こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、梨状筋は内旋筋?(回旋作用の逆転現象)について解説したいと思います。
運動器のリハビリをしてらっしゃる方は当たり前の知識かもしれない話です。
股関節の深層外旋6筋
股関節の外旋筋は6つあります
大腿方形筋、上双子筋、下双子筋、梨状筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋。
股関節外旋筋の質量
梨状筋:25g、上双子筋:6g、内閉鎖筋:30g、下双子筋:6g、大腿方形筋:21g、外閉鎖筋:27g
(河上敬介:理学療法学.2011)
そのうちの梨状筋はある動きをすると股関節外旋筋から内旋筋に作用が変わります。
運動器の業界では有名な話ですが、私が学生(養成校)のころは、この知識を習いませんでした。
梨状筋
起始:仙骨の骨盤面(仙骨前面外側)
停止:大腿骨の大転子の先端
作用:股関節の外旋、外転、伸展(屈曲と記載の書籍もある)
神経支配:仙骨神経叢(L5-S2)からの直接の筋枝
運動学の書籍で有名な【カパンジー機能解剖学 下肢編】に股関節が屈曲60°を超えた時に、梨状筋が外旋筋→内旋筋に変わるとわかりやすい図で記されています(著作権の問題があるため図は割愛します)。
論文報告においては、Delp氏(1999年)の報告を京都大学教授の市橋先生が引用し、わかりやすく論文に掲載してくれています(市橋則明:股関節の動きを運動学的視点から考える.理学療法学.2011)。
(Delp SL. Hess WE.et al:Variation of rotation moment arms with hip flexion.J Biomech.1999;32:493-501)
市橋先生の論文はgoogle scholar等の論文検索サイトで無料で閲覧することが可能です。
この論文では、
股関節屈曲0°から90°にすると、大殿筋前部線維、小殿筋後部線維、中殿筋後部線維、梨状筋の4筋の作用が外旋→内旋に変わると記されています。
また、他の報告で深層外旋6筋のうち、股関節が屈曲60°を超えると外閉鎖筋以外の外旋筋は回旋作用が逆転し内旋筋に変わるというものもあります。
この知識を知っていれば、梨状筋に対するアプローチも変わってきます。
例えば、
梨状筋ストレッチはこんな下記のようになります。
皆さんも椅子に座っている状態であれば上記の左図のセルフ梨状筋ストレッチを試してみてください。
このセルフストレッチで殿部(梨状筋の部分)がストレッチされるはずです。
間違っても股関節屈曲・外旋で梨状筋ストレッチをしないようにして下さい!!
ちなみに、股関節屈曲・伸展の中間位での背臥位の状態で股関節内旋を加えても、骨形態学的に梨状筋には伸長が伝わりきらないため、ストレッチ作用は得にくい状態です。
梨状筋のストレッチは坐骨神経痛、梨状筋症候群の方などで行うことがあると思います。
殿部痛や下肢痛の症状のある方では適応になるかもしれません。
梨状筋の深層には坐骨神経が走行していますので、梨状筋が弛むと坐骨神経症状が緩和することがあります。
梨状筋症候群
梨状筋症候群は1947年、Robinsonにより梨状筋症候群という病名を始めて用いられました。
梨状筋をはじめとする股関節外旋筋群と坐骨神経(上殿神経、下殿神経、後大腿皮神経)との間で生じる絞扼性障害です。
椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患に伴う腰部神経根障害との鑑別が必要とされています。
梨状筋症候群の3タイプ
◆梨状筋単独の梨状筋症候群
◆仙腸関節由来の梨状筋諸侯群
◆椎間関節性由来の梨状筋症候群
の3タイプがありますので、梨状筋のアプローチだけで改善しない場合は、椎間関節や仙腸関節へとアプローチを展開する必要がある症例もいます。
また梨状筋症候群の理学所見として
◆梨状筋の圧痛
◆股関節内旋位でのSLR
◆Freiberg test
が陽性率が高いと言われていますので参考にしていただけたらと思います。
梨状筋の性質を理解した上で、評価・アプローチをしていただけたらと思います。
今回は、梨状筋は内旋筋?(回旋作用の逆転現象)をご紹介させていただきました。