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『五十肩(拘縮肩)のモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療の効果』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『五十肩(拘縮肩)のモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療の効果』について解説させていただきます。



慢性疼痛に対する、注目の治療法が2014年頃より話題になっています。

痛みの原因部位には通称もやもや血管という「異常な血管」を認めるとして、OKUNO CLINICの奥野 祐次 医師が提唱し、運動器カテーテル治療にて、血管の中からもやもや血管を閉塞させ慢性疼痛を改善させるという治療法が注目を集めています。



◆モヤモヤ血管とは

OKUNO CLINICの奥野 祐次 医師が提唱している通称「モヤモヤ血管」は、痛みの原因部位にできてしまう「異常な血管」のことと解説されています。

オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療 | 東京六本木・白山・横浜・神戸三宮 ・大阪心斎橋 (okuno-y-clinic.com)

五十肩や腰痛、膝の痛みをはじめとした、治りにくい関節の痛みには、「正常な血管」だけではなく、病気の原因になる「異常な血管」もできてしまうことが最近になってわかってきているようです。

身体では血管と神経が並走して伸びる傾向にあり、負荷がかかりやすい箇所に血管ができやすく40歳を過ぎたころより「モヤモヤ血管」できやすいとのことです。



◆モヤモヤ血管への運動器カテーテル治療

オクノクリニックが提供している治療の中で、特徴的なのが運動器カテーテル治療です。

太さ0.6㎜の細いカテーテルを血管の中に進め、慢性疼痛の患部までカテーテルを進めていき、血管の中から薬剤を注入し、モヤモヤ血管を閉塞させていく治療法のようです。

英語ではTranscatheter Arterial Micro Embolization「TAME」と称されているようです。

奥野クリニックでは『イミペネム・シラスタチン』という「抗生物質」をカテーテル治療の薬剤として使用しているようです。

この薬剤をカテーテルで注入すると、異常な血管のところに集まって血液の流れが悪くなり、閉塞するようです。

2022年2月現在、モヤモヤ血管への運動器カテーテル治療は保険適応がされておらず、自費診療になりやや高値にはなります。

詳しくは下記の記事でご紹介しております。

↓↓

『もやもや血管への運動器カテーテル治療~慢性疼痛への注目の治療法~』https://undoukirehazemi.com/%e3%80%8e%e3%83%a2%e3%83%a4%e3%83%a2%e3%83%a4%e8%a1%80%e7%ae%a1%e3%81%b8%e3%81%ae%e9%81%8b%e5%8b%95%e5%99%a8%e3%82%ab%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%86%e3%83%ab%e6%b2%bb%e7%99%82%ef%bd%9e%e6%85%a2%e6%80%a7/

  



そんな中、2014年に、癒着性肩関節包炎(五十肩、拘縮肩、肩関節周囲炎) のモヤモヤ血管(異常血管)に対する運動器カテーテル治療の効果を検証した論文が奥野先生のグループから、英論文で報告されております。

この論文の検証結果がとても気になるところです。

 



◆論文紹介

J Shoulder Elbow Surg (IF: 3.02; Q2)

. 2014 Sep;23(9):e199-206.

 doi: 10.1016/j.jse.2013.12.014. Epub 2014 Mar 4.

Short-term results of transcatheter arterial embolization for abnormal neovessels in patients with adhesive capsulitis: a pilot study

癒着性(肩)関節包炎患者における異常新生血管に対する経カテーテル動脈塞栓術の短期成績:パイロットスタディ

Yuji Okuno 1Sota Oguro 2Wataru Iwamoto 3Takeshi Miyamoto 4Hiroyasu Ikegami 5Noboru Matsumura 4

Affiliations expand

Abstract

Background: Neovessels and accompanying nerves are possible sources of pain. We postulated that transcatheter arterial embolization of abnormal neovessels would relieve pain and symptoms in patients with adhesive capsulitis.

概要

背景 新生血管とそれに付随する神経は痛みの発生源となる可能性がある。我々は,異常な新生血管を経カテーテル的に塞栓することで,癒着性(肩)関節包炎患者の痛みと症状を軽減できると考えた.

Methods: Adhesive capsulitis was treated by transcatheter arterial embolization in 7 patients. Adverse events, changes in visual analog scale scores for night pain and overall shoulder pain, and changes in range of motion and American Shoulder and Elbow Surgeons scores were assessed at 1 week and at 1, 3, and 6 months after the procedure.

方法 7名の癒着性(肩)関節包炎患者に対し,経カテーテル的動脈塞栓術を施行した.有害事象,夜間痛と肩全体の痛みに関するvisual analog scale scoreの変化,可動域とAmerican Shoulder and Elbow Surgeons scoreの変化を術後1週間と1,3,6カ月で評価した.

Results: Abnormal neovessels were identified at the rotator interval in all patients. No major or minor adverse events were associated with the procedures. Transcatheter arterial embolization rapidly decreased nighttime pain scores from 67 ± 14 mm to 27 ± 14 mm at 1 week after the procedure, with further improvement at 1 and 6 months (6 ± 8 mm and 2 ± 5 mm, respectively). The American Shoulder and Elbow Surgeons score significantly improved from 17.8 ± 4.5 to 39.8 ± 12.0, 64.3 ± 13.9, and 76.2 ± 4.4 at 1, 3, and 6 months, respectively.

結果 全例で腱板疎部に異常な新生血管が確認された。本手術に関連する有害事象は,主要なものから軽微なものまでなかった.経カテーテル動脈塞栓術により,術後1週間で夜間痛スコアが67±14mmから27±14mmに急速に減少し,1ヵ月後と6ヵ月後にはさらに改善した(それぞれ6±8mmと2±5mm).米国肩肘外科学会スコアは,1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後にそれぞれ17.8 ± 4.5から39.8 ± 12.0,64.3 ± 13.9,76.2 ± 4.4と有意に改善した.

 



◆論文の結論

Conclusion: All patients with adhesive capsulitis had abnormal neovessels at the rotator interval. Transcatheter arterial embolization was feasible, relieved unrelenting pain, and restored shoulder function.

結論 癒着性(肩)関節包炎の全例に腱板疎部の新生血管の異常がみられた.経カテーテル的動脈塞栓術は実施可能であり,持続する疼痛を緩和し,肩の機能を回復させた.

 



◆まとめ

上記論文では 7名の癒着性肩関節包炎患者のもやもや血管に対し,運動器カテーテル動脈塞栓術を施行しております。

術後1週間と1,3,6カ月に有害事象、夜間痛と肩の痛みvisual analog scale score(VAS)の変化、可動域とAmerican Shoulder and Elbow Surgeons score(米国肩肘学会スコア)の変化を評価しております。

結果として、全例で腱板疎部に異常な新生血管(もやもや血管)が確認されているそうです。

本手術で有害事象はなく、術後1週間で夜間痛が急速に減少し、1ヵ月後と6ヵ月後にはさらに改善しております。

米国肩肘外科学会スコアも1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後にそれぞれ有意に改善しているようです。

上記論文から読み取ると、7例と症例は少ないですが、癒着性肩関節包炎(五十肩、肩関節周囲炎、拘縮肩)では腱板疎部にもやもや血管(異常な血管)が発生している可能性が高いことがわかりました。

また、運動器カテーテル治療により疼痛も肩関節機能も改善度が高いようです。

癒着性肩関節包炎(五十肩、肩関節周囲炎、拘縮肩)で難渋しているケースには自費診療にはなりますが(2022年2月現在)運動器カテーテル治療も視野に入れる必要性がありそうですね。

今回は、『五十肩(拘縮肩)のモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療の効果』について解説させていただきました。