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『鵞足炎に対して体外衝撃波治療は効果があるのか?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『鵞足炎に対して体外衝撃波治療は効果があるのか?』

について解説させていただきます。

 



鵞足とは脛骨内側に停止している3つの腱が鵞鳥の足のように見えることから「鵞足」と称されています。

鵞足は炎症を起こすことがあり(鵞足炎)、変形性膝関節症(膝OA)やスポーツ傷害で好発すると報告されています。

鵞足炎は大きく分けて「鵞足筋腱炎」「鵞足包炎」に分別されます。

鵞足と内側側副靭帯の間に鵞足包が存在しております。

どちらの病態も鵞足筋付着部や鵞足包への繰り返される摩擦や伸張ストレスが原因となり疼痛を引き起こします。

 



◆鵞足構成筋

●縫工筋

起始:上前腸骨棘

停止:脛骨粗面内側の鵞足

作用:股関節内転・外転・外旋、膝関節屈曲・内旋

神経支配:大腿神経(L2-L4)

●半腱様筋

起始:坐骨結節と仙結節靭帯

停止:脛骨粗面内側の鵞足

作用:股関節内転・伸展、膝関節屈曲・内旋

神経支配:脛骨神経(L5-S2)

●薄筋

起始:恥骨結合下方の恥骨下枝

停止:脛骨粗面内側の鵞足

作用:股関節内転・屈曲、膝関節屈曲・内旋

神経支配:閉鎖神経(L2-L4)

 『鵞足構成筋に対する鑑別テストの方法!!』

そんな中、2017年に、鵞足炎に対して体外衝撃波治療の効果を検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところですね。

 



◆体外衝撃波治療(shock wave)

体外衝撃波治療(shock wave)は衝撃波を患部に照射する新しい整形外科領域の治療法です。

腱付着部炎などの有痛性疾患の痛みに対して応用されています。

1回の治療時間は約5~10分で、一定の期間をあけて、複数回照射を実施します。

体外衝撃波治療は集束型衝撃波と拡散型圧力波の2種類あり、集束型の方が治療効果は高いですが、治療者は医師に限定されます。拡散型については収束型と比較すると効果は少し劣りますが、医師の指示の下、理学療法士が治療を実施することが可能です。

日本では集束型においては難治性足底腱膜炎に対して、保険が適応されています。(2022年11月現在)

拡散型については消炎鎮痛の分類で保険適応されています。

よって、日本での体外衝撃波治療(shock wave)は、自費診療で行っている診療機関も多くあります。

 



◆論文紹介

Adv Biomed Res (Report missing IFs)

. 2017 Jun 6;6:70.

 doi: 10.4103/2277-9175.190999. eCollection 2017.

Investigating the Effect of Extracorporeal Shock Wave Therapy on Reducing Chronic Pain in Patients with Pes Anserine Bursitis: A Randomized, Clinical- Controlled Trial

体外衝撃波療法が鵞足包炎患者の慢性疼痛を軽減する効果の検討: 無作為化臨床-対照試験

Saeid Khosrawi 1Parisa Taheri 1Marziyeh Ketabi 1

Affiliations expand

Free PMC article

Abstract

Background: Knee pain, is one of the most common causes of patients’ referring to physiatric clinics, and several factors, are involved in its creation. One of these factors is pes anserine bursitis (PAB) for which various treatment methods are used. This study aims to investigate the effect of this method on reducing chronic pain in these patients.

概要

背景 膝関節痛は、患者が精神科を受診する最も一般的な原因の1つであり、その発生にはいくつかの要因が関わっている。これらの要因の1つとして、様々な治療法が用いられている鵞足包炎(PAB)がある。本研究では、これらの患者の慢性疼痛を軽減するために、この方法がどのような効果をもたらすかを検討することを目的とする。

Materials and methods: This clinical trial was conducted in 2013- 2014 on patients with PAB referring to academic, physical medicine clinics. The patients with chronic PAB (pain duration more than 3 months), who were refractory to conservative treatments, were randomly divided into two 20-member experimental groups (extracorporeal shock wave therapy [ESWT] and sham ESWT). Pain scores of all patients were measured using the Visual Analog Scale (VAS) and McGill Pain Questionnaire (MPQ) (total and present pain indexes [TPIs and PPIs]) before intervention, immediately after intervention (3rd week), and after 8 weeks. The pain scores were then compared and statistically analyzed.

材料と方法 本臨床試験は、2013年から2014年にかけて、大学病院、理学診療所から紹介されたPAB(鵞足包炎)患者を対象に実施された。保存療法に抵抗性の慢性PAB患者(疼痛期間3ヶ月以上)を、無作為に2つの実験群(体外衝撃波療法[ESWT]と偽ESWT)に分け、20名で実施した。介入前、介入直後(3週目)、8週後に全患者の疼痛スコアをVisual Analog Scale(VAS)およびMcGill Pain Questionnaire(MPQ)[TPI(総疼痛指数)およびPPI(現在の疼痛指数)])を用いて測定した。そして、痛みのスコアを比較し、統計的に分析した。

Results: In the ESWT group, the mean patient pain score of the VAS and TPI in MPQ were significantly lower than in the sham ESWT group immediately after intervention (3rd week): P =0.02, P = 0.04 respectively; and 8 weeks after the end of treatment: P =0.01, P = 0.000. Moreover, the PPI in both groups had significantly decreased over time, although in ESWT group this decrement was significantly more than sham ESWT group (P < 0.001).

結果 ESWT(体外衝撃波)群では、VASとMPQのTPI(総疼痛指数)の平均患者疼痛スコアは、介入直後(3週目)の偽ESWT群に比べ有意に低かった。それぞれP = 0.02, P = 0.04;治療終了8週間後 P =0.01, P =0.000であった。さらに、両群のPPI(現在の疼痛指数)は時間の経過とともに有意に減少したが、ESWT群ではこの減少が偽ESWT群より有意に大きかった(P < 0.001)。

 



◆論文の結論

Conclusion: The results showed that ESWT could be effective in reducing the pain and treating PAB.

結論 この結果は、ESWTが痛みの軽減とPABの治療に有効であることを示している。

 



◆まとめ

上記論文では保存療法の効果が乏しかった慢性鵞足包炎患者20名(疼痛期間3ヶ月以上)を体外衝撃波群とコントロール群の2群に分けて、体外衝撃波の効果を検証しております。

介入前、介入直後(3週目)、介入8週後にVAS(疼痛)、マクギル疼痛質問票[TPI(総疼痛指数)およびPPI(現在の疼痛指数)])を評価しております。

結果として、介入直後(3週目)と介入8週後では体外衝撃波群がコントロール群と比較すると、VASとマクギル疼痛質問票のTPI(総疼痛指数)が、有意に数値が低かったようです。

マクギル疼痛質問票のPPI(現在の疼痛指数)は両群ともに有意に減少したが、体外衝撃波群の方が、減少数値が有意に大きかったとのことです。

上記論文の結果を踏まえると、慢性鵞足包炎に対しての体外衝撃波治療は、疼痛の軽減に対して効果的であると考えられます。

膝関節機能についても気になるところではあります。

体外衝撃波治療は様々な筋腱付着部症の疼痛に対して効果的であるとの報告が増えておりますね。

今回は、『鵞足炎に対して体外衝撃波治療は効果があるのか?』

について解説させていただきました。

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