こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『五十肩(拘縮肩)に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。
いわゆる五十肩は医療用語で『肩関節周囲炎』や『拘縮肩』、『凍結肩』などと称されます。
五十肩は退行変性(老化)によって肩の組織が傷み、炎症を起こし、肩関節の関節包が狭小化(狭くなる)が生じて、肩関節痛や運動制限が起こるといわれております。
よって、60歳前後の方は、特にこの五十肩症状になりやすくなってきます。
五十肩の病態としては関節包炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋腱炎、石灰性沈着性腱板炎
など様々です。
五十肩の症状としては肩関節の痛み(運動時痛、夜間痛)と運動制限の大きく2つあります。
五十肩は基本的には経過が長くなることが多く、早く完治する方では1~3か月程度で症状が治る方もおられますが、治るまで数年(2年~7年)かかることもあります。
そんな中、2021年に、癒着性肩関節包炎(拘縮肩、五十肩)に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法の効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆PRP療法とは
platelet-rich plasma:PRP療法(多血小板血漿)とは自分の血液を採取して、特殊な技術を駆使し、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。
そして、自分の傷んでいる部位に注射することで早期治癒を図ります。
早期の競技復帰をめざして、多血小板血漿(PRP)療法を行っているプロスポーツ選手なども多くいらっしゃいます。
ヨーロッパやアメリカでは、自己治癒力をサポートする治療として頻繁に行われているようです。
現時点(2022年4月)で多血小板血漿(PRP)療法は自費診療ですので、少し治療費は高くなります。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Int Orthop (IF: 3.08; Q2)
. 2021 Jan;45(1):181-190.
doi: 10.1007/s00264-020-04518-9. Epub 2020 Nov 18.
Efficacy of platelet-rich plasma injections in patients with adhesive capsulitis of the shoulder
肩の癒着性肩関節包炎患者における多血小板血漿注入の有効性
Burcu Ünlü 1, Funda Atamaz Çalış 2, Hale Karapolat 2, Asude Üzdü 2, Göksel Tanıgör 3, Yeşim Kirazlı 2
Affiliations expand
- PMID: 33205343 DOI: 10.1007/s00264-020-04518-9
Abstract
Purpose: The goal of this study is to investigate whether platelet-rich plasma (PRP) injections are effective in the management of adhesive capsulitis of the shoulder (AC). A triple-blind, randomized controlled trial was designed and conducted in a medical school hospital.
概要
目的】本研究の目的は、多血小板血漿(PRP)注射が肩の癒着性肩関節包炎(AC)の管理に有効であるかどうかを調査することである。三重盲検無作為化比較試験を計画し、医学部附属病院で実施した。
Methods: 32 adult patients with adhesive capsulitis (21 female, 11 male with a mean age of 57, ranging from 23 to 70) were included in this study. Patients had to have shoulder pain and restrictions in movements (at least 25% when compared to the other side, and at least in two directions) for three months minimum and nine months maximum. Patients were randomized to two groups, and one group took PRP injections for three times every two weeks, while the other group took saline injections in same frequency and volume. A standardized exercise program was also applied to all patients. Patients were evaluated with Shoulder Pain and Disability Index (SPADI), Visual Analogue Scales for pain and disability, ranges of movements, and use of analgesics in before, after, and third month after the initiation of the therapy.
方法:癒着性肩関節包炎を有する成人患者32名(女性21名、男性11名、平均年齢57歳、23歳から70歳)を本研究に組み入れました。肩の痛みと動作の制限(反対側と比較して25%以上、2方向以上)が最低3ヶ月、最高9ヶ月間ある患者を対象とした。患者は2群に無作為に分けられ、一方の群には2週間ごとに3回、多血小板血漿(PRP)注射を行い、もう一方の群には同じ頻度と量の生理食塩水を注射した。また、標準化された運動プログラムがすべての患者に適用された。治療開始前、治療開始後、治療開始3ヶ月目に、Shoulder Pain and Disability Index (SPADI)、Visual Analogue Scale、可動域、鎮痛剤の使用について評価した。
Results: Baseline comparisons between groups showed no differences. SPADI and ranges of motion in all directions showed significant improvements with therapy, and the group which took PRP injections showed better improvements when compared to the control group (p < 0.05). Visual Analogue Scale was found to be better for the PRP group after therapy and third month, and not for the control group (0.4 ± 1.06 and 0.17 ± 0.72 vs. 2.5 ± 2.6 and 2 ± 2.2, respectively, p < 0.05). Use of analgesics was not found to be significant for both groups (p > 0.05).
結果 ベースラインの比較では、群間差は認められなかった。Shoulder Pain and Disability Index (SPADI)と全方向の可動域は治療により有意な改善を示し、多血小板血漿(PRP)注射を行った群は対照群と比較してより良い改善を示した(p < 0.05)。Visual Analogue Scaleは、治療後と3ヶ月目に多血小板血漿(PRP)群で良好な結果が得られ、対照群では見られなかった(それぞれ2.5 ± 2.6 と 2 ± 2.2 に対して、0.4 ± 1.06 と 0.17 ± 0.72, p < 0.05)……。鎮痛剤の使用は両群で有意差は認められなかった(p>0.05)。
◆論文の結論
Conclusion: PRP injections were found to be effective in both pain and disability, and showed improvements in a restricted shoulder due to adhesive capsulitis. These findings might point out PRP as a therapeutic option in the management of adhesive capsulitis.
結論 多血小板血漿(PRP)注射は痛みと障害の両方に有効であり、癒着性肩関節包炎による制限された肩に改善を示した。これらの知見は,癒着性肩関節包炎の管理における治療オプションとして,多血小板血漿(PRP)を指摘する可能性がある.
◆まとめ
上記論文では癒着性肩関節包炎患者32名(女性21名、男性11名、平均年齢57歳)に対して、多血小板血漿(PRP)注射群と対照群の2群に分けて効果を検証しております。
治療前、治療後、治療3か月目に肩機能スコア、関節可動域、鎮痛剤の使用について評価しております。
結果として、多血小板血漿(PRP)注射群は肩機能スコア、疼痛(VAS)ともに有意な改善を示し、対照群よりも良好な成績であったそうです。
上記論文の結果を踏まえると、癒着性肩関節包炎(拘縮肩、五十肩)に対しての多血小板血漿(PRP)は、肩関節可動域、疼痛ともに改善させる効果があることがわかりました。
今回は、『五十肩(拘縮肩)に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。