こんにちは!!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は『五十肩の最新治療法の効果~サイレントマニピュレーション~』について解説していきたいと思います。
40歳以上の方は経験していることが多くなってきているかもしれませんが、四十肩や五十肩で肩関節痛に悩まされてる方は多くいらっしゃると思います。
この四十肩や五十肩は医療用語では『肩関節周囲炎』や『拘縮肩』、『凍結肩』と呼んだりします。
しかも、この症状が数日で治れば話は早いのですが、1週間、、1か月、、、半年と全然治らない事があり、悩んでいる方も多くおられると思います。
五十肩は退行変性(老化)によって肩の組織が傷んできて、炎症を起こし、肩関節の関節包が狭小化(狭くなる)が生じて、肩関節痛や運動制限が起こるといわれております。
よって、60歳前後の方は、特にこの五十肩症状になりやすくなってきます。
◆五十肩の原因は?
五十肩の原因は、今現在においても明確にはわかっておりません。
ただ、五十肩になる原因として、可能性があるものはいくつか挙げられております。
以下に詳細を示します。
①肩関節に原因があるもの
腱板炎、腱板断裂、二頭筋長頭腱炎、石灰性腱炎
②肩関節から離れた部位に原因があるもの
乳腺手術、頚椎症、胸壁腫瘍、脳血管疾患、上腕骨骨幹部骨折、肩甲胸郭関節異常、肩鎖関節炎、鎖骨骨折
③全身性
糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能不全これはあくまで一例で、他にもいろんな診断名が含まれます。
・①②③の項目で分類されているように、肩関節に原因があるものと肩関節から離れた部位に原因があるもの、全身性の疾患と原因が分かれて示されていたりします。
◆五十肩の症状
五十肩の症状としては大きく2つあり疼痛と運動制限があります。
●肩関節の痛み(運動時痛、夜間痛)
・夜に痛くて眠れない
●運動制限
・腕が挙がらない
・腕が動きにくくて服を着るのが大変
・トイレで正式がしにくくなった
◆五十肩の病態
五十肩の病態としては様々ですが以下のような代表的なものがあります。
・関節包炎
・肩峰下滑液包炎
・上腕二頭筋腱炎
・石灰性沈着性腱板炎
など病態は多彩。
◆五十肩はいつ治るのか?
五十肩はいつ治るのか?ですが、基本的には経過が長くなります。
海外の様々な論文の報告を挙げてみます。
・五十肩の自然経過例においては、ほとんど発症後2年以内に完治する(Grey,R.G:JBJS.1978)。
・自然治癒期間は平均30か月であった(Reeves,B:J.Rheumatol.1975)。
・平均3.7年経過観察し、45%の症例に疼痛や関節可動域制限が残存する(Binder AI;Ann Rheum Dis.1984)。
・平均7年経過観察し、50%の症例に運動時痛や関節可動域制限が残存する(Schaffer B;JBJS.1992 )。
早く完治する方では1~3か月程度で症状が治る方もおられますが、上記の報告のように、五十肩の経過が長い方ですと、治るまで数年(2年~7年)かかることもあります。
しかも、数年かかっても約5割の症例に、何かしらの痛みや、肩の運動制限が残るという報告もあります。
私自身、五十肩(拘縮肩)の方をリハビリで何十人と診療させていただきましたが、1,2か月ですぐに治られる方はほとんどいらっしゃいません。
だいたい3か月以上リハビリする方がほとんどで、半年から1年リハビリを要する方も多くいらっしゃいます。
治療方針は様々ですが、ほとんどの方は保存療法(手術をしない方針)で治療が進んでいくと思われます。
保存療法では内服薬、ブロック注射、リハビリ等の治療法があります。
五十肩(拘縮肩、凍結肩)は肩関節の関節包が狭小化(狭くなる)している状態ですので、保存療法でのリハビリの場合は地道に関節包を広げて肩関節可動域を拡大させていかなければなりません。
◆サイレント・マニピュレーションとは
五十肩の最新治療はいくつかありますが、私自身もおすすめしたい医師による治療法であるサイレント・マニピュレーションをご紹介します。
(皆川洋至:MEDICAL REHABILITTATION.2013)
(皆川洋至:関節外科.2017)
サイレント・マニピュレーションとは、外来診療により診察室で可能な治療法であり、超音波エコーガイド下で肩関節を支配するC5、C6神経根をブロック注射にて麻酔をかけた状態で、肩関節を各方向に動かし、硬くなった関節包を徒手的に破断させ、拘縮を解除する治療法です。
秋田県にある城東整形外科の皆川洋至医師がサイレント・マニピュレーションを世に普及させたと言われています。
◆サイレント・マニュピレーションの特徴
・超音波エコーの普及により、C5,6神経根を局所麻酔で簡単にブロックが可能となった。
