こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『鵞足炎は変形性膝関節症(膝OA)と関連があるのか?』
について解説させていただきます。
鵞足は脛骨内側に停止している3つの腱が鵞鳥の足のように見えることから「鵞足」と呼ばれています。
鵞足は炎症を起こすことがあり(鵞足炎)、変形性膝関節症(膝OA)やスポーツ傷害で好発するとされています。
鵞足炎は鵞足筋腱炎と鵞足包炎に大別されます。
鵞足と内側側副靭帯の間には鵞足包が存在します。
どちらの病態も鵞足筋付着部や鵞足包への繰り返される摩擦や伸張ストレスが原因となり疼痛を引き起こします。
◆鵞足構成筋
●縫工筋
起始:上前腸骨棘
停止:脛骨粗面内側の鵞足
作用:股関節内転・外転・外旋、膝関節屈曲・内旋
神経支配:大腿神経(L2-L4)
●半腱様筋
起始:坐骨結節と仙結節靭帯
停止:脛骨粗面内側の鵞足
作用:股関節内転・伸展、膝関節屈曲・内旋
神経支配:脛骨神経(L5-S2)
●薄筋
起始:恥骨結合下方の恥骨下枝
停止:脛骨粗面内側の鵞足
作用:股関節内転・屈曲、膝関節屈曲・内旋
神経支配:閉鎖神経(L2-L4)
そんな中、2015年に、変形性膝関節症患者における鵞足包炎の有病率について調査した論文が海外で報告されております。
この論文の結果が気になるところですね。
◆論文紹介
Clin Rheumatol (IF: 2.98; Q3)
. 2015 Mar;34(3):529-33.
doi: 10.1007/s10067-014-2653-8. Epub 2014 May 6.
Prevalence of pes anserine bursitis in symptomatic osteoarthritis patients: an ultrasonographic prospective study
症候性変形性関節症患者における鵞足包炎の有病率:超音波による前向き研究
Fatma Uysal 1, Ayla Akbal, Ferhat Gökmen, Gürhan Adam, Mustafa Reşorlu
Affiliations expand
- PMID: 24797774 DOI: 10.1007/s10067-014-2653-8
Abstract
The aim of this prospective study was to determine the prevalence of pes anserine bursitis (PAB) in patients with osteoarthritis. A total of 85 patients with primary knee osteoarthritis diagnosed according to the American College of Rheumatology (ACR) criteria were included in the study. The patients were divided into four groups using the Kellgren-Lawrence staging system. The knee X-rays evaluated according to this system indicated that 15.6% of patients were grade 1, 34.1% grade 2, 37.1% grade 3, and 13.5% grade 4. Ultrasonography (USG) was performed on both knees by a radiologist experienced in musculoskeletal system ultrasonography and unaware of the patients’ physical examination or direct X-ray findings. The presence of PAB, longest diameter of bursitis, and area of bursitis were recorded. The average age of the 11 male and 74 female patients included in the study was 58.9 ± 9.0 years. A total of 170 knees of 85 patients were examined.
概要
この前向き研究の目的は、変形性関節症患者における鵞足包炎(PAB)の有病率を明らかにすることであった。米国リウマチ学会(ACR)の基準に従って診断された一次性変形性膝関節症患者85名を本研究に参加させた。患者をKellgren-Lawrence病期分類システムにより4群に分けた。このシステムに従って評価された膝関節X線は、15.6%の患者がグレード1、34.1%がグレード2、37.1%がグレード3、そして13.5%がグレード4であることを示した。超音波検査(USG)は、筋骨格系超音波検査の経験豊富な放射線科医が、患者の身体検査や直接X線所見を知らずに両膝に実施した。PABの有無,滑液包の最長径,滑液包の面積が記録された.本研究に参加した男性11名、女性74名の平均年齢は58.9±9.0歳であった。85名の患者の合計170個の膝が検査された。
The incidence of bursitis was significantly higher in females (p = 0.026). The incidence of bursitis on ultrasound was 20% (34/170). There was a statistical difference between the grades for bursitis incidence (p = 0.004). There was a significant positive correlation between both the longest length (p = 0.015, r = 0.187) and area (p = 0.003, r = 0.231) of PAB with osteoarthritis grade. The mean age of bursitis patients was higher than that of those without the condition (p = 0.038). In addition, the osteoarthritis (OA) grade and bursitis prevalence increased as the patients’ age increased, and these increases were statistically significant (p < 0.001).
滑液包炎の発生率は、女性で有意に高かった(p = 0.026)。超音波検査での滑液包炎の発生率は20%(34/170)であった。滑液包炎の発生率はグレード間で統計的な差があった(p = 0.004).PAB(鵞足包炎)の最長径(p = 0.015, r = 0.187)および面積(p = 0.003, r = 0.231)はいずれも変形性関節症グレードと有意な正の相関があった.滑液包炎患者の平均年齢は、同疾患のない患者よりも高かった(p = 0.038)。また、変形性関節症(OA)グレードと滑液包炎有病率は、患者の年齢が上がるにつれて増加し、これらの増加は統計的に有意であった(p<0.001)。
◆論文の結論
PAB is easily evaluated with ultrasonography. Pes anserine bursitis was observed in one out of every five symptomatic OA patients and was more common in female patients and with advanced age. A positive correlation was found between OA grade and PAB size and area.
PAB(鵞足包炎)は超音波検査で容易に評価できる。鵞足包炎は有症状OA患者の5人に1人に認められ、女性患者や高齢者に多くみられた。OAグレードとPABの大きさ・面積の間に正の相関が認められた.
◆まとめ
◆まとめ
上記論文では一次性変形性膝関節症患者85名170膝(男性11名、女性74名の平均年齢58.9±9.0歳)における鵞足包炎(PAB)の有病率を調査しております。
患者をKellgren-Lawrence病期分類により4群に分け、(グレード1:34.1%、グレード2:37.1%、グレード3:13.5%、グレード4:13.5%)、経験豊富な放射線科医が超音波検査にて鵞足包炎の有無、鵞足包の最長径、滑鵞足包の面積を計測した。
結果として、
超音波検査で膝OA患者の鵞足包炎の発生率は20%(34/170)であり、女性で有意に高かったようです。
鵞足包炎の発生率はKellgren-Lawrence病期分類グレード間で統計的な差があったとのことです。
鵞足包の最長径および面積はいずれも変形性関節症グレードと有意な正の相関があったそうです。
膝OAを有する鵞足包炎患者の平均年齢は、鵞足包炎のない膝OA患者よりも高かったようです。
また、膝OAグレードと鵞足包炎有病率は、患者の年齢が上がるにつれて増加し、これらの増加は統計的に有意であったとのことです。
上記論文の結果を踏まえると、鵞足包炎は膝OA患者の5人に1人に認められ、女性患者や高齢者に多くみられる傾向にあるようです。
また膝OAグレードと鵞足包の大きさ・面積の間に正の相関が認めらるようです。
膝OA患者は膝関節構成体以外にも20%程度の確率で鵞足炎の評価・アプローチも考慮する必要がありそうですね。
今回は、『鵞足炎は変形性膝関節症(膝OA)と関連があるのか?』
について解説させていただきました。