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『変形性膝関節症(OA)への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『変形性膝関節症(OA)への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。



日本は超高齢社会に入り、老化に伴う変性疾患の割合も急増しております。

変形性関節症も今後、症例数が増えてくることが予測され、変形性膝関節症(膝OA)の有病率においても、加齢とともに増加しております。

膝OAは関節軟骨の変性や摩耗から始まり、進行すると軟骨下骨の硬化や骨棘形成などの骨増殖性変化を生じ、関節の変形に至る疾患です。(津村弘.2017)

国内にレントゲン学的な膝OAの患者は約2,590万人存在し、症状が出現している患者に限っては約800万人いると報告されています(Yoshimura N.2009)。

そんな中、2021年に、変形性膝関節症(OA)に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法の効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果がとても気になるところです。

 変形性膝関節症(膝OA)に有効なリハビリとは?



◆PRP療法とは

PRP療法とは自分の血液を採取し、特殊な技術を駆使して、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。そして、自分の傷んでいる部位に注射することで早期治癒を図ります。

早期の競技復帰のために、PRP療法を行っているプロスポーツ選手なども多くいらっしゃいます。



◆論文紹介

Am J Sports Med (IF: 6.2; Q1)

. 2021 Jan;49(1):249-260.

 doi: 10.1177/0363546520909397. Epub 2020 Apr 17.

Platelet-Rich Plasma Versus Hyaluronic Acid for Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials

膝の変形性関節症に対する多血小板血漿(PRP)とヒアルロン酸の比較: 無作為化対照試験の系統的レビューとメタアナリシス

John W Belk 1Matthew J Kraeutler 2Darby A Houck 1Jesse A Goodrich 1Jason L Dragoo 1Eric C McCarty 1

Affiliations expand

Abstract

Background: Platelet-rich plasma (PRP) and hyaluronic acid (HA) are 2 nonoperative treatment options for knee osteoarthritis (OA) that are supposed to provide symptomatic relief and help delay surgical intervention.

概要

背景 多血小板血漿(PRP)とヒアルロン酸(HA)は変形性膝関節症(OA)に対する2つの非手術的治療法であり、症状の緩和と外科的介入の遅延に役立つと考えられている。

Purpose: To systematically review the literature to compare the efficacy and safety of PRP and HA injections for the treatment of knee OA.

目的:膝OAの治療におけるPRPとHA注射の有効性と安全性を比較するために、文献を系統的にレビューすること。

Study design: Meta-analysis of level 1 studies.

研究デザイン レベル1研究のメタアナリシス。

Methods: A systematic review was performed by searching PubMed, the Cochrane Library, and Embase to identify level 1 studies that compared the clinical efficacy of PRP and HA injections for knee OA. The search phrase used was platelet-rich plasma hyaluronic acid knee osteoarthritis randomized. Patients were assessed via the Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC), visual analog scale (VAS) for pain, and Subjective International Knee Documentation Committee (IKDC) scale. A subanalysis was also performed to isolate results from patients who received leukocyte-poor and leukocyte-rich PRP.

方法 PubMed、Cochrane Library、Embaseを検索し、膝OAに対するPRPとHA注射の臨床効果を比較したレベル1の研究を特定し、システマティックレビューを行った。使用した検索語句は、platelet-rich plasma hyaluronic acid knee osteoarthritis randomizedであった。患者は、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)、痛みのための視覚的アナログスケール(VAS)、主観的国際膝関節文書委員会(IKDC)スケールによって評価されました。また、白血球の少ないPRPと白血球の多いPRPを投与された患者の結果を分離するためのサブ解析も行われた。

Results: A total of 18 studies (all level 1) met inclusion criteria, including 811 patients undergoing intra-articular injection with PRP (mean age, 57.6 years) and 797 patients with HA (mean age, 59.3 years). The mean follow-up was 11.1 months for both groups. Mean improvement was significantly higher in the PRP group (44.7%) than the HA group (12.6%) for WOMAC total scores (P < .01). Of 11 studies based on the VAS, 6 reported PRP patients to have significantly less pain at latest follow-up when compared with HA patients (P < .05). Of 6 studies based on the Subjective IKDC outcome score, 3 reported PRP patients to have significantly better scores at latest follow-up when compared with HA patients (P < .05). Finally, leukocyte-poor PRP was associated with significantly better Subjective IKDC scores versus leukocyte-rich PRP (P < .05).

結果 PRPによる関節内注入を受けた患者811人(平均年齢57.6歳)、HAによる注入を受けた患者797人(平均年齢59.3歳)を含む計18件の研究(すべてレベル1)が、組み入れ基準に合致した。両群の平均追跡期間は11.1ヶ月であった。WOMAC総スコアの平均改善度は、PRP群(44.7%)がHA群(12.6%)より有意に高かった(P < 0.01)。VASに基づく11の研究のうち、6つの研究では、PRP患者はHA患者と比較して、最新のフォローアップで有意に痛みが少なかったと報告された(P < 0.05)。主観的IKDC結果スコアに基づく6件の研究のうち、3件は、HA患者と比較して、最新の追跡調査時にPRP患者のスコアが有意に良好であったと報告した(P < 0.05)。最後に、白血球の少ないPRPは、白血球の多いPRPと比較して、有意に良い主観的IKDCスコアと関連していた(P < 0.05)。



◆論文の結論

Conclusion: Patients undergoing treatment for knee OA with PRP can be expected to experience improved clinical outcomes when compared with HA. Additionally, leukocyte-poor PRP may be a superior line of treatment for knee OA over leukocyte-rich PRP, although further studies are needed that directly compare leukocyte content in PRP injections for treatment of knee OA.

結論 PRPによる膝関節OAの治療を受けている患者は、HAと比較して臨床転帰が改善することが期待される。さらに、白血球の少ないPRPは、白血球の多いPRPよりも膝OAの治療法として優れているかもしれないが、膝OAの治療のためのPRP注射における白血球の含有量を直接比較するさらなる研究が必要である。



◆まとめ

上記論文では膝OAの治療で多血小板血漿(PRP)療法を受けた811名(平均年齢57.6歳)とヒアルロン酸注射を受けた患者797名(平均年齢59.3歳)を、18研究から有効性の比較検証をしております。

WOMAC(膝スコア)の平均改善度は、PRP療法群がヒアルロン酸群より有意に高く、

疼痛(VAS)は11研究中、6つの研究でPRP療法群はヒアルロン酸群より痛みが少なかったとそうです。

上記論文の結果から考えると、世間的に多く治療されている膝関節内へのヒアルロン酸注入よりも多血小板血漿(PRP)療法の方が、膝の機能や疼痛の改善度合いが高いようです。

しかしながら、現時点(2022年3月)で多血小板血漿(PRP)療法は自費診療ですので、少し治療費は高くなります。

多血小板血漿(PRP)療法は変形性膝関節症(OA)にとっては有効な治療方法の一つと言えそうです。

今回は、『変形性膝関節症(OA)への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。