こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する等尺性収縮の効果はいつまで続く?』
について解説させていただきます。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)はBlazinaら(1973年)によってはじめて定義されました。
ジャンプや着地、ダッシュ等の動作が頻繁に繰り返され、膝伸展機構(大腿四頭筋―膝蓋骨―膝蓋腱―脛骨結節)に過度の負荷がかかることで引き起こされる慢性障害とされています。
症状は膝に痛みがあらわれますが、特に膝蓋骨の下方に圧痛を認めることが多いです。
バスケットボールやバレーボールなどの跳躍動作を繰り返すスポーツに多いoveruse syndromeのうちのひとつとされています。
ジャンパー膝の発症要因としては様々ありますが、特に、大腿四頭筋の柔軟性低下や優れた跳躍能力等の特徴がみられることが報告されています(Henk W,et al:Br J Sports Med.2011)。
そんな中、2020年に、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)に対する、等尺性収縮運動の即時効果および短期的な効果を検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Clin J Sport Med (IF: 3.64; Q2)
. 2020 Jul;30(4):335-340.
doi: 10.1097/JSM.0000000000000625.
Immediate and Short-Term Effects of Short- and Long-Duration Isometric Contractions in Patellar Tendinopathy
膝蓋腱症における短時間および長時間等尺性収縮の即時および短期的な効果
Stephen J Pearson 1, Sarah Stadler 2, Hylton Menz 3, Dylan Morrissey 4, Isabelle Scott 2, Shannon Munteanu 3, Peter Malliaras 2
Affiliations expand
- PMID: 30095504 DOI: 10.1097/JSM.0000000000000625
Abstract
Objectives: Isometric muscle contractions are used in the management of patellar tendinopathy to manage pain and improve function. Little is known about whether long- or short-duration contractions are optimal to improve pain. This study examined the immediate and short-term (4 weeks) effects of long- and short-duration isometric contraction on patellar tendon pain, and tendon adaptation.
概要
目的 膝蓋腱症の管理には、疼痛管理と機能改善のために等尺性筋収縮が用いられている。疼痛を改善するために、長時間収縮と短時間収縮のどちらが最適であるかについては、ほとんど知られていない。本研究では、膝蓋腱の痛みと腱の適応に対する長時間および短時間の等尺性収縮の即時および短期(4週間)の効果について検討した。
Design: Repeated measures within groups.
デザイン グループ内反復測定。
Setting: Clinical primary care.
設定 臨床プライマリケア。
Patients: Participants (n = 16, males) with patellar tendinopathy.
患者。膝蓋腱症を有する参加者(n=16、男性)。
Intervention: Short-duration (24 sets of 10 seconds) or long-duration (6 sets of 40 seconds) isometric knee extension loading (85% maximal voluntary contraction), for 4 weeks.
介入。短時間(10秒×24セット)または長時間(40秒×6セット)の等尺性膝伸展負荷(最大自発収縮率85%)を4週間行った。
Main outcome measure: Immediate change in pain with single-leg decline squat (SLDS) and hop, as well as change in pain and tendon adaptation [within-session anterior-posterior (AP) strain] were assessed over 4 weeks.
主な成果、指標:シングルレッグデクラインスクワット(SLDS)とホップによる痛みの即時変化、および4週間にわたる痛みと腱の適応(セッション内の前後方向(AP)歪み)の変化を評価した。
Results: Pain was significantly reduced after isometric loading on both SLDS (P < 0.01) and hop tests (P < 0.01). Pain and quadriceps function improved over the 4 weeks (P < 0.05). There was significant AP strain at each measurement occasion (P < 0.01). Although transverse strain increased across the training period from ∼14% to 22%, this was not significant (P = 0.08).
結果 SLDS(P<0.01)およびホップテスト(P<0.01)ともに,等尺性負荷後に疼痛が有意に軽減した.痛みと大腿四頭筋の機能は4週間にわたって改善した(P < 0.05)。各測定機会において、有意なAPストレインが認められた(P < 0.01)。横方向の歪みはトレーニング期間中に約14%から22%に増加したが、これは有意ではなかった(P = 0.08)。
◆論文の結論
Conclusions: This is the first study to show that short-duration isometric contractions are as effective as longer duration contractions for relieving patellar tendon pain when total time under tension is equalized. This finding provides clinicians with greater options in prescription of isometric loading and may be particularly useful among patients who do not tolerate longer duration contractions. The trend for tendon adaptation over the short 4-week study period warrants further investigation.
結論 本研究は、膝蓋腱の疼痛緩和において、短時間の等尺性収縮が長時間収縮と同等に有効であることを示した最初の研究である。この結果は、臨床医に等尺性負荷の処方の選択肢を提供し、特に長時間収縮に耐えられない患者に有用であると考えられる。また、4週間という短い期間での腱の適応の傾向は、さらなる調査が必要である。
◆まとめ
上記論文では膝蓋腱症を有する16名の男性に対して、短時間(10秒×24セット)または長時間(40秒×6セット)の等尺性膝伸展負荷(最大自発収縮率85%)を4週間実施し、即時効果および短期的な効果を検証しております。
評価項目は片脚スクワット、ホップによる痛みの即時変化、4週間にわたる痛みと腱の適応(前後方向の歪み)の変化としています。
結果として、片脚スクワット、ホップともに等尺性膝伸展負荷後に疼痛が有意に軽減しております。
大腿四頭筋機能および疼痛抑制効果については4週間にわたって有意に維持されていたそうです。
腱の適応として前後方向では、即時および4週間後ともに有意な改善が認められています。横方向の歪みはトレーニング期間中、わずがに増加しましたが有意ではなかったとのことです。
上記論文の結果を踏まえると、等尺性収縮トレーニングにより即時的に膝蓋腱症の痛みの軽減および大腿四頭筋機能が向上し、トレーニングを継続していれば少なくとも4週間は効果が持続することが分かりました。
等尺性収縮トレーニングは負荷量が少なく、また気軽にできる運動ではありますので、有効な治療法のひとつではないかと思われます。
今回は、『ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に対する等尺性収縮の効果はいつまで続く?』
について解説させていただきました。