こんにちは!!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は『上肢骨折後にやってはいけない3つのこと~禁忌事項~』について解説していきたいと思います。
◆上肢骨折とは
上肢というのは肩から手先までの腕のことを言います。
タイトルにもある通り上肢の骨折というのは様々です。
日本骨折治療学会が提唱するものを列挙してみます。
・肩鎖関節脱臼
・鎖骨骨折
・上腕骨近位端骨折
・上腕骨骨幹部骨折
・上腕骨遠位部骨折
・肘頭骨折
・前腕の骨幹部骨折
・橈骨(とうこつ)遠位端骨折
・舟状骨骨折
・中手骨骨折
などがあります。
上記の上肢骨折の中に、高齢者4大骨折に入る上腕骨近位部骨折と橈骨遠位端骨折があります。
ちなみに高齢者4大骨折は脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折の4つになります。
◆上肢骨折の治療法
骨折をした場合、大きく分けて2つの治療法があります。
・手術療法:スクリューやプレート、ピンニング、などで骨折した箇所を整復したり、骨折した箇所を除去し人工関節に入れ替えたりします。
・保存療法:手術せずに、内服薬、ギプス固定、三角巾、リハビリテーションなど経過観察します。
手術療法、保存療法いずれにせよ、骨折した箇所が癒合するまでは注意する必要性があります。
手術をした場合、手術後にはもう治っていると思われる方も多くいらっしゃいますが、骨折に対しての手術はあくまで「仮固定」している状態です。
どの骨を骨折するかにもよりますが、概ね骨がある程度強くなり始めるのが「3週間」、骨が癒合するのが「2~3か月」程度と言われています。
よって受傷または手術から約3週間目までは特に注意する必要性があります。
◆上肢骨折後に転位した2症例
骨が癒合する前に無理をすると骨折した箇所が「転位」したりスクリューやプレートがずれることがあります。
転位というのは骨の位置がずれることを指します。
下記に保存療法で1か月後に転位した1例と、手術療法後1週間で転位した1例を下記に提示します。
1、鎖骨骨折の手術後症例
この方は70歳代女性で左鎖骨を骨折し、プレート固定された症例です。
鎖骨は他の骨に比べで骨癒合が早いといわれていますので、無理をしなければ、退院や社会復帰は数週間~2か月程度で可能です。
この方は、手術後に手をつかないように言われていましたが、ベッドから車いすに移乗する際に手を強くついてしまい、プレート固定をした左鎖骨が転位し、再手術となってしましました。
2、上腕骨近位部骨折(大結節)骨折の保存療法経過中に転位
この方は70代男性の方で上腕骨近位部骨折をされた症例です。
上腕骨近位部骨折の中でも大結節という箇所が骨折しています。
大結節は上肢を挙上させる際に重要な棘上筋、棘下筋、小円筋という筋肉が付着している箇所になります。
よって大結節が転位してしますと上肢が挙上できなくなる可能性があります。
この方は、受傷後3週間はバストバンドと三角筋で固定(デゾー固定)していました。
受傷3週目にデゾー固定を除去し、医師からまだ無理しないように言われていましたが、日常生活でベッドから起き上がる際にベッド柵を左手で引っ張って起き上がっていました。
受傷後1か月後のレントゲンで大結節が上方に転位しているのがわかります。
大結節が骨癒合していない段階で左手を使いすぎたために棘上筋や棘下筋に引っ張られ転位したと予測されます。
この方は最終的に5か月リハビリをされましたが、頭を左手で触ることは可能ですがされ以上に手を挙げることは困難となりました。
上肢挙上は通常180°ですが100°までとなりました。
◆上肢骨折後にやってはいけない3つのこと~禁忌事項~
上肢の骨折後、保存療法と手術療法ともに骨折部が転位しやすい3つの動作があります。
・重いものを持つ
・手をつかない
・ベッド柵など物を引っ張らない
私自身はこの3つの動作を受傷後または手術後に、最低1か月、長くて3か月は禁止するようにお伝えしています。
禁止する時期は骨折の場所、受傷度、手術内容によって医師と相談しながら判断しお伝えしています。
この3つの禁忌事項を頭に入れておけば骨折部が転位する可能性はかなり低くなります。
もちろん骨折の場所、受傷度、手術内容によって上記3つ以外にも禁忌事項が追加されることもあります。
日常生活上の動作で気になることがあれば、主治医やリハビリ担当の先生にご相談されたらいいかと思います。
またリハビリの担当の先生は症例によりますが、上記3つのことをご指導いただければ幸いです。
今回は『上肢骨折後にやってはいけない3つのこと~禁忌事項~』を解説させていただきました。