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『足根洞症候群に対する手術のスポーツ復帰率と長期成績は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『足根洞症候群に対する手術のスポーツ復帰率と長期成績は?』

について解説させていただきます。



足根洞症候群(sinus tarsi syndrome)は1958年にO’Connerが提唱したとされています。腓骨外果前方に開く、足根洞の圧痛と後足部の疼痛、不安定感を特徴とする症候群として報告されました。

外側靭帯損傷とは異なり、腓骨傾斜や足関節前方引き出しなどの足関節不安定性がないにもかかわらず、長期に外果周囲の歩行時痛や圧痛、不安定感を訴える症例があるのが特徴です。

足根洞症候群の原因は明確にはなっていませんが、距骨下関節嚢や骨間距踵靭帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした、炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、瘢痕化による骨間距踵靭帯の機能不全などがあげられています。

局所麻酔薬による症状の消失が治療的診断法で、後距骨下関節造影と腓骨筋の筋電図により客観的な所見が得られるとされています。

そんな中、2021年に、足根洞症候群に対する距骨下関節鏡手術後の長期成績とスポーツ復帰率について検討した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところですね。



◆論文紹介

Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc (IF: 4.34; Q1)

. 2021 Aug;29(8):2485-2494.

 doi: 10.1007/s00167-020-06385-8. Epub 2020 Dec 19.

Six out of ten patients with sinus tarsi syndrome returned to pre-injury type of sport after subtalar arthroscopy

足根洞症候群の患者10人中6人が、距骨下関節鏡手術後に受傷前のタイプのスポーツに復帰した

Kenny Lauf 1 2 3Jari Dahmen 1 2 3J Nienke Altink 1 2 3Sjoerd A S Stufkens 1 2 3Gino M M J Kerkhoffs 4 5 6

Affiliations expand

Free PMC article

Abstract

Purpose: The purpose of this study was to determine multiple return to sport rates, long-term clinical outcomes and safety for subtalar arthroscopy for sinus tarsi syndrome.

概要

目的:本研究の目的は、足根洞症候群に対する距骨下関節鏡手術のスポーツ復帰率、長期臨床成績、安全性を複数回にわたって明らかにすることである。

Methods: Subtalar arthroscopies performed for sinus tarsi syndrome between 2013 and 2018 were analyzed. Twenty-two patients were assessed (median age: 28 (IQR 20-40), median follow-up 60 months (IQR 42-76). All patients were active in sports prior to the injury. The primary outcome was the return to pre-injury type of sport rate. Secondary outcomes were time and rate of return to any type of sports, return to performance and to improved performance. Clinical outcomes consisted of Numerous Rating Scale of pain, Foot and Ankle Outcome Score, 36-item Short Form Survey and complications and re-operations.

方法 2013年から2018年の間に足根洞症候群に対して行われた距骨下関節鏡手術を分析した。22名の患者が評価された(年齢中央値:28(IQR 20-40)、フォローアップ中央値60ヶ月(IQR 42-76))。すべての患者は、受傷前にスポーツで活動していた。主要アウトカムは、受傷前のスポーツへの復帰率であった。副次的アウトカムは,あらゆる種類のスポーツへの復帰,パフォーマンスへの復帰,パフォーマンス向上への復帰の時間と割合であった.臨床的アウトカムは、痛みのNumerous Rating Scale、Foot and Ankle Outcome Score、36-item Short Form Survey、合併症と再手術から構成された。

Results: Fifty-five percent of the patients returned to their preoperative type of sport at a median time of 23 weeks post-operatively (IQR 9.0-49), 95% of the patients returned to any type and level sport at a median time of 12 weeks post-operatively (IQR 4.0-39), 18% returned to their preoperative performance level at a median time of 25 weeks post-operatively (IQR 8.0-46) and 5% returned to improved performance postoperatively at 28 weeks postoperatively (one patient). Median NRS in rest was 1.0 (IQR 0.0-4.0), 2.0 during walking (IQR 0.0-5.3) during walking, 3.0 during running (IQR 1.0-8.0) and 2.0 during stair-climbing (IQR 0.0-4.5). The summarized FAOS score was 62 (IQR 50-90). The median SF-36 PCSS and the MCSS were 46 (IQR 41-54) and 55 (IQR 49-58), respectively. No complications and one re-do subtalar arthroscopy were reported.

結果 術後23週目の中央値で55%の患者が手術前のスポーツタイプに復帰し(IQR 9.0-49)、術後12週目の中央値で95%の患者があらゆるタイプとレベルのスポーツに復帰し(IQR 4.0-39)、術後25週目の中央値で18%が術前のパフォーマンスレベルに戻り(IQR 8.0-46)、術後28週目に5%がパフォーマンスの向上を示した(患者1名)。安静時のNRS中央値は1.0(IQR 0.0-4.0)、歩行時は2.0(IQR 0.0-5.3)、走行時は3.0(IQR 1.0-8.0)、階段昇降時は2.0(IQR 0.0-4.5)であった。FAOSスコアの要約は62点(IQR50-90)であった。SF-36 PCSSとMCSSの中央値は、それぞれ46(IQR 41-54)と55(IQR 49-58)であった。合併症はなく、距骨下関節鏡の再手術は1例であった。



◆論文の結論

Conclusion: Six out of ten patients with sinus tarsi syndrome returned to their pre-injury type of sport after being treated with a subtalar arthroscopy. Subtalar arthroscopy yields effective outcomes at long-term follow-up concerning patient-reported outcome measures in athletic population, with favorable return to sport level, return to sport time, clinical outcomes and safety outcome measures.

結論 足根洞症候群の患者10名のうち6名は、関節鏡下手術を受けた後、受傷前のスポーツに復帰した。関節鏡下手術は、スポーツ選手集団の患者報告アウトカム指標に関する長期追跡調査において、スポーツレベルへの復帰、スポーツ復帰時間、臨床的アウトカム、安全性のアウトカム指標が良好であり、有効なアウトカムをもたらす。



◆まとめ

上記論文では受傷前にスポーツをしていた足根洞症候群22名(年齢中央値:28歳)に対して、距骨下関節鏡手術後のスポーツ復帰率および長期成績について検討しております。

評価項目は、受傷前スポーツへの復帰率、パフォーマンス向上への復帰の時間と割合、痛み(Numerous Rating Scale)、Foot and Ankle Outcomeスコア(足関節・足部機能スコア)、合併症および再手術です。

結果として、術後12週目で95%の患者があらゆるタイプおよびレベルのスポーツに復帰し、術後23週目に55%の患者が手術前のスポーツタイプに復帰したとのことです。

術後25週目には18%の患者が術前のパフォーマンスレベルに戻り、術後28週目には5%の患者がパフォーマンスの向上を示したようです。

また、安静時のNRSは1.0、歩行時は2.0、走行時は3.0、階段昇降時は2.0であり、Foot and Ankle Outcomeスコア(足関節・足部機能スコア)は62点だったようです。

合併症はなく、距骨下関節鏡の再手術は1例であったそうです。

上記論文の結果を踏まえると、足根洞症候群に対する距骨下関節鏡手術は受傷前レベルのスポーツ復帰は55%程度の確率で可能であるようです。

長期的に経過観察をしても、まずまずの足関節機能が保たれ、疼痛も比較的少ないようです。

今回は、『足根洞症候群に対する手術のスポーツ復帰率と長期成績は?

について解説させていただきました。