こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『橈骨遠位端骨折で変形治癒すると機能予後に影響するか?』
について解説させていただきます。
橈骨遠位端骨折を占める割合は全骨折の16~20%とされています。
受傷機転は転倒、転落がほとんどであり、若年者から高齢者まで幅広い層に認めます。
橈骨遠位端骨折は高齢者の4大骨折に入るもの、超高齢社会を迎えたわが国では、ますます増加傾向をたどることが予測されます。
そんな中で、2017年5月に『橈骨遠位端骨折 診療ガイドライン2017 改定第2版』が南江堂から出版されました。
このガイドラインは、世界中から有用な論文を様々な視点から検証し、科学的根拠のある論文を集めて検証したものになります。
【監修】日本整形外科学会、日本手外科学会
1988年~2014年の1700編の論文から抜粋され検証されております。
この中から、
『変形治癒が機能的予後に影響するか?』
という項目がありますので見てみたいと思います。
この項目では世界中の論文12編から再編され、そのうち和文は0編です。
〈解説〉
橈骨遠位端骨折の変形治癒は大きく分けて2種類あります。
◆関節外変形治癒
◆関節内変形治癒
いずれも高齢者や長期成績における機能予後との間に明確な関連性が示されていない。
しかし、青壮年、活動性の高い患者、短期・中期成績では機能的予後に影響すると考えられるため、変形治癒の予防的治療の選択肢が望ましい。
・平均年齢58歳(18~89歳)の関節外橈骨遠位端骨折に対して保存療法140例、手術療法82例を行ったところ、受傷後1年で65歳未満では変形を認めた群でDASH(患者立脚型)スコア、PRWE(Patient-Rated Wrist Evaluation)が不良であった。一方、65歳以上では、両群間に有意差はなかった。年齢に関係なく、変形治癒の許容範囲から逸脱はDASHスコア、PRWEの不良と相関があった。特に65歳以上では、変形治癒に伴い患者立脚型評価が不良になる患者の割合が、65歳未満の3~4倍ほど少なくなる傾向。
・平均年齢38歳(17~60歳)の関節内橈骨遠位端骨折81例に対して、掌側ノンロッキングプレートを行った。平均観察期間9年(6~18年)で健側と比較してgap、step-offの残存で有意差を認め、これらの変形治癒は関節症の進行と相関があった。関節症の変化は、掌背屈の可動域減少と相関を認めたが、疼痛の程度、DASHスコア、握力、橈尺屈の可動域とは相関がなかった。
これらのように特に若年層で変形治癒が残存しているケースでは機能障害が残存することがあるのは念頭においてリハビリをしていく方が良いかも知れませんね。
高齢者においては、ADLが元々低下していたりすることもあるからか、変形治癒しても患者立脚型評価(DASHスコアなど)や満足度はそこまで低くないようです。
リハビリ開始時や途中経過の中で変形治癒(保存療法、手術療法とちらにおいても)をしている場合の予後予測として知っておく必要がありますね。
今回は、『橈骨遠位端骨折で変形治癒すると機能予後に影響するか?』について解説させていただきました。