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『腰椎椎間板ヘルニアが吸収(自然退縮)される確率は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。



椎間板ヘルニアは激しい疼痛および四肢の機能不全を呈する疾患です。

腰椎椎間板ヘルニアは20~40歳代の男性に多く、ブルーカラー(重労働者)の方が発症しやすいと言われています。

また、近年の報告では遺伝的要因が影響しているとされています。

治療法としての多くは保存療法(リハビリテーション、投薬治療、装具療法、ブロック注射)もしくは各種手術療法が選択されます。

椎間板ヘルニアに関しては、保存治療において吸収(自然退縮)されると言われております。

脱出椎間板の吸収には、椎間板の内部成分(髄核、内層線維輪)が外部環境に暴露されることが必要であり、マクロファージによって分解貪食されると報告されています。(菊池太朗ら:整・災外科.2000)

また、腰椎椎間板ヘルニア26例において、MRI上で確認したところ、最短2か月で1症例がヘルニア塊が消失し、3ヵ月以内にほとんどの症例が50%以下となる。下肢痛は2か月以内に半減し消失までの平均期間は4.8か月~5.3か月であったと報告されています。

【池田天史(他):整・災外科,1997】

そんな中、2015年に、腰椎椎間板ヘルニア自然退縮(吸収)される確率を検証した論文(系統的レビュー)が海外で報告されております。

この論文の検証結果がとても気になるところです。



◆論文紹介

Review

 Clin Rehabil

. 2015 Feb;29(2):184-95.

 doi: 10.1177/0269215514540919. Epub 2014 Jul 9.

The probability of spontaneous regression of lumbar herniated disc: a systematic review

腰椎椎間板ヘルニアの自然退縮の確率:系統的レビュー

Chun-Chieh Chiu 1Tai-Yuan Chuang 2Kwang-Hwa Chang 1Chien-Hua Wu 3Po-Wei Lin 1Wen-Yen Hsu 4

Affiliations expand

Abstract

Objective: To determine the probability of spontaneous disc regression among each type of lumbar herniated disc, using a systematic review.

要旨

目的 システマティックレビューを用いて、腰椎椎間板ヘルニアの各タイプにおける椎間板の自然退縮の確率を明らかにすること。

Data sources: Medline, Cochrane Library, CINAHL, and Web of Science were searched using key words for relevant original articles published before March 2014. Articles were limited to those published in English and human studies.

データソース Medline、Cochrane Library、CINAHL、Web of Scienceをキーワードとして検索し、2014年3月以前に出版された関連する原著論文を探した。論文は英語で発表され、ヒトを対象とした研究に限定した

Review methods: Articles had to: (1) include patients with lumbar disc herniation treated conservatively; (2) have at least two imaging evaluations of the lumbar spine; and (3) exclude patients with prior lumbar surgery, spinal infections, tumors, spondylolisthesis, or spinal stenosis. Two reviewers independently extracted study details and findings. Thirty-one studies met the inclusion criteria. Furthermore, if the classification of herniation matched the recommended classification of the combined Task Forces, the data were used for combined analysis of the probability of disc regression of each type. Nine studies were applicable for probability calculation.

レビュー方法 論文の条件は以下の通りであった: (1)保存的治療を受けた腰椎椎間板ヘルニア患者を含むこと、(2)腰椎の画像評価を少なくとも2回行っていること、(3)腰椎手術歴、脊椎感染症、腫瘍、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症の患者を除外していること。2人の査読者が独立して研究の詳細と所見を抽出した。31の研究が組み入れ基準を満たした。さらに、ヘルニアの分類が合同タスクフォースの推奨する分類と一致する場合、そのデータを各タイプの椎間板退縮の確率の複合解析に使用した。9件の研究が確率計算の対象となった。

Results: The rate of spontaneous regression was found to be 96% for disc sequestration, 70% for disc extrusion, 41% for disc protrusion, and 13% for disc bulging. The rate of complete resolution of disc herniation was 43% for sequestrated discs and 15% for extruded discs.

結果 椎間板ヘルニアの自然退縮率は、椎間板分離96%、椎間板脱出70%、椎間板突出41%、椎間板膨隆13%であった。椎間板ヘルニアの完全消失率は、椎間板分離症で43%、椎間板突出症で15%であった。

◆論文の結論

Conclusions: Spontaneous regression of herniated disc tissue can occur, and can completely resolve after conservative treatment. Patients with disc extrusion and sequestration had a significantly higher possibility of having spontaneous regression than did those with bulging or protruding discs. Disc sequestration had a significantly higher rate of complete regression than did disc extrusion.

結論 椎間板ヘルニア組織の自然退縮は起こりうるし、保存的治療後に完全に消失することもある。椎間板ヘルニアの自然退縮は、保存的治療によって完全に消失することもある。



◆まとめ

上記論文では2014年以降の論文を検索し、腰椎椎間板ヘルニアの各タイプにおける椎間板の自然退縮の確率をシステマティックレビューから算出しております。

論文の検索条件は以下の通りであった

 (1)保存的治療を受けた腰椎椎間板ヘルニア患者を含むこと

(2)腰椎の画像評価を少なくとも2回行っていること

(3)腰椎手術歴、脊椎感染症、腫瘍、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症の患者を除外していること。

結果として椎間板ヘルニアの自然退縮率は

・椎間板分離96%

・椎間板脱出70%

・椎間板突出41%

・椎間板膨隆13%

椎間板ヘルニアの完全消失率は、椎間板分離症で43%、椎間板突出症で15%であった。

上記論文の結果を踏まえると、腰椎椎間板ヘルニアにおいて自然退縮の確率は椎間板分離96%、椎間板脱出70%、椎間板突出41%、椎間板膨隆13%でした。

自然退縮率が椎間板分離で96%、椎間板脱出で70%ということから、椎間板の内部成分(髄核、内層線維輪)が後縦靭帯を穿破し、外部環境に暴露されると、マクロファージによって分解貪食され、自然退縮されやすくなることが推察されます。



今回は、『腰椎椎間板ヘルニアが吸収(自然退縮)される確率は?』について解説させていただきました。

 

 

 『腰椎椎間板ヘルニアのタイプ分類~局在による分類~』

  『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 リハビリは効果なし?』