こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『椎間板性腰痛のスクリーニング検査(診断サポートツール)』
について解説させていただきます。
椎間板性腰痛は椎間板が痛みの原因となって生じる腰痛とされています。
椎間板の線維輪や終板に負荷がかかることで、椎間板を支配する脊椎洞神経が感知して、腰痛が発生します。
腰椎椎間板ヘルニアになる前段階として椎間板性腰痛が発生することも多いです。
椎間板性腰痛はいわゆる「ぎっくり腰」(急性腰痛症)の要因の一つとされています。
いわゆる「ぎっくり腰」(急性腰痛症)の報告においては下記の3つの報告が多く散見されます。
・椎間関節性腰痛
・椎間板性腰痛
・仙腸関節性腰痛
椎間板性腰痛の特徴としては以下があげられます。
・前屈で腰痛増悪
→椎間板は前屈することで椎間板内圧が高まるため、前屈で腰痛が悪化しやすい
・棘突起上の痛み
→椎間板性腰痛は主に腰部の真ん中(棘突起上)に痛みが出現しやすい
・椎間板造影による再現痛
→椎間板造影検査にて同じ痛みが出現する
・MRIにHIZ(高輝度変化)所見
→MRIのT2強調像で後方線維輪にHigh signal intensity zone(HIZ:高輝度変化)が確認できる
・傍脊柱筋に圧痛がないことが多い
→椎間板性腰痛患者で約70%が傍脊柱筋に圧痛がないとの報告もある
・端坐位保持、立位保持で腰痛増悪
→抗重力位が長くなると、椎間板への内圧が高くなり椎間板性腰痛が出現しやすい
・起床時に腰痛があり、徐々に痛みが軽減する
→起床時は椎間板内圧が高く、腰痛が発生しやすい
そんな中、2016年に、椎間板性腰痛の診断サポートツールは有用かを検証した論文が報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
◆論文紹介
PLoS One
. 2016 Nov 7;11(11):e0166031.
doi: 10.1371/journal.pone.0166031. eCollection 2016.
Diagnosing Discogenic Low Back Pain Associated with Degenerative Disc Disease Using a Medical Interview
問診による椎間板変性症に伴う椎間板性腰痛の診断
Juichi Tonosu 1, Hirohiko Inanami 2 3, Hiroyuki Oka 4 5, Junji Katsuhira 6, Yuichi Takano 2 3, Hisashi Koga 2 3, Yohei Yuzawa 2 3, Ryutaro Shiboi 3, Yasushi Oshima 5, Satoshi Baba 3, Sakae Tanaka 5, Ko Matsudaira 4 5
Affiliations expand
- PMID: 27820861 PMCID: PMC5098755 DOI: 10.1371/journal.pone.0166031
Abstract
Purposes: To evaluate the usefulness of our original five questions in a medical interview for diagnosing discogenic low back pain (LBP), and to establish a support tool for diagnosing discogenic LBP.
目的 椎間板性腰痛症診断のための問診における5つの質問項目の有用性を評価し、椎間板性腰痛症診断支援ツールの確立を目指す。
Materials and methods: The degenerative disc disease (DDD) group (n = 42) comprised patients diagnosed with discogenic LBP associated with DDD, on the basis of magnetic resonance imaging findings and response to analgesic discography (discoblock). The control group (n = 30) comprised patients with LBP due to a reason other than DDD. We selected patients from those who had been diagnosed with lumbar spinal stenosis and had undergone decompression surgery without fusion. Of them, those whose postoperative LBP was significantly decreased were included in the control group. We asked patients in both groups whether they experienced LBP after sitting too long, while standing after sitting too long, squirming in a chair after sitting too long, while washing one’s face, and in the standing position with flexion. We analyzed the usefulness of our five questions for diagnosing discogenic LBP, and performed receiver operating characteristic (ROC) curve analysis to develop a diagnostic support tool.
方法 椎間板変性症(DDD)群(n = 42)は、MRIと椎間板造影(discoblock)に対する反応に基づいて、DDDに伴う椎間板性腰痛症と診断された患者から構成された。対照群(n=30)は、DDD以外の原因によるLBP患者である。腰部脊柱管狭窄症と診断され、固定術を伴わない除圧術を受けた患者から選択した。このうち、術後のLBPが有意に減少した患者を対照群とした。両群の患者に、長く座っているとき、長く座って立っているとき、長く座って椅子に座っているとき、顔を洗っているとき、屈曲して立っているときに、LBPを経験したかどうかを尋ねた。我々は、椎間板性LBPを診断するための5つの質問の有用性を分析し、診断支援ツールを開発するためにROC曲線分析を行った。
Results: There were no significant differences in baseline characteristics, except age, between the groups. There were significant differences between the groups for all five questions. In the age-adjusted analyses, the odds ratios of LBP after sitting too long, while standing after sitting too long, squirming in a chair after sitting too long, while washing one’s face, and in standing position with flexion were 10.5, 8.5, 4.0, 10.8, and 11.8, respectively. The integer scores were 11, 9, 4, 11, and 12, respectively, and the sum of the points of the five scores ranged from 0 to 47. Results of the ROC analysis were as follows: cut-off value, 31 points; area under the curve, 0.92302; sensitivity, 100%; and specificity, 71.4%.
結果 年齢以外のベースライン特性には群間で有意差はなかった。5つの質問すべてにおいて群間に有意差があった。年齢を調整した解析では、長く座っているとき、長く座って立っているとき、長く座って椅子にすわっているとき、顔を洗っているとき、屈曲して立っているときのLBPのオッズ比は、それぞれ10.5、8.5、4.0、10.8、11.8であった。整数点はそれぞれ11点、9点、4点、11点、12点で、5点の合計点は0点から47点であった。ROC解析の結果は、カットオフ値31点、曲線下面積0.92302、感度100%、特異度71.4%であった。
Conclusions: All five questions were useful for diagnosing discogenic LBP. We established the scoring system as a support tool for diagnosing discogenic LBP.
結論 5つの質問はすべて椎間板性腰痛の診断に有用であった。このスコアリングシステムは椎間板性腰痛の診断支援ツールとして確立された。
◆まとめ
上記論文では椎間板性変性症(椎間板性腰痛)群42名に対して5つの質問項目の有用性について評価し、椎間板性腰痛症診断支援ツールの確立を目指しております。
対照群は30名で椎間板変性症以外の腰痛患者です。
5つの質問項目は
・長時間座位での腰痛:11点
・長時間座位後の立ち上がりで腰痛:9点
・長時間椅子座位でじっとしてられない:4点
・顔を洗う際の腰痛:11点
・立位で屈曲した際の腰痛:12点
ROC解析の結果は、カットオフ値31点以上感度100%、特異度71.4%でした。
上記論文の結果を踏まえると、これら5項目の合計が31点を超えると椎間板性腰痛の可能性が高くなり、椎間板性腰痛の診断サポートツールとしては有用であると思われます。
◆椎間板性腰痛の診断サポートツール
感度:病気がある群での検査の陽性率
特異度:病気がない群での検査の陰性率
今回は、『椎間板性腰痛のスクリーニング検査(診断サポートツール)』
について解説させていただきました。