessions).
介入。参加者全員を、関節モビライゼーションとストレッチを行う群と、ストレッチ運動のみを行う群の2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けた。両群ともに自宅での運動プログラムを行い、6週間(18回)の治療を行った。
Main measures: The primary outcome measures for functional assessment were the Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand score and the Constant score. The secondary outcome measures were pain level, as evaluated with a visual analog scale, and range of motion, as measured using a conventional goniometer. Patients were assessed before treatment, at the end of the treatment, and after one year as follow-up.
主な測定項目 機能評価の主要アウトカム指標は、上肢・肩・手の障害スコアとコンスタントスコアであった。副次的評価項目は,VASで評価した疼痛レベルと,従来のゴニオメーターを用いて測定した可動域であった。患者は治療前、治療終了時、1年後にフォローアップとして評価されました。
Results: Two-by-two repeated-measures ANOVA with Bonferroni corrections revealed significant increases in abduction (91.9° [CI: 86.1-96.7] to 172.8° [CI: 169.7-175.5]), external rotation (28.1° [CI: 22.2-34.2] to 77.7° [CI: 70.3-83.0]) and Constant score (39.1 [CI: 35.3-42.6] to 80.5 [75.3-86.6]) at the one-year follow-up in the joint mobilization combined with stretching exercise group, whereas the group performing stretching exercise alone did not show such changes.
結果は以下の通りです。2×2反復測定ANOVAにBonferroni補正を加えた結果、関節モビライゼーションとストレッチ運動を併用した群では、外転(91.9°[CI: 86.1-96.7]→172.8°[CI: 169.7-175.5])、外旋(28.1°[CI: 22.2-34.2]→77.7°[CI: 70.3-83. 0])およびConstantスコア(39.1 [CI: 35.3-42.6] から80.5 [75.3-86.6])を示したが、1年後の追跡調査でそのような変化は見られなかった。
◆論文の結論
Conclusion: In the treatment of patients with frozen shoulder, joint mobilization combined with stretching exercises is better than stretching exercise alone in terms of external rotation, abduction range of motion and function score.
結論 五十肩患者の治療において、関節モビライゼーションとストレッチ運動の併用は、外旋、外転の可動域、機能スコアの点でストレッチ運動単独よりも優れていた。
◆まとめ
上記論文では五十肩患者30名に対して関節モビライゼーションとストレッチ運動の併用の有効性を評価しています。
関節モビライゼーションとストレッチを行う群と、ストレッチ運動のみを行う群の2つ群分けて、治療前、治療終了時、1年後に、上肢・肩・手の障害スコア、VAS、関節可動域で評価しています。
結果としては、関節モビライゼーションとストレッチ運動を併用した群では、外旋、外転の可動域、機能スコアの点で治療終了後に大幅に改善しており、ストレッチ運動単独よりも優れていたとのことです。
結果の数値をみると6週間でかなりの改善度ですので、五十肩の程度が比較的軽傷な患者であったともとれますが、やはり関節モビライゼーションの効果はあるようです。
今回は、『五十肩(拘縮肩)への関節モビライゼーションの効果は?』について解説させていただきました。