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『夜間のこむら返りに対する深腓骨神経ブロックは効果があるのか?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『夜間のこむら返りに対する深腓骨神経ブロックは効果があるのか?』について解説させていただきます。

 



いわゆる“こむら返り”は、骨格筋に不随意に出現する疼痛を伴った急激な筋攣縮であり、ふくらはぎ(こむら):下腿三頭筋に高頻度に生じることが多いため、このように俗称されています。(髙山ら:日本腰痛会誌.2002 )

こむら返りの発生頻度は年齢とともに増加し、多くの高齢者を苦しめる疾患の一つでもあります。(辻 隆宏:日本ペインクリニック学会誌.2019)

高齢者では夜間によく起きることがあり、”Night cramps”といわれています。

その発生機序についてはさまざまな報告があります。

腰椎の退行変性に伴う椎間板の狭小化や椎間関節の肥大などによる神経根の圧迫が原因と考えられている。(Rish B,L.1985  Sugar,O.1985)

また、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアおよびこれらの疾患に対する手術後にもよく起こることが知られています。

 



その他にも、脱水症、人工透析、肝硬変、糖尿病、下肢静脈瘤など多くの内科的疾患も原疾患となり得るともされています。

また、妊婦との関連についても報告されています。

33~50%の妊婦はこむら返りを経験しており、週数が進むにつれて、症状が増悪する傾向にある。(Hensley JG:J Midwifery Womens Health.2009)

妊娠中のこむら返りの発生頻度は明らかにはなっていませんが、血中のカルシウム、マグネシウムの減少、下肢の筋肉疲労、循環不全(中島 義之.2013)、末梢神経の異常興奮(Miller TM,et al.2005)などの影響が考えられます。

日本では薬物療法として芍薬甘草湯という漢方薬がよく使用されています。

 



そんな中、2015年に腰椎手術後の夜間のこむら返りがある症例に対する深腓骨神経ブロックの効果を検証した日本人の論文が海外で報告されています。

どのような内容が記載されているか気になるところです。

ちなみに、こむら返りに対する深腓骨神経ブロックは、2002年の髙山らの報告(日本腰痛会誌)以降、散見されています。

  



◆論文紹介

Brain Behav (IF: 2.71; Q3)

. 2015 Sep;5(9):e00370.

 doi: 10.1002/brb3.370. Epub 2015 Aug 7.

Treatment of nocturnal leg cramps by blockade of the medial branch of the deep peroneal nerve after lumbar spine surgery

腰椎手術後の深腓骨神経内側枝の遮断による夜間下肢痙攣の治療について

Takayuki Imura 1Gen Inoue 1Toshiyuki Nakazawa 1Masayuki Miyagi 1Wataru Saito 1Kentaro Uchida 1Takanori Namba 1Eiki Shirasawa 1Naonobu Takahira 2Masashi Takaso 1

Affiliations expand

PMID: 26445706  PMCID: PMC4589815  DOI: 10.1002/brb3.370

Abstract

Introduction: Patients with lumbar spine disease sometimes complain of nocturnal leg cramps. We sought to investigate the effectiveness of blocking the medial branch of the deep peroneal nerve as treatment for nocturnal leg cramps after spinal surgery for lumbar spine disease.

概要

はじめに 腰椎疾患患者は、夜間の脚の痙攣(こむら返り)を訴えることがある。我々は、腰椎疾患に対する脊椎手術後の夜間下肢痙攣に対する治療として、深腓骨神経内側枝を遮断することの有効性を検討した。

Methods: We evaluated 66 postoperative patients in this prospective comparative study of a group of patients with a nerve block (n = 41) and a control group without (n = 25). In the block group, the medial branch of the deep peroneal nerve was blocked at the distal two-thirds of the interspace between the first and second metatarsals using 5.0 mL of 1.0% lidocaine.

方法 術後66名の患者を対象に,神経ブロックを行った群(n=41)と行わなかった対照群(n=25)の前向き比較検討を行った。ブロック群では,深腓骨神経内側枝を第1中足骨と第2中足骨の間の遠位3分の2の位置で,1.0%リドカイン5.0mLを使用してブロックした.

Results: Two weeks after the block, the frequency of nocturnal leg cramps was reduced to less than a quarter of pretreatment baseline frequency in 61.0% of patients (n = 25) and less than half in 80.5% (n = 33). In the control group, the frequency of the leg cramps was reduced from baseline in 32.0% of patients (n = 8), and was unchanged or increased in 68.0% (n = 17) at 2 weeks. Cramp frequency was reduced to less than a quarter or less than half of baseline frequency in a significantly (P < 0.05 and P < 0.01, respectively) larger percentage of patients in the block group. The severity of each cramp was less in about two-thirds of patients (63.4%; n = 26) in the block group and was unchanged in one-third (31.7%; n = 13).

結果 ブロック後2週間で,夜間下肢痙攣の頻度は治療前のベースラインの4分の1以下に減少し,61.0% (n = 25) と80.5% (n = 33) で半分以下であった.対照群では,2週間後の下肢けいれん頻度はベースラインより32.0%(n=8)減少し,68.0%(n=17)で横ばいまたは増加した.痙攣の頻度は,ブロック群で有意に(それぞれP < 0.05,P < 0.01)高い割合でベースライン時の4分の1以下または半分以下に減少した.けいれんの重症度は,ブロック群の約3分の2(63.4%;n=26)で軽減し,3分の1(31.7%;n=13)では変化しなかった.

 



◆論文の結論

Conclusions: Blocking the medial branch of the peroneal nerve can be an effective, long-lasting, and simple treatment with low risk for nocturnal cramps sustained after lumbar spine surgery.

結論 深腓骨神経内側枝のブロックは、腰椎手術後の夜間けいれんに対してリスクが低く、効果的で長持ちする簡便な治療法である可能性がある。

 



◆まとめ

上記の論文では、腰椎術後症例66名を深腓骨神経内側枝ブロックを行った群41名と、対照群25名の2群に分けて前向きに調査し、こむら返りの発生頻度について検証しております。

結果として神経ブロック後2週間で夜間下肢痙攣(こむら返り)の頻度は有意に減少し、61%が治療前の1/4以下になり、80.5%が半分以下になったとのことです。

対照群では2週間後の夜間下肢痙攣(こむら返り)の頻度は68%が横ばいまたは増加しているようです。

また、夜間下肢痙攣(こむら返り)の重症度は神経ブロック群で63.4%で軽減し、31.7%では変化がなかったようです。

上記論文の結果を踏まえると、深腓骨神経内側枝のブロックは、腰椎手術後の夜間下肢痙攣(こむら返り)のリスクが低く頻度を抑えることができる治療法であると考えられます。

夜間下肢痙攣(こむら返り)に対する深腓骨神経内側枝のブロックの効果の機序はまだ不明な部分も多いようです。

神経ブロックにより疼痛伝導路の遮断や痛みが作り出す悪循環の遮断、血行改善などが下腿や足趾のこむら返りに作用しているのではないかという説があるようです。

今回は、『夜間のこむら返りに対する深腓骨神経ブロックは効果があるのか?』について解説させていただきました。

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