こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『足底腱膜炎に対する超音波治療は効果がない?』について解説させていただきます。
足底腱膜は踵骨から足趾の底面に拡がる膜状の組織であり、ジャンプやランニングなど衝撃を吸収する作用があります。
足底腱膜炎は足部に愁訴のある患者の11~15%を占めるとされています。(Preffer G:Foot Ankle Int.1999)
また、アメリカにおいては200万人の患者がおり、国民の約10%が罹患するとされ、特にアスリートに多く8~21%が罹患するという報告があります。
足底腱膜炎はランニングやスポーツ、長時間の立ち仕事などで発症することが多いとされています。
症状としては起床後の歩行時に痛みを感じることが多く、夕方で特に症状が強くなることが多いとのことです。
『足底腱膜炎にはアキレス腱ストレッチが有効?~heel cord理論~』
そんな中、2018年に、足底腱膜炎に対する超音波治療の効果を検証している論文が海外で報告されております。
足底腱膜炎に対する超音波治療は、日本だけでなく世界的にも多く取り入れられている治療法です。
この論文の検証結果が気になるところであります。
◆論文紹介
J Orthop Sports Phys Ther (IF: 4.75; Q1)
. 2018 Nov;48(11):847-855.
doi: 10.2519/jospt.2018.8110. Epub 2018 Jul 11.
Additive Effect of Therapeutic Ultrasound in the Treatment of Plantar Fasciitis: A Randomized Controlled Trial
足底腱膜炎の治療における治療用超音波の相加効果: 無作為化対照試験
Yigal Katzap, Michael Haidukov, Olivier M Berland, Ron Ben Itzhak, Leonid Kalichman
- PMID: 29996734 DOI: 10.2519/jospt.2018.8110
Abstract
Background: Plantar fasciitis is the chief cause of pain in the plantar surface of the heel. Therapeutic ultrasound is one of the most common conservative treatment modalities used by physical therapists worldwide, despite scarce evidence of its efficacy in treating plantar fasciitis.
概要
背景 足底腱膜炎は、踵の足底面の痛みの主な原因である。治療用超音波は,足底腱膜炎に対する有効性のエビデンスが乏しいにもかかわらず,世界中の理学療法士によって最も一般的に使用されている保存的治療法の1つである。
Objective: To evaluate the additive effect of therapeutic ultrasound in the treatment of plantar fasciitis in terms of pain, function, and quality of life.
目的 足底腱膜炎の治療における超音波治療の付加的な効果を,疼痛,機能,QOLの観点から評価する.
Methods: In this prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial, 54 patients with plantar fasciitis, aged 24 to 80 years, who met the inclusion criteria were randomized into an active intervention and a control group. Individuals in the active intervention group were treated with self-performed stretching of the plantar fascia and calf muscles and with therapeutic ultrasound. Individuals in the control group were treated with the same stretching exercises and sham ultrasound. Both groups received 8 treatments, twice weekly. Outcome measures included a numeric pain-rating scale, the computerized adaptive test for the foot and ankle, and an algometric test.
方法 この前向き無作為二重盲検プラセボ対照臨床試験において、対象基準を満たした24歳から80歳の足底腱膜炎患者54名を、積極的介入群と対照群に無作為に割り付けた。積極的介入群では、足底腱膜とふくらはぎの筋肉を自分で行うストレッチと超音波治療が行われた。対照群には、同じストレッチ運動と偽超音波治療が行われた。両群とも週2回、8回の治療を受けた。アウトカム評価には、痛みの数値評価スケール、足と足関節のコンピュータ適応テスト、アルゴメトリックテストが含まれた。
Results: Both groups showed statistically significant improvement in all outcome measures (P<.001, both groups). At the completion of the study, no statistically significant differences were found between the groups in any of the outcomes.
結果 両群とも、すべての結果指標において統計的に有意な改善を示した(P<.001、両群とも)。試験終了時には、いずれのアウトカムにおいても、両群間に統計的な有意差は認められなかった。
◆論文の結論
Conclusion: The addition of therapeutic ultrasound did not improve the efficacy of conservative treatment for plantar fasciitis. Therefore, the authors recommend excluding therapeutic ultrasound from the treatment of plantar fasciitis and agree with results of previous studies that stretching may be an effective treatment for healing plantar fasciitis.
結論 治療用超音波の追加は、足底腱膜炎に対する保存的治療の効果を向上させることはなかった。したがって、著者らは足底腱膜炎の治療から超音波治療を除外することを推奨し、ストレッチが足底腱膜炎の治癒に有効な治療法である可能性があるという先行研究の結果に同意しています。
◆まとめ
上記の論文では 足底腱膜炎患者54名(24-80歳)に対して足底腱膜と下腿三頭筋ストレッチ+超音波治療(超音波治療群)とプラセボ群の2群に分けて効果を検証しております。
週2回、8回の治療後に痛みおよび足部と足関節のテスト痛覚測定により評価しております。
結果として両群ともに、すべての評価指標において有意に改善しております。
しかし、両群間において有意差はなかったとのことですので、超音波治療をしても、しなくても効果は変わらなかったということになります。
上記論文の結果を踏まえると、足底腱膜炎に対する保存療法においては、超音波治療に追加しても治療効果を向上させることはできないということになります。
著者らは足底腱膜炎の治療において超音波治療を除外することを推奨しています。
今回は、『足底腱膜炎に対する超音波治療は効果がない?』について解説させていただきました。