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『外反母趾に対する装具療法の効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『外反母趾に対する装具療法の効果は?』について解説させていただきます。

 



外反母趾は、母趾中足指節(MTP)関節で母趾が外反した変形であります。

外反母趾の要因としては遺伝や性差、加齢による影響が挙げられ、特に女性に圧倒的に多いとされています。

また、ハイヒールやつま先の細い靴を多用することで、第1中足指節関節(母趾MTP関節)に外反力が作用して変形すると、一般的には認識されております。

外反母趾の定義としては、(清水新吾ら:日足の外科会誌.2010)フットプリント上での外反母趾角度が16°以上や、外反母趾診療ガイドライン2022では外反母趾角度が20°以上を外反母趾としています。


外反母趾が発症しやすい要因としては

解剖学的要因:第一中足骨内反、足根中足関節の不安定性、足趾の長さ、全身性関節弛緩

外的要因:体重、靴の形態

などが一般的に挙げられていますが、明確にはなっていないものもあります。

 



◆外反母趾の特徴:(外反母趾診療ガイドライン 2014)

・第一中足骨の内反

・母趾MTP関節部の突出

・母趾基節骨の外転、回内変形

・開張足

そんな中、2019年に、外反母趾と足底扁平足との関連性を調査した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところであります。

 



◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

 Foot (Edinb) (IF: 1.07; Q2)

. 2019 Dec;41:6-11.

 doi: 10.1016/j.foot.2019.06.002. Epub 2019 Jun 25.

A comparison of the hallux valgus angle, range of motion, and patient satisfaction after use of dynamic and static orthoses

動的装具と静的装具使用後の外反母趾角、可動域、患者満足度の比較

Nasrin Moulodi 1Mojtaba Kamyab 2Maede Farzadi 3

Affiliations expand

Abstract

Background: Conservative treatment is recommended for mild and moderate hallux valgus. The treatment may include two different types of orthoses: a dynamic orthosis and a static orthosis. The aim of this study was to compare the hallux valgus angle, hallux valgus range of motion, and patient satisfaction after the use of a dynamic and a static orthosis for the treatment of hallux valgus.

概要

背景 軽度および中等度の外反母趾には保存的治療が推奨される。その治療には,動的装具と静的装具の2種類の装具を用いることがある.本研究の目的は,外反母趾の治療に動的装具と静的装具を使用した場合の外反母趾角,外反母趾可動域,患者満足度を比較することである.

Methods: Twenty-four participants contributed to this cross-over study. Participants were randomly allocated to orthotic treatments at the start. The hallux valgus angle and range of motion were measured using a goniometer. Pain, signs and symptoms, function in activities of daily living (ADL), function in sport and recreation, and foot and ankle-related quality of life (QOL) were measured using the Foot and Ankle Outcome Score (FAOS) questionnaire. The participants then switched to using the other orthosis. A one-way repeated measure ANOVA was conducted to compare the measured variables in subjects at 4 conditions before and after of using each orthosis.

方法 24名の参加者がこのクロスオーバー研究に協力した。参加者は、開始時に装具治療にランダムに割り付けられた。外反母趾の角度と可動域はゴニオメーターを用いて測定した。痛み、徴候・症状、日常生活動作(ADL)、スポーツ・レクリエーションにおける機能、足部と足関節に関するQOLは、Foot and Ankle Outcome Score(FAOS)質問票を用いて測定された。その後、参加者はもう一方の装具の使用に切り替えた。一元配置反復測定分散分析により、各装具の使用前と使用後の4つの条件における被験者の測定変数を比較した。

Results: There was a significant difference in the hallux valgus angle (p=0.001). The Bonferroni test indicated that both static and dynamic orthoses significantly decrease the angle of hallux valgus, respectively before static, after static (mean difference=-2.67, p=0.001) and before dynamic, after dynamic conditions (mean difference=-2.13, p=0.02). There was also a significant difference in subjects range of motion by using a dynamic orthosis in before dynamic, after dynamic conditions (mean difference=9.77, p=0.01). There was no significant difference in total FAOS score within the conditions (p=0.067).

結果 外反母趾の角度に有意差が認められた(p=0.001)。Bonferroni検定の結果,静的装具,動的装具ともに,静的前,静的後(平均差=-2.67,p=0.001),動的前,動的後(平均差=-2.13,p=0.02)でそれぞれ有意に内反角を減少させることが明らかとなった.また、動的装具を使用した場合の被験者の可動域は、動的前と動的後で有意差があった(平均差=9.77、p=0.01)。FAOSスコアについては、両条件で有意差は認められなかった(p=0.067)。

 



◆論文の結論

Conclusion: The use of both static and dynamic orthoses for 1 month can reduce the hallux valgus angle up to 2-3°. To achieve better results, it is suggested to wear orthoses for longer time. The dynamic orthosis also increases the passive range of motion of the first metatarsophalangeal joint and it seems to be effective during walking.

結論 静的装具と動的装具を1ヶ月間使用することにより,外反母趾の角度を2~3°まで減少させることができる.より良い結果を得るためには,より長い期間装具を装着することが望まれる.また,動的装具は第1中足趾節関節の他動可動域を増加させ,歩行時にも有効であると思われる.

 



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◆まとめ

上記論文では、外反母趾患者24名に対して静的装具および動的装具の効果を検証しております。

対象者は静的装具および動的装具を装着し、装着前および装着後1か月に疼痛、徴候・症状、日常生活動作(ADL)、スポーツ・レクリエーションにおける機能、Foot and Ankle Outcome Score(FAOS)質問票にて評価しておりま

す。

結果として静的装具および動的装具ともに外反母趾角を有意に減少させることが明らかとなっております。

また、動的装具では母趾中足趾節(MTP)関節の他動可動域が有意に改善したとされています。

なお、FAOSスコア(足部と足関節のQONを含んだ機能スコア)は両群ともに有意差はなかったそうです。


上記論文の結果を踏まえると、外反母趾に対しての装具療法は外反母趾角を改善することができ、効果的であることがわかりました。

特に動的装具は母趾中足趾節(MTP)関節の他動可動域も改善させることができるようです。

動的装具においては、医療機関を受診する必要性がありますが、静的装具においては、インターネット等においても比較的手軽に入手することも可能です。

今回は、『外反母趾に対する装具療法の効果は?』について解説させていただきました。