こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『上腕二頭筋長頭腱炎に対してブロック注射か体外衝撃波のどちらが効果的か?』
について解説させていただきます。
上腕二頭筋長頭腱炎は肩関節周囲炎の症状の一つであり肩関節痛を生じます。
野球やバレーボール、テニスのサーブの繰り返しなどのスポーツにより生じることもあります。
上腕二頭筋長頭腱炎の治療としては保存療法が主体ですが、難治性のものには腱固定術や腱切除術といった手術も考慮されます。
そんな中、2021年に、上腕二頭筋長頭腱炎に対して筋骨格系超音波画像診断を併用したステロイド注射と体外衝撃波のどちらが有効かを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
◆体外衝撃波治療(shock wave)
体外衝撃波治療(shock wave)は衝撃波を患部に照射する新しい整形外科領域の治療法です。
腱付着部炎などの有痛性疾患の痛みに対して応用されています。
1回の治療時間は約5~10分で、一定の期間をあけて、複数回照射を実施します。
体外衝撃波治療は集束型衝撃波と拡散型圧力波の2種類あり、集束型の方が治療効果は高いですが、治療者は医師に限定されます。拡散型については収束型と比較すると効果は少し劣りますが、医師の指示の下、理学療法士が治療を実施することが可能です。
日本では集束型においては難治性足底腱膜炎に対して、保険が適応されています。(2022年12月現在)
拡散型については消炎鎮痛の分類で保険適応されています。
よって、日本での体外衝撃波治療(shock wave)は、自費診療で行っている診療機関も多くあります。
◆論文紹介
Am J Transl Res (IF: 4.06; Q3)
. 2021 Mar 15;13(3):1734-1741.
eCollection 2021.
Study of the therapeutic effects of betamethasone injection combined with musculoskeletal ultrasonography compared with radial shock wave therapy in the treatment of tenosynovitis of the long head of the biceps brachii
上腕二頭筋長頭腱炎に対する筋骨格系超音波検査を併用したベタメタゾン注射と体外衝撃波の治療効果に関する検討
Lizhen Xiao 1, Jing Zou 1, Fengkai Fang 1
Affiliations expand
- PMID: 33841696 PMCID: PMC8014383
Abstract
Objective: To compare the therapeutic effects of compound betamethasone injection (CBI) combined with musculoskeletal ultrasonography (MSUS) and radial shock wave therapy (RSWT) in the treatment of tenosynovitis of the long head of the biceps brachii tendon (TLHBBT).
概要
目的 上腕二頭筋長頭腱炎(TLHBBT)の治療において、筋骨格系超音波検査(MSUS)を併用したベタメタゾン複合注射(CBI)と体外衝撃波(RSWT)の治療効果を比較することである。
Methods: A total of 93 patients with TLHBBT admitted to our hospital were selected and randomly divided into an observation group (n=48) and a control group (n=45). The control group received RSWT, while the observation group received CBI combined with MSUS. The therapeutic effects were compared between the two groups.
方法 当院に入院中のTLHBBT(上腕二頭筋長頭腱炎)患者93名を選び、無作為に観察群(n=48)と対照群(n=45)とに分けた。対照群にはRSWT(体外衝撃波)を、観察群にはCBIとMSUS(筋骨格系超音波検査)を併用した。治療効果を両群間で比較した。
Results: The visual analog scale scores for the affected sites in the observation group were lower than those in the control group immediately after treatment and at 1, 2 and 4 weeks after treatment, while the constant-Murley scale scores for the active range of motion for shoulder forward flexion and shoulder joint function in the observation group were higher than those in the control group (P < 0.05). After treatment, the positive rate in Yergason’s test in the observation group (2.08%) was lower than that in the control group (15.56%), while the negative rate in the observation group (97.92%) was higher than that in the control group (84.44%) (P < 0.05). The overall response rate (ORR) in the observation group (93.75%) was higher than that in the control group (80.00%) (P < 0.05).
結果 治療直後、治療後1、2、4週目の患部のVisual analog scale scoreは、観察群が対照群より低く、肩屈曲の可動域と肩関節機能のConstant-Murley scale scoreは観察群が対照群より高かった(P < 0.05).治療後,観察群の Yergason テスト陽性率(2.08%)は対照群(15.56%)より低く,観察群の陰性率(97.92%)は対照群(84.44%)より高かった(P<0.05).また,全奏功率(ORR)は,観察群(93.75%)が対照群(80.00%)よりも高かった(P < 0.05)。
◆論文の結論
Conclusion: CBI combined with MSUS, is superior to RSWT in treating TLHBBT, and it can remarkably reduce pain, increase joint range of motion, and improve joint function.
結論 CBI(ベタメタゾン複合注射)とMSUS筋骨格系超音波検査)の併用は,TLHBBT(上腕二頭筋長頭腱炎)の治療においてRSWT(体外衝撃波)より優れており,痛みを著しく軽減し,関節可動域を広げ,関節機能を向上させることができる.
◆まとめ
上記論文では上腕二頭筋長頭腱炎93名に対して、筋骨格系超音波検査(MSUS)を併用したステロイド注射群48名と体外衝撃波群45名の2群に分けて、どちらの治療効果が高いかを検証しております。
治療直後、治療後1,2,4週目にVAS(疼痛)、肩関節可動域、Constant-Murley scale score(肩関節機能スコア)、Yergason テスト陽性率、全奏功率(ORR:効果があった患者の割合)を評価しております。
結果として、治療直後、治療後1,2,4週目において、ステロイド注射群の方がVAS、肩関節屈曲可動域、肩関節機能スコア、Yergason テスト陽性率、全奏功率(ORR)の全てにおいて優れていたようです。
上記論文の結果を踏まえると、上腕二頭筋長頭腱炎に対しては、体外衝撃波よりも筋骨格系超音波検査(MSUS)を併用したステロイド注射の方が肩関節可動域、疼痛、機能面に対して、より効果が高いことがわかりました。
今回は、『上腕二頭筋長頭腱炎に対してブロック注射か体外衝撃波のどちらが効果的か?』
について解説させていただきました。