こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『ランナー膝(腸脛靭帯炎)へのフォームローラーおよびストレッチの即時効果は?』
について解説させていただきます。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)は腸脛靭帯に対するオーバーユース(過用)であるとされています。
腸脛靭帯Iliotibial band (ITB)は大腿外側組織である大腿筋膜張筋、大殿筋、中殿筋、外側広筋の筋膜が合流し、分厚くなった組織とされています。
腸脛靭帯は大殿筋、大腿筋膜張筋から起始し、膝に近い脛骨前外側部の隆起であるGerdy結節に停止します。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)は主にランニングによる膝関節周辺傷害のひとつです。
膝関節の屈伸を繰り返すことで、腸脛靭帯が大腿骨外顆と接触することで滑膜炎(炎症)を起こし、疼痛が発生するとされています。
海外では腸脛靭帯症候群Iliotibial band syndrome (ITBS)と表現されることが多いようです。
マラソンやバスケットボール、自転車競技等のアスリートに発生しやすいです。
大腿骨外顆での圧痛やgrasping test(大腿骨外顆部で腸脛靭帯を圧迫し膝を90°屈曲位から伸展させる)、Ober testで疼痛が誘発されることが多いです。
『Oberテスト変法の方法と有用性』https://undoukirehazemi.com/%e3%80%8eobel%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e5%a4%89%e6%b3%95%e3%81%ae%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e6%9c%89%e7%94%a8%e6%80%a7%e3%80%8f/
外因性の要因としては、走行距離や頻度の急激な増加、踵の外側が摩耗した靴の使用などが報告されています
内因性の要因としては、内反膝、回外足、大腿筋膜張筋の短縮や中殿筋筋力不足などが報告されています。
そんな中、2021年に、ランナー膝(腸脛靭帯炎)の大腿筋膜張筋、腸脛靭帯に対してストレッチおよびフォームローラーは即時効果があるかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
Int J Sports Phys Ther (Report missing IFs)
. 2021 Jun 1;16(3):651-661.
doi: 10.26603/001c.23606.
The Immediate Effects of Foam Rolling and Stretching on Iliotibial Band Stiffness: A Randomized Controlled Trial
フォームローリングとストレッチの腸脛靱帯硬直に対する即効性: 無作為化比較試験
Talin M Pepper 1, Jean-Michel Brismée 1, Phillip S Sizer Jr 1, Jeegisha Kapila 1, Gesine H Seeber 2, Christopher A Huggins 3, Troy L Hooper 1
Affiliations expand
- PMID: 34123517 PMCID: PMC8169023 DOI: 10.26603/001c.23606
Abstract
Background: Iliotibial Band Syndrome (ITBS) is a common clinical condition likely caused by abnormal compressive forces to the iliotibial band (ITB). Stretching interventions are common in ITBS treatment and may predominantly affect tensor fascia latae (TFL). Another ITBS treatment is foam rolling, which may more directly affect the ITB. Shear wave ultrasound elastography (SWUE) measures real-time soft tissue stiffness, allowing tissue changes to be measured and compared.
概要
背景 腸脛靱帯症候群(ITBS)は、腸脛靱帯(ITB)への異常な圧縮力によって引き起こされると考えられる一般的な臨床疾患である。ストレッチはITBSの治療において一般的であり、主に大腿筋膜張筋(TFL)に作用する。また、ITBSの治療法としてフォームローリングがあるが、これはより直接的にITBに作用する可能性がある。Shear wave ultrasound elastography(SWUE)は、軟部組織の硬さをリアルタイムで測定するため、組織の変化を測定し、比較することが可能である。
Purpose: To examine effects of foam rolling and iliotibial complex stretching on ITB stiffness at 0˚ and 10˚ of hip adduction and hip adduction passive range of motion (PROM).
目的:股関節内転および股関節内転受動域(PROM)の0°および10°におけるITBスティフネスに対するフォームローリングおよび腸脛骨複合体ストレッチの効果を検討すること。
Study design: Randomized controlled trial.
研究デザイン。無作為化比較試験。
Methods: Data from 11 males (age = 30.5 ± 9.0 years, Body Mass Index (BMI) = 27.8 ± 4.0) and 19 females (age = 23.5 ± 4.9, BMI = 23.2 ± 2.1) were analyzed for this study. Subjects were randomly assigned to one of three groups: control, stretching, and foam rolling. Shear wave ultrasound elastography measurements included ITB Young’s modulus at the mid-thigh, the distal femur and the TFL muscle belly. ITB-to-femur depth was measured at mid-thigh level. Hip adduction PROM was measured from digital images taken during the movement.
方法 男性11名(年齢=30.5±9.0歳、BMI=27.8±4.0)および女性19名(年齢=23.5±4.9、BMI=23.2±2.1)のデータを本研究で分析対象とした。被験者は、コントロール、ストレッチ、フォームローリングの3つのグループのうち1つに無作為に割り当てられた。せん断波超音波エラストグラフィーの測定は、大腿中央部、大腿遠位部、TFL筋腹部でのITBヤング率(縦弾性係数)を含んでいた。ITB-大腿骨間深度は、大腿中央部で測定した。股関節内転PROMは、動作中に撮影されたデジタル画像から測定された。
Results: No significant interactions or main effects were found for group or time differences in ITB Young’s modulus at the three measured locations. The ITB stiffness at the mid-thigh and distal femur increased with 10° adduction, but TFL stiffness did not increase. A main effect for adduction PROM was observed, where PROM increased 0.8˚ post-treatment (p = 0.02).
結果 3カ所の測定位置におけるITBのヤング率(縦弾性係数)には、群間および時間差の有意な交互作用および主効果は認められなかった。大腿中央部および大腿遠位部のITB剛性は10°内転させると上昇したが、TFL剛性は上昇しなかった。内転PROMの主効果が観察され、治療後PROMは0.8˚増加した(p = 0.02)。
◆論文の結論
Conclusion: A single episode of stretching and foam rolling does not affect short-term ITB stiffness. The lack of ITB stiffness changes may be from an inadequate intervention stimulus or indicate that the interventions have no impact on ITB stiffness.
結論 ストレッチとフォームローリングの1回の実施は、短期的なITBスティフネスに影響を与えない。ITBスティフネスの変化の欠如は、不適切な介入刺激によるものか、または介入がITBスティフネスに影響を与えないことを示すものである可能性がある。
◆まとめ
上記論文では腸脛靱帯症候群(ランナー膝)の男性11名(年齢=30.5±9.0歳)および女性19名(年齢=23.5±4.9)に対してコントロール群、ストレッチ群、フォームローラー群の3群に振り分け、即時効果について検証しています。
評価項目は他動での股関節内転可動域および超音波画像診断装置にて大腿中央部、大腿遠位部、大腿筋膜張筋(TFL)筋腹部でのiliotibial band (ITB) ヤング率(縦弾性係数)を計測しております。ヤング率が大きいほど剛性が高いことを示しております。
結果として、大腿中央部、大腿遠位部、大腿筋膜張筋(TFL)筋腹部でのiliotibial band (ITB) ヤング率は有意差がなかったようです。
他動での股関節内転可動域は改善したようですが1˚未満のわずかな変化であったようです。
上記論文の結果を踏まえると、腸脛靱帯症候群(ランナー膝)に対しての大腿筋膜張筋(TFL)および腸脛靭帯(ITB)のストレッチおよびフォームローリングは短期的な効果としては乏しいようです。
中期、長期的な治療効果についても気になるところですね。
今回は、『ランナー膝(腸脛靭帯炎)へのフォームローラーおよびストレッチの即時効果は?』
について解説させていただきました。