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『外反母趾は遺伝するのか?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『外反母趾は遺伝するのか?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

について解説させていただきます。

 



外反母趾は、母趾中足指節(MTP)関節で母趾が外反した変形であるとされています。

外反母趾の歴史としては1782年に靴を履く文化にあったヨーロッパにおいてLaforestが靴の要因について報告しており、日本においては1956年にMizunoら(日整会誌)にて論文を掲載しております。

外反母趾の定義に関しては、外反母趾診療ガイドラインにおいて外反母趾角(hallux valgus angle:HV角)が20°以上としています。

 



◆外反母趾診療ガイドライン2022 改定第3版

外反母趾に関しては、2008年に初版の「外反母趾 診療ガイドライン」が出版され、その6年後である2014年には改訂第2版が南江堂から出版されています。

そして2022年5月27に改訂第3版が出版されました。

ガイドラインは約6年で、時代遅れの傾向になることがあり、3~5年で更新するべきとの見解があるようです。

このガイドラインでは、世界中から有益な論文を様々な視点から検証し、再編された後に出版されています。


【監修】日本整形外科学会、日本足の外科学会

初版は1982年から2002年までの論文を検索しており、改訂第2版では2003年から2012年の範囲でヒットした2,500件以上の論文から199件が新たに追加されております。

改定第3版では2014年以降にランダム化比較試験(RCT)の論文が増えており、これらがより多く反映されているとのことです。


●外反母趾変形の発生頻度、男女比、遺伝要素など

外反母趾ガイドラインの第1章『疫学』ついては、52の論文(海外論文43編、和文9編)から検証されています。

このガイドラインの第1章『疫学』中から、

『外反母趾変形の発生頻度、男女比はどのくらいか』

『外反母趾には遺伝的要因はあるか』

という項目がありますので見てみたいと思います。

 



◆外反母趾の発生頻度、男女比

Nixらの(J Foot Ankle Res.2010)システマティックレビュー(約50万人、76研究データ)において、外反母趾変形の発生率は年齢とともに増加し、18~65歳で23%、65歳以上で35.7%であったと報告されています。

全体では男性が13%、女性が30%であり女性の有病率が高いとのことです。

また、2010年以降の米国、スペイン、中国の地域住民に対する大規模調査(被検者800~2446名、39歳以上、平均60歳以上)で、

米国では全体で31.0%、男性が19.7%、女性が40.3%(Hannan MT,et al:Arthritis Care Res.2013)

スペインでは全体で39.0%、男性が28.3%、女性が48.1%(Gonzalez-Martin C,et al:Rheumatol Int.2017)

中国では全体で55.8%、男性が53.3%、女性が58.2% (Luo XD,et al:Foot(Edinb).2017)

と報告されています。

日本での地域住民に対する調査(被検者217名~1248名、平均65歳以上)では、全体で28.8%~38.7%、男性では11.6%~22.4%、女性では35.2%~43.8%と報告されています。(Nishimura A,et al:Orthop Sci.2014)

(弓岡まみほか:靴医学.2014)

(岩瀬弘明ほか:ヘルスプロモーション理療研.2017)

いずれの国の報告においても男女比では女性の方が外反母趾の発症率は高いようです。

 



◆外反母趾変形の遺伝的要因

一般的に外反母趾は強い家族制傾向があるとの認識のようです。

ヨーロッパ系の白人における地域住民を対象とした研究では、年齢や性別は異なるが、外反母趾には中等度から高度の有意な遺伝率がみられると報告されています。(Hannan MT,et al:Arthritis Care Res(Hoboken).2013)

日本の女子大学生を対象とした報告もあり、外反母趾のあるものでは47.7%に外反母趾の家族歴があった(Okuda H,et al:J Epidemiol.2014)とのことです。

このような遺伝は、母親や祖母から受け継いでいるとする報告があり、家族歴のある人においては、60.4%で母親からの遺伝が疑われ、不完全な常染色体優性遺伝の存在を示唆するとされているようです。

男性においての報告もあり、男性の外反母趾患者では68%に外反母趾の家族歴があったとされております。また、履き物との関連性は認められなかったようで、主に母親から遺伝するとのことです。(Nery C,et al:Foot Ankle Int.2013)

一般的に外反母趾の要因として履物との関連があるとされていますが、これらの報告から考えると、遺伝的要素も影響が強いと思われます。


今回は、『外反母趾は遺伝するのか?~外反母趾診療ガイドライン2022より~』

について解説させていただきました。

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