こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『変形性膝関節症(膝OA)のモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療の効果』について解説させていただきます。
慢性疼痛に対する、注目の治療法が2014年頃より話題になっています。
痛みの原因部位には「異常な血管」(通称もやもや血管)を認めるとして、OKUNO CLINICの奥野 祐次 医師が提唱しております。
運動器カテーテル治療にて、血管の中からもやもや血管を閉塞させることにより、慢性疼痛を改善させるという治療法が注目を集めてはじめております。
◆モヤモヤ血管への運動器カテーテル治療
オクノクリニックが提供している治療の中で、特徴的なのが運動器カテーテル治療です。
太さ0.6㎜の細いカテーテルを血管の中に進め、慢性疼痛の患部までカテーテルを進めていき、血管の中から薬剤を注入し、モヤモヤ血管を閉塞させていく治療法です。
英語ではTranscatheter Arterial Micro Embolization「TAME」と称されているようです。
奥野クリニックでは『イミペネム・シラスタチン』という「抗生物質」をカテーテル治療の薬剤として使用しているとのことです。
この薬剤をカテーテルで注入すると、異常な血管のところに集まって血液の流れが悪くなり、閉塞するようです。
2022年5月現在、モヤモヤ血管への運動器カテーテル治療は保険適応がされておらず、自費診療になりやや高値にはなります。
詳しくは下記の記事でご紹介しております。
↓↓
『モヤモヤ血管への運動器カテーテル治療~慢性疼痛への注目の治療法~』https://undoukirehazemi.com/%e3%80%8e%e3%83%a2%e3%83%a4%e3%83%a2%e3%83%a4%e8%a1%80%e7%ae%a1%e3%81%b8%e3%81%ae%e9%81%8b%e5%8b%95%e5%99%a8%e3%82%ab%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%86%e3%83%ab%e6%b2%bb%e7%99%82%ef%bd%9e%e6%85%a2%e6%80%a7/
そんな中、2017年に、変形性膝関節症(膝OA)のモヤモヤ血管(異常血管)に対する運動器カテーテル治療の効果を検証した論文が奥野先生から、英論文で報告されております。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆論文紹介
J Vasc Interv Radiol (IF: 3.46; Q2)
. 2017 Jul;28(7):995-1002.
doi: 10.1016/j.jvir.2017.02.033. Epub 2017 Mar 30.
Midterm Clinical Outcomes and MR Imaging Changes after Transcatheter Arterial Embolization as a Treatment for Mild to Moderate Radiographic Knee Osteoarthritis Resistant to Conservative Treatment
保存的治療に抵抗性を示す軽度から中等度の変形性膝関節症に対する治療としての経カテーテル動脈塞栓術後の中期臨床成績とMR画像変化
Yuji Okuno 1, Amine M Korchi 2, Takuma Shinjo 3, Shojiro Kato 3, Takao Kaneko 4
Affiliations expand
- PMID: 28365171 DOI: 10.1016/j.jvir.2017.02.033
Abstract
Purpose: To describe the safety and efficacy of transcatheter arterial embolization for mild to moderate radiographic knee osteoarthritis (OA) that is resistant to conservative treatment.
概要
目的】保存的治療に抵抗性を示す軽度から中等度の変形性膝関節症(OA)に対する経カテーテル動脈塞栓術の安全性と有効性を説明すること。
Materials and methods: This prospective study included 72 patients (95 knees) with OA of Kellgren-Lawrence (KL) grade 1-3 and persisting moderate to severe pain that was resistant to conservative management who were treated with transcatheter arterial embolization between July 2012 and March 2016. Clinical outcomes were evaluated at 1, 4, and 6 months and then every 6 months for a maximum of 4 years. The Whole-Organ Magnetic Resonance Imaging Score (WORMS) was evaluated at baseline and at 2 years after embolization in 35 knees.
材料と方法 この前向き研究は、2012年7月から2016年3月までに経カテーテル動脈塞栓術を受けた、保存的治療に抵抗性のKellgren-Lawrence(KL)グレード1-3のOAと中等度から重度の疼痛が持続する患者72名(95膝)を対象としている。臨床転帰は、1、4、6カ月後、その後6カ月ごとに最長4年間評価した。The Whole-Organ Magnetic Resonance Imaging Score(WORMS)は、35膝のベースライン時と塞栓術後2年目に評価した。
Results: Abnormal neovessels were identified in all cases. There were no major adverse events related to the procedures. Mean Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index pain scores significantly decreased from baseline to 1, 4, 6, 12, and 24 months after treatment (12.1 vs 6.2, 4.4, 3.7, 3.0, and 2.6; all P < .001). The cumulative clinical success rates at 6 months and 3 years after embolization were 86.3% (95% confidence interval [CI], 78%-92%) and 79.8% (95% CI, 69%-87%), respectively. WORMS scores at 2 years after embolization in 35 knees showed significant improvement of synovitis vs baseline (P = .0016) and no osteonecrosis or other evidence indicating aggressive progression of degenerative changes.
結果 全例で異常な新生血管が確認された。手術に関連する重大な有害事象はなかった。Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexの平均疼痛スコアは、ベースラインから治療後1、4、6、12、24ヶ月まで有意に減少した(12.1 vs 6.2、4.4、3.7、3.0、2.6;すべてP < 0.001)。塞栓術後 6 ヵ月および 3 年の累積臨床的成功率は,それぞれ 86.3%(95% 信頼区間 [CI] 78%-92%)および 79.8%(95% CI, 69%-87%)であった.35膝の塞栓術後2年目のWORMSスコアでは、滑膜炎がベースラインより有意に改善し(P = .0016)、骨壊死や他の変性変化の積極的進行を示す証拠はなかった。
◆論文の結論
Conclusions: Transcatheter arterial embolization significantly improved pain symptoms and clinical function in patients with mild to moderate knee OA that was resistant to conservative treatment.
結論 経カテーテル的動脈塞栓術は、保存的治療に抵抗性の軽度から中等度の膝関節OA患者において、疼痛症状と臨床機能を有意に改善した。
◆まとめ
上記論文では中等度から重度の変形性膝関節症72名95膝を対象に、もやもや血管に対する経カテーテル動脈塞栓術(もやもや血管に対する運動器カテーテル治療)の効果を検証しております。
治療後1、4、6、12カ月ごとに最長4年間において変形性関節症スコアであるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index にて評価されております。
また、35膝においては、治療前と塞栓術後2年目にMRIにより調査するThe Whole-Organ Magnetic Resonance Imaging Score(WORMS)を評価しています。
結果として、全例で異常な新生血管(もやもや血管)が確認されたそうです。
Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexの平均疼痛スコアは、治療後1、4、6、12、24ヶ月まで有意に減少したとのことです。
塞栓術後 6 ヵ月および 3 年の累積臨床的成功率は,それぞれ 86.3%および 79.8%であったそうです。
また、35膝の塞栓術後2年目のWORMSスコアでは、滑膜炎が治療前より有意に改善し、骨壊死や他の変性変化の積極的進行はなかったそうです。
上記論文の結果を踏まえると、保存療法でなかなか治癒しない中等度から重度の変形性膝関節症においては、経カテーテル的動脈塞栓術(もやもや血管に対する運動器カテーテル治療)は、疼痛および膝関節機能の改善および、変形性膝関節症の進行予防に有効である可能性がありますね。
変形性膝関節症(膝OA)に対しては、自費診療にはなりますが(2022年5月現在)運動器カテーテル治療も視野に入れる必要性がありそうですね。
今回は、『変形性膝関節症(膝OA)のモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療の効果』について解説させていただきました。