こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『橈骨遠位端骨折後のリハビリ初期の介入はダーツスローモーションが有効か?』について解説させていただきます。
橈骨遠位端骨折後のリハビリや手関節の関節可動域練習をする際にダーツスローモーションが選択されることも多くなってきております。
橈骨遠位端骨折後のリハビリの初期段階でダーツスローモーションが有効なのか検証していきたいと思います。
◆ダーツスローモーションとは
ダーツスローモーションは名称の通りダーツを投げる際の運動に似ている運動であります。運動学的には、国際手の外科学会委員会にて『橈背屈から掌尺屈時に起こる機能的な斜め方向の運動』と定義されているようです。
ダーツスローモーションは一般的には手根骨遠位列(大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨)のみが動くと言われています。
前腕回内45°位での橈背屈から掌尺屈(ダーツスローモーション)では橈骨手根関節はほとんど動かなくなり、手根中央関節の単独運動となると報告されています(Crisco JJ et.al:JBJS .2005)
これらの報告を参照すれば、ダーツスローモーションは、橈骨手根関節はほとんど動かないということなので、橈骨遠位端骨折の保存症例でのギプス固定除去後の早期や、術後の固定性不良、整復不良など、橈骨手根関節にあまり負荷を与えたくない時に有効なリハビリとなります。
そんな中、2016年に、あらためてご遺体でダーツスローモーション時に手根中央関節に動きがないか検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
『橈骨遠位端骨折の治療 保存療法VS手術療法 ~橈骨遠位端骨折 診療ガイドライン2017より~』
◆論文紹介
J Hand Ther (IF: 1.95; Q3)
. Apr-Jun 2016;29(2):175-82.
doi: 10.1016/j.jht.2016.02.006. Epub 2016 Feb 19.
Scaphoid tuberosity excursion is minimized during a dart-throwing motion: A biomechanical study
ダーツスローモーションにおいて舟状骨結節の運動範囲は最小化される。バイオメカニクス的研究
Frederick W Werner 1, Levi G Sutton 2, Niladri Basu 2, Walter H Short 2, Hisao Moritomo 3, Hugo St-Amand 4
Affiliations expand
- PMID: 27264902 PMCID: PMC4899813 DOI: 10.1016/j.jht.2016.02.006
Abstract
Purpose: The purpose of this study was to determine whether the excursion of the scaphoid tuberosity and therefore scaphoid motion is minimized during a dart-throwing motion.
概要
目的】本研究の目的は、ダーツスローモーションにおいて、舟状骨結節の運動範囲、ひいては舟状骨の運動が最小化されるかどうかを明らかにすることである。
Methods: Scaphoid tuberosity excursion was studied as an indicator of scaphoid motion in 29 cadaver wrists as they were moved through wrist flexion-extension, radioulnar deviation, and a dart-throwing motion.
方法、舟状骨結節の伸展を舟状骨の動きの指標として、29名の死体手関節で、ダーツスローモーション中の手関節の屈曲-伸展、橈尺偏位を検討した。
Results: Study results demonstrate that excursion was significantly less during the dart-throwing motion than during either wrist flexion-extension or radioulnar deviation.
結果 研究の結果、ダーツスローモーションでは、手関節の屈曲-伸展、橈尺骨逸脱のいずれの動作のときよりも、振れ幅が有意に小さくなることが示された。
◆論文の結論
Conclusion: If the goal of early wrist motion after carpal ligament or distal radius injury and reconstruction is to minimize loading of the healing structures, a wrist motion in which scaphoid motion is minimal should reduce length changes in associated ligamentous structures. Therefore, during rehabilitation, if a patient uses a dart-throwing motion that minimizes his or her scaphoid tuberosity excursion, there should be minimal changes in ligament loading while still allowing wrist motion.
結論 手根管や橈骨遠位端の損傷・再建後の早期手関節動作の目標が治癒構造への負荷を最小限に抑えることであるならば、舟状骨の動きを最小限に抑えた手関節動作は関連靱帯構造の長さ変化を抑えるはずである。したがって、リハビリテーション中に患者がダーツスローモーションで舟状骨結節の伸展を最小限に抑えれば、手関節の動きを確保しつつ靭帯の負荷の変化を最小限に抑えることができるはずです。
◆まとめ
上記論文ではご遺体29例にてダーツスローモーション時の手関節(舟状骨結節の動き)の掌屈、背屈、撓屈、尺屈の運動を検証しております。
研究の結果、ダーツスローモーションでは、手関節の掌屈、背屈、撓屈、尺屈いずれの動作のときよりも、動きが有意に小さくなることが示されております。
Criscoら(2005)の報告では、健常人24名のダーツスローモーションを3次元解析装置にて検証した結果、他の手関節の運動よりも、舟状骨と月状骨は有意に動きが少なく、背屈時には2~4mm、掌屈時には有意な運動はなかったと報告しています。
今回の論文の報告は2005年のCriscoらの報告と相違はないと思われます。
よって今回の論文から読み取ると、ダーツスローモーションは橈骨遠位端骨折の保存症例でのギプス固定除去後の早期のリハビリや、術後の固定性不良例、整復不良例など、橈骨手根関節にあまり負荷を与えたくない時に有効なリハビリとなる可能性が考えられます。
今回は、『橈骨遠位端骨折後のリハビリ初期の介入はダーツスローモーションが有効か?』について解説させていただきました。