こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する等尺性収縮トレーニングの効果は?』
について解説させていただきます。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)はBlazinaら(1973年)によってはじめて定義されております。
ジャンプや着地、ダッシュ等の動作が頻繁に繰り返され、膝伸展機構(大腿四頭筋―膝蓋骨―膝蓋腱―脛骨結節)に過度の負荷がかかることで引き起こされる慢性障害とされています。
症状としては膝に痛みがあらわれますが、特に膝蓋骨の下方に圧痛を認めることが多いです。
バスケットボールやバレーボールなどの跳躍動作を繰り返すスポーツに多いoveruse syndromeのうちのひとつとされています。
ジャンパー膝の発症要因としては様々ですが、特に、大腿四頭筋の柔軟性低下や優れた跳躍能力等の特徴がみられることが報告されています(Henk W,et al:Br J Sports Med.2011)。
そんな中、2015年に、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)に対する、等尺性収縮運動の疼痛抑制効果を検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Br J Sports Med (IF: 13.8; Q1)
. 2015 Oct;49(19):1277-83.
doi: 10.1136/bjsports-2014-094386. Epub 2015 May 15.
Isometric exercise induces analgesia and reduces inhibition in patellar tendinopathy
膝蓋腱症における等尺性運動は鎮痛を誘発し、抑制を減少させる
Ebonie Rio 1, Dawson Kidgell 2, Craig Purdam 3, Jamie Gaida 4, G Lorimer Moseley 5, Alan J Pearce 6, Jill Cook 1
Affiliations expand
- PMID: 25979840 DOI: 10.1136/bjsports-2014-094386
Abstract
Background: Few interventions reduce patellar tendinopathy (PT) pain in the short term. Eccentric exercises are painful and have limited effectiveness during the competitive season. Isometric and isotonic muscle contractions may have an immediate effect on PT pain.
概要
背景 膝蓋腱症(PT)の痛みを短期的に軽減する介入はほとんどない。エキセントリックエクササイズは痛みを伴い、競技シーズン中の効果は限定的である。等尺性筋収縮と等張性筋収縮は膝蓋腱症(PT)痛に即効性がある可能性がある。
Methods: This single-blinded, randomised cross-over study compared immediate and 45 min effects following a bout of isometric and isotonic muscle contractions. Outcome measures were PT pain during the single-leg decline squat (SLDS, 0-10), quadriceps strength on maximal voluntary isometric contraction (MVIC), and measures of corticospinal excitability and inhibition. Data were analysed using a split-plot in time-repeated measures analysis of variance (ANOVA).
方法 この単盲検無作為化クロスオーバー研究では、等尺性筋収縮と等張性筋収縮の運動後、即効性と45分間の効果を比較した。アウトカム指標は、片足立ちスクワット(SLDS、0~10)時のPT疼痛、最大等尺性収縮時の大腿四頭筋強度、皮質脊髄興奮性・抑制性の指標とした。データは、時間-反復測定分散分析(ANOVA)の分割プロットを用いて分析した。
Results: 6 volleyball players with PT participated. Condition effects were detected with greater pain relief immediately from isometric contractions: isometric contractions reduced SLDS (mean±SD) from 7.0±2.04 to 0.17±0.41, and isotonic contractions reduced SLDS (mean±SD) from 6.33±2.80 to 3.75±3.28 (p<0.001). Isometric contractions released cortical inhibition (ratio mean±SD) from 27.53%±8.30 to 54.95%±5.47, but isotonic contractions had no significant effect on inhibition (pre 30.26±3.89, post 31.92±4.67; p=0.004). Condition by time analysis showed pain reduction was sustained at 45 min postisometric but not isotonic condition (p<0.001). The mean reduction in pain scores postisometric was 6.8/10 compared with 2.6/10 postisotonic. MVIC increased significantly following the isometric condition by 18.7±7.8%, and was significantly higher than baseline (p<0.001) and isotonic condition (p<0.001), and at 45 min (p<0.001).
結果 膝蓋腱症(PT)を有するバレーボール選手6名が参加した。等尺性収縮は片足立ちスクワットの痛み(mean±SD)を7.0±2.04から0.17±0.41に、等張性収縮は片足立ちスクワットの痛み(mean±SD)を6.33±2.80から3.75±3.28(p<0.001)へと減少させた。等尺性収縮は皮質抑制(比mean±SD)を27.53%±8.30から54.95%±5.47に解除したが、等張性収縮は抑制に大きな影響を与えなかった(前30.26±3.89、後31.92±4.67;p=0.004)。条件別時間分析では、痛みの軽減は等張条件ではなく、等張条件後45分で持続した(p<0.001)。疼痛スコアの平均減少量は等張性後2.6/10に対し、等尺性後6.8/10であった。最大等尺性収縮(MVIC)は等尺性条件下で18.7±7.8%と有意に増加し、ベースライン(p<0.001)、等尺性条件(p<0.001)、45分(p<0.001)でも有意に高い値であった。
◆論文の結論
Conclusions: A single resistance training bout of isometric contractions reduced tendon pain immediately for at least 45 min postintervention and increased MVIC. The reduction in pain was paralleled by a reduction in cortical inhibition, providing insight into potential mechanisms. Isometric contractions can be completed without pain for people with PT. The clinical implications are that isometric muscle contractions may be used to reduce pain in people with PT without a reduction in muscle strength.
結論 等尺性収縮の1回のレジスタンストレーニングは,介入後少なくとも45分間,腱の痛みを直ちに減少させ,最大等尺性収縮(MVIC)を増加させた.痛みの軽減は、皮質抑制の軽減と並行して行われ、潜在的なメカニズムについての洞察を与えてくれた。等尺性収縮は、膝蓋腱症(PT)患者にとって痛みを伴わずに完了できる。臨床的な意味合いとしては、等尺性筋収縮は、筋力を低下させることなく、膝蓋腱症(PT)患者の痛みを軽減するために使用される可能性があるということである。
◆まとめ
上記論文では、膝蓋腱症(PT)を有するバレーボール選手6名に対して、等尺性筋収縮と等張性筋収縮の運動直後45分間のトレーニング効果を比較しております。
評価項目は、片脚スクワット時の疼痛、最大等尺性収縮時の大腿四頭筋強度、皮質脊髄興奮性・抑制性の指標としています。
結果として、等尺性筋収縮と等張性筋収縮ともに疼痛は軽減するものの、等尺性収縮の方が大幅に疼痛が軽減するようです。
また、等尺性収縮は皮質抑制効果があったが、等張性収縮にはなかったそうです。
最大等尺性収縮(MVIC)においては等尺性収縮条件下では有意に増加したとのことです。
上記論文の結果を踏まえると、等尺性収縮トレーニングにより、少なくとも45分間は膝蓋腱の痛みを軽減させ、最大等尺性収縮(MVIC)も増加するようです。
等尺性収縮トレーニングは痛みを伴わずに手っ取り早く実施することができるので、短期的な疼痛抑制の手法としては有効な手段ではないかと思われます。
今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する等尺性収縮トレーニングの効果は?』
について解説させていただきました。