・外来での安全・確実な授動術(関節包を広げる手技)を可能にした。
・従来の主義(手術室で行う)は関節包の断裂音がするが、外来診療で意識下であることに配慮し、関節包の断裂音を極力小さくする新しい手技
・外来授動術(サイレント・マニピュレーション)では、術後1週で術前疼痛の約4割、術後1か月で約3割まで痛みを軽減できるとされています。
◆サイレント・マニピュレーションの推定医療費
従来の外来保存治療 | 外来受動術 (サイレント・マニピュレーション) | 入院受動術(手術) | |
1か月の医療費 | 11,100円 | 44,800円 | 532,800円 |
治療期間(仮) | 12か月間 | 3か月間 | 3か月間 |
推定総医療費 | 133,200円 | 67,000円 | 555,000円 |
※診療所へ通院患者が毎日行く役、週2回のリハビリを受けた場合
(皆川洋至:関節外科.2017)
・入院授動術(手術)に比べ、全身麻酔のリスク、入院による時間の制約、金銭負担が大幅に軽減できる。
外来保存治療(リハビリ含む)では体への負担は少なく、リスクもなくあんぜんではあるが、期間が長くなるため、費用もそれなりにかかってきます。
入院受動術(手術)では全身麻酔になるため、危険性はすくないですが様々なリスクもかかってきます。
また費用もかなり高くなります。
1か月の医療費は532,800円となっていますが、実際は公的医療保険制度に加入していれば高額療養費制度によりどれだけ高額な保険診療での医療を受けても、1か月に約10万円までの医療負担で済みます。
◆サイレント・マニピュレーションの対象
◆サイレント・マニピュレーションの対象(皆川洋至.2013)
・上肢挙上120°以下の全ての症例
・最高齢は男性87歳、女性84歳
・外傷や手術後の症例、骨粗鬆症症例に対しても積極的に行っている
◆サイレント・マニピュレーションの症例数
◆サイレント・マニピュレーションの症例数(皆川洋至.2017)
上記は城東整形外科でのサイレント・マニピュレーション症例数です。
2009年0件、2010年144件、2011年172件、2012年245件、2013年254件、2014年260件、2015年330件、2016件399件と年々、症例数は増加傾向です。
多忙な診療中に、1日1人以上はサイレント・マニピュレーションを実施してる計算となることからわかる通り、数十分で実施可能な手技となっております。
◆サイレント・マニピュレーションの治療成績
◆サイレント・マニピュレーションの治療成績(皆川洋至.2013)
2011年超音波ガイド下C5,C6ブロック後にサイレント・マニピュレーションを行った
挙上角度120°以下の凍結肩107肩(男性40肩、女性67肩)
平均年齢57.4歳(37~82歳)、平均羅病期間6.5か月(1~48か月)
疼痛と関節可動域を評価している
・(NRS:numeric rating scale・・・10点中何点の痛みか数値化するもの)
・関節可動域(挙上、外旋) 外旋:手を外に開く動き
術前 | 術後1週 | 術後1か月 | |
夜間痛(NRS) | 5.3 | 1.6 | 1.0 |
安静時痛(NRS) | 2.1 | 0.8 | 0.6 |
運動時痛(NRS) | 7.4 | 3.4 | 2.0 |
挙上角度(°) | 95.7 | 130.4 | 139.8 |
外旋角度(°) | 14.1 | 29.7 | 32.9 |
NRS:numeric rating scale・・・10点中何点の痛みか数値化するもの
サイレント・マニピュレーションの1週後には劇的に疼痛も関節可動域も良くなっていることがわかります。
術後1か月でも疼痛、関節可動域ともに改善の傾向を示しております。
サイレント・マニピュレーションは翌日から運動が行えますので、リハビリも開始できます。
施設・医師によってはサイレント・マニピュレーション後にリハビリを行うパターンと、リハビリを行わないパターンがあります。
このように短期間で比較的安価で五十肩が改善できますので、長期戦のリハビリや、全身麻酔による手術に抵抗のある方は非常におすすめです。
サイレント・マニピュレーションは比較的特殊な治療法になりますので、どこの病院でもできるということはありません。
数年前は各地方に数か所しか実施できる医療施設はありませんでした。
現在では少しずつ普及しておりますので、東京・大阪・兵庫・神奈川など比較的都心の都道府県では各都道府県に数か所はサイレント・マニピュレーションが実施可能な医療施設があります。
インターネット等で「サイレント・マニピュレーション」の実施施設を検索して、調べて実施医療施設と相談されると良いと思います。
今回は『五十肩の最新治療法の効果~サイレントマニピュレーション~』を解説させていただきました。