こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『外反母趾に対する装具療法のエビデンスは?』について解説させていただきます。
外反母趾は、母趾中足指節(MTP)関節で母趾が外反した変形であります。
外反母趾の要因としては遺伝や性差、加齢による影響が挙げられ、特に女性に圧倒的に多いとされています。
また、ハイヒールやつま先の細い靴を多用することで、第1中足指節関節(母趾MTP関節)に外反力が作用して変形すると、一般的には認識されております。
外反母趾の定義としては、外反母趾角度が20°以上を外反母趾としています(外反母趾診療ガイドライン 2014)。
外反母趾が発症しやすい要因としては
解剖学的要因:第一中足骨内反、足根中足関節の不安定性、足趾の長さ、全身性関節弛緩
外的要因:体重、靴の形態
などが一般的に挙げられていますが、明確にはなっていないものもあります。
◆外反母趾の特徴:(外反母趾診療ガイドライン 2014)
・第一中足骨の内反
・母趾MTP関節部の突出
・母趾基節骨の外転、回内変形
・開張足
◆外反母趾 診療ガイドライン 改訂第2版
外反母趾においては、2008年に初版の「外反母趾 診療ガイドライン」が出版され、その6年後である2014年に改訂第2版が南江堂から出版されています。
おそらく近々、改訂第3版が出版されるのではないかと思われます。
ガイドラインは約6年で、時代遅れの傾向になることがあり、3~5年で更新するべきとの見解があります。
このガイドラインは、世界中から有益な論文を様々な視点から検証し、再編され出版されています。
【監修】日本整形外科学会、日本足の外科学会
初版は1982年から2002年までの論文を検索しており、改訂第2版では2003年から2012年の範囲でヒットした2,500件以上の論文から199件が新たに追加されております。
◆外反母趾に対する装具療法のエビデンス
保存療法に関しては、2008年発行の初版では196の論文(海外論文79編、和文117編)がリストアップされています。
さらに改訂第2版により28の論文(海外論文13編、和文15編)が追加されております。
このガイドラインの中から、
『外反母趾に対する装具療法は効果があるか』
という項目がありますので見てみたいと思います。
この項目では世界中の論文15編から再編され、そのうち和文は9編です。
推奨文と推奨グレードの基準に関しては以下の通りです。
【推奨文】
★装具療法では、軽度から中等度の外反母趾に対して除痛効果を期待できるが、装具使用中止後その効果は低下する。
★変形矯正を目的とした装具療法では、装具中HV角3°~7°程度の変形矯正効果を期待できる。
・推奨Grade C
外反母趾に対しては、疼痛部位を除圧するパッドや歩行時や夜間に使用する矯正装具、インソールなど、様々な装具が用いられています。
外反母趾に対する装具療法の推奨Grade は『C』であり弱い根拠に基づいていますが、まだまだ効果のほどは十分に明らかにされていない状態のようです。
◆除痛効果
諸家の報告では疼痛部位や破綻しているアーチ構造に対しての装具療法によって、外反母趾症例のほぼ50%以上に除痛効果が期待できると報告されています。
外反母趾35例64足(年齢7~67歳、平均42歳)に対する昼用、夜間用矯正用装具を併用した保存療法では、初診時HV角(外反母趾角)が35°未満の48足で平均13カ月58.3%の症例に除痛効果を認めたとされています。一方、35°以上の16足における除痛効果は18.8%にとどまっていたそうです。
◆変形矯正効果
外反母趾に対しての装具療法による変形矯正効果について、足底挿板(インソール)を使用した45足(11~69歳)中14足で、平均2年1か月の経過により、5°以上の変形矯正が得られ、そのうち12例がHV角(外反母趾角)35°未満で全例が40歳以上であったと報告されています。
また一方で、外反母趾35例64足に対する昼用、夜間用矯正用装具を併用した保存療法では変形矯正効果は期待できないとの報告もあるようです。
変形矯正を目的とした一部の装具で、中軽度の変形矯正効果は期待できるようですが、装具療法後の非装着時に変形が矯正されるか否かは明確に結論付けられていないのが現状です。
今回は、『外反母趾に対する装具療法のエビデンスは?』について解説させていただきました。