こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『慢性足関節不安定症(CAI)に対する運動療法の効果』について解説させていただきます。
足関節捻挫は再発率が高く、内反捻挫の繰り返しにより症状が慢性化し、40~75%が慢性足関節不安定症(CAI)に移行すると報告されています。(Geber JP ,et al:Foot Ankle Int.1998)
諸家の報告で慢性足関節不安定症(CAI)は足部機能の低下や動的バランス能力の低下に陥るとされています。
そんな中2017年に、慢性足関節不安定症におけるリハビリテーション(バランスエクササイズとチューブトレーニング)の有効性を検証した論文が海外で報告されています。
どちらもメジャーな運動療法であるので内容が気になるところですね。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Sport Rehabil (IF: 1.93; Q4)
. 2017 Jul;26(4):238-249.
doi: 10.1123/jsr.2015-0189. Epub 2016 Aug 24.
A Randomized Controlled Trial Comparing Rehabilitation Efficacy in Chronic Ankle Instability
慢性足関節不安定症におけるリハビリテーションの有効性を比較した無作為化対照試験
Cynthia J Wright, Shelley W Linens, Mary S Cain
- PMID: 27632874 DOI: 10.1123/jsr.2015-0189
Abstract
Context: There is minimal patient-oriented evidence regarding the effectiveness of interventions targeted to reduce symptoms associated with chronic ankle instability (CAI). In addition, clinicians aiming to prioritize care by implementing only the most effective components of a rehabilitative program have very little evidence on comparative efficacy.
コンテキスト。慢性足関節不安定症(CAI)に伴う症状の軽減を目的とした介入の有効性に関する患者指向のエビデンスは最小限である。さらに、リハビリテーションプログラムの最も効果的なコンポーネントのみを実施してケアの優先順位を決めることを目指す比較効果に関するエビデンスがほとんどない。
Objective: To assess the comparative efficacy of 2 common ankle rehabilitation techniques (wobble-board [WB] balance training and ankle strengthening using resistance tubing [RT]) using patient-oriented outcomes.
目的 2つの一般的な足関節リハビリテーション技術(ウォブルボード[WB]を用いたバランストレーニングとレジスタンスチューブ[RT]を用いた足関節強化)の比較効果を、患者指向のアウトカムを用いて評価すること。
Design: Randomized controlled trial.
デザイン 無作為化比較試験。
Setting: Laboratory.
設定 実験室
Patients: 40 patients with CAI randomized into 2 treatment groups: RT and WB. CAI inclusion criteria included a history of an ankle sprain, recurrent “giving way,” and a Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT) score ≤25.
対象者:CAI患者40名。CAI患者40名を2つの治療群に無作為に分けた。RTとWB。CAIの登録基準は、足関節捻挫の既往歴、「giving way」の再発、Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)スコア25以下。
Interventions: Participants completed 5 clinician-oriented tests (foot-lift test, time-in-balance, Star Excursion Balance Test, figure-of-8 hop, and side-hop) and 5 patient-oriented questionnaires (CAIT, Foot and Ankle Ability Measure [FAAM], Activities of Daily Living [ADL] and FAAM Sport scale, Short-Form 36 [SF-36], and Global Rating of Function [GRF]). After baseline testing, participants completed 12 sessions over 4 wk of graduated WB or RT exercise, then repeated baseline tests.
介入方法 参加者は、臨床立脚型の5つのテスト(フットリフトテスト、タイムインバランス、スターエクスカージョンバランステスト、8の字ホップ、サイドホップ)と、患者立脚型の5つの質問票(CAIT、足関節能力測定法(FAAM)、日常生活動作(ADL)とFAAMスポーツスケール、ショートフォーム36(SF-36)、機能の全体評価(GRF))を完了した。ベースラインテストの後、参加者は4週間にわたり、段階的なWBまたはRT運動を12回行い、その後、ベースラインテストを繰り返した。
Main outcome measures: For each patient- and clinician-oriented test, separate 2 × 2 RMANOVAs analyzed differences between groups over time (alpha set at P = .05).
主な評価項目 患者立脚型および医療者立脚型の各テストについて、2×2のRMANOVAを用いてグループ間の経時的な差を分析した(アルファ値はP = 0.05とした)。
Results: There was a significant interaction between group and time for the FAAM-ADL (P = .04). Specifically, the WB group improved postintervention (P < .001) whereas the RT group remained the same (P = .29). There were no other significant interactions or significant differences between groups (all P > .05). There were significant improvements postintervention for the CAIT, FAAM-Sport, GRF, SF-36, and all 5 clinician-oriented tests (all P < .001).
結果。FAAM-ADLでは、グループと時間の間に有意な相互作用が見られた(P = 0.04)。具体的には、WB群は介入後に改善した(P < 0.001)のに対し、RT群は変わらなかった(P = 0.29)。その他の有意な相互作用やグループ間の有意差はなかった(すべてP>0.05)。CAIT、FAAM-Sport、GRF、SF-36、および5つの医療者立脚型のテストすべてにおいて、介入後に有意な改善が見られた(すべてP < 0.001)。
◆論文の結論
Conclusions: A single-exercise 4-wk intervention can improve patient- and clinician-oriented outcomes in individuals with CAI. Limited evidence indicates that WB training was more effective than RT.
結論 1つのエクササイズによる4週間の介入は、CAI患者の患者立脚型および医療者立脚型のアウトカムを改善することができる。限定的なエビデンスによると、WBトレーニングはRTよりも効果的であった。
◆まとめ
上記の論文では慢性足関節不安定症(CAI)40名を、バランストレーニング群とチューブトレーニング群の2群に振り分け、どちらが治療効果が高いかを検証しております。
参加者は4週間にわたり、段階的にバランストレーニングまたはチューブトレーニング運動を12回行い、介入前と介入4週後において、医療者指向型の足機能評価5つと患者立脚型の質問指標5つで評価しています。
患者立脚型評価のFAAM-ADLではバランストレーニング群は介入後に改善したがチューブトレーニング群は変わらなかった。
患者立脚型評価であるCAIT、FAAM-Sport、GRF、SF-36、および5つの医療者立脚型のテストすべてにおいて、2群とも介入後に有意な改善が見られた。
よって、バランストレーニング、チューブトレーニングともに4週間の介入は、慢性足関節不安定症(CAI)患者の心身機能を改善できることがわかりました。
さらに言うと、バランストレーニングの方がより効果的であったとされています。
今回は、『慢性足関節不安定症(CAI)に対する運動療法の効果』について解説させていただきました。