『肩峰下インピンジメント症候群に対する胸郭モビライゼーションの効果』
こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『肩峰下インピンジメント症候群に対する胸郭モビライゼーションの効果』について解説させていただきます。
肩峰下インピンジメント症候群に対するリハビリテーションは、肩甲上腕関節に対するストレッチやモビライゼーション、肩関節周囲筋や回旋筋腱板(ローテーターカフ)の筋力トレーニングなど運動療法が効果的とされています。
肩関節の近隣関節である胸郭からの影響も危惧され、注目すべきところではあると思います。
普段の臨床においても肩関節疾患の方は胸郭が硬い人が多い印象があります。
そんな中、2020年に、肩峰下インピンジメント症候群患者に対する胸郭モビライゼーションの効果を検証した論文が報告されております。
検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
Healthcare (Basel) (Report missing IFs)
. 2020 Sep 2;8(3):316.
doi: 10.3390/healthcare8030316.
Effects of Thoracic Mobilization and Extension Exercise on Thoracic Alignment and Shoulder Function in Patients with Subacromial Impingement Syndrome: A Randomized Controlled Pilot Study
肩峰下インピンジメント症候群患者の胸郭アライメントと肩関節機能に対する胸郭モビライゼーションと伸展運動の効果
Shin Jun Park 1, Seok Hyeon Kim 2, Soon Hee Kim 3
- PMID: 32887287 PMCID: PMC7551755
- DOI: 10.3390/healthcare8030316
Abstract
Introduction: Thoracic kyphosis commonly occurs in subacromial impingement syndrome. This pilot study investigated the effect of thoracic joint mobilization and extension exercise on improving thoracic alignment and shoulder function. Methods: In total, 30 patients with subacromial impingement syndrome were recruited and randomly assigned to three groups, the joint mobilization group (n = 10), exercise group (n = 10), and combination group (n = 10). After four weeks of treatment, the measured outcomes included thoracic kyphosis using a manual inclinometer; pectoralis major (PM) and upper trapezius (UT) muscle tone and stiffness using the MyotonPRO®; affected side passive range of motion (ROM) using the goniometer (flexion, abduction, medial rotation, and lateral rotation); and shoulder pain and disability index (SPADI). Results: All three groups had significant improvements in all variables (p < 0.05). Thoracic kyphosis; UT muscle tone; and flexion, medial rotation, and lateral rotation ROM and SPADI were all significantly improved in the combination group compared to the mobilization and exercise groups (p < 0.05). Conclusions: The combination therapy of thoracic mobilization and extension exercise can be regarded as a promising method to improve thoracic alignment and shoulder function in patients with subacromial impingement syndrome.
はじめに 肩峰下インピンジメント症候群では、胸椎の前彎がよく見られます。本パイロットスタディでは、胸椎関節モビライゼーションと胸椎伸展運動が、胸椎のアライメントと肩関節機能の改善に及ぼす効果を検討した。方法は以下の通り。合計30名の肩峰下インピンジメント症候群の患者を募集し、胸椎関節モビライゼーション群(n=10)、胸椎伸展エクササイズ群(n=10)、コンビネーション群(n=10)の3群にランダムに割り付けた。4週間の治療後、手動式傾斜計を用いた胸郭前彎、MyotonPRO®(組織硬度計)を用いた大胸筋(PM)と上部僧帽筋(UT)の筋緊張と硬さ、ゴニオメーターを用いた患側受動可動域(ROM)(屈曲、外転、内旋、外旋)、肩の痛みと障害の指標(SPADI)などの測定結果が得られた。結果は以下の通りです。3群ともすべての変数で有意な改善が見られた(p < 0.05)。胸椎前彎、UTの筋緊張、屈曲・内旋・外旋のROMとSPADIは、モビライゼーション群とエクササイズ群に比べ、併用群ですべて有意に改善した(p<0.05)。結論としては 胸郭モビライゼーションと伸展運動の併用療法は、肩峰下インピンジメント症候群の患者の胸郭アライメントと肩機能を改善する有望な方法とみなすことができる。
◆論文のまとめ
30名の肩峰下インピンジメント症候群の患者を対象に胸椎関節モビライゼーション群(10名)胸椎伸展エクササイズ群(10名)、コンビネーション群(10名)の3群にランダムに割り付けた。
それぞれ4週間の治療後、胸椎前彎アライメント、組織硬度計を用いた大胸筋(PM)と上部僧帽筋(UT)の筋緊張と硬さ、患側他動肩関節可動域(ROM)(屈曲、外転、内旋、外旋)、肩の痛みを調査した。
結果は3群ともすべての評価項目で有意な改善が見られた。
胸椎前彎、UTの筋緊張、屈曲・内旋・外旋のROMとSPADIは、モビライゼーション群と胸椎伸展エクササイズ群に比べ、コンビネーション群ですべて有意に改善した(p<0.05)。
結論としては 胸郭モビライゼーションと胸椎伸展運動の併用療法は、肩峰下インピンジメント症候群の患者の胸郭アライメントと肩機能を改善する可能性がある。
◆結論
肩峰下インピンジメント症候群に対して、胸郭モビライゼーションは胸椎アライメント、大胸筋、上部僧帽筋の柔軟性、肩関節の屈曲、外転、内旋、外旋可動域、肩の痛みの改善につながることが論文からわかりました。
今回は、『肩峰下インピンジメント症候群に対する胸郭モビライゼーションの効果』について解説させていただきました。