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『変形性股関節症患者への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『変形性股関節症患者への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。



変形性股関節症は加齢変化(老化)により、股関節を構成する骨の変形や、関節軟骨の摩耗や減少を来たす疾患であります。

変形性股関節症の症状としては、股関節痛、関節可動域の減少、跛行などが挙げられます。

変形性股関節症は大きく分けて2つに分類されています。

●一次性:あきらかな原因がないもの

●二次性:何らかの病気やケガが原因のもの

日本では先天性股関節脱臼、臼蓋不全によるものが約90%とされています

変形性股関節症の有病率は全体で1.0~4.3%であり、男性は0~2.0%、女性は2.0~7.5%と女性の割合が多いと疾患とされています。

日本においては、一次性変形性股関節症の頻度は、0.65~21%との報告があります。

変形性股関節症の発症年齢は40~50歳に多く、遺伝の影響を受ける可能性があるとされています。


そんな中、2021年に、変形性股関節症に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法の効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果がとても気になるところです。



◆PRP療法とは

PRP療法とは自分の血液を採取し、特殊な技術を駆使して、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。そして、自分の傷んでいる部位に注射することで早期治癒を図ります。

早期の競技復帰のために、PRP療法を行っているプロスポーツ選手なども多くいらっしゃいます。

ヨーロッパやアメリカでは、自己治癒力をサポートする治療として頻繁に行われているようです。

現時点(2022年3月)で多血小板血漿(PRP)療法は自費診療ですので、少し治療費は高くなります。



◆論文紹介

Review

Ir J Med Sci (IF: 1.57; Q3)

. 2021 Aug;190(3):1021-1025.

 doi: 10.1007/s11845-020-02388-z. Epub 2020 Oct 5.

Platelet-rich plasma injections for hip osteoarthritis: a review of the evidence

変形性股関節症に対する多血小板血漿注射:エビデンスのレビュー

Mark Berney 1Paul McCarroll 2Liam Glynn 3Brian Lenehan 2 3

Affiliations expand

  • PMID: 33015749

Abstract

Osteoarthritis is a significant cause of chronic pain in the elderly population with hip osteoarthritis as one of the main causes of functional disability and joint pain in adults older than 55 years. Recently, platelet rich plasma (PRP) injections have been introduced for treatment of osteoarthritis. The aim of this systematic review is to assess its effectiveness in the management of hip osteoarthritis.

要旨

変形性股関節症は、55歳以上の高齢者における機能障害や関節痛の主な原因の1つであり、高齢者集団における慢性疼痛の重要な原因となっています。近年、変形性関節症の治療法として多血小板血漿(PRP)注射が導入されている。この系統的レビューの目的は、変形性股関節症の管理におけるその有効性を評価することである。

We performed a search of the literature for published prospective studies that assessed the effectiveness of PRP injections in the treatment of hip osteoarthritis, with a minimum follow-up of 3 months. Primary outcome measures were WOMAC and VAS scores. Five trials were identified with 185 patients undergoing treatment with ultrasound-guided intra-articular injections of PRP, compared with patients treated with hyaluronic acid alone (n = 148) or hyaluronic acid combined with PRP (n = 31) in one study.

変形性股関節症の治療におけるPRP(多血小板血漿)注射の有効性を評価し、最低3ヶ月のフォローアップを行った公表済みの前向き研究の文献を検索した。主要アウトカム指標は、WOMACスコアとVASスコアとした。5つの試験が確認され、185人の患者がPRP(多血小板血漿)の超音波ガイド下関節内注射による治療を受け、1つの試験ではヒアルロン酸単独(n=148)またはヒアルロン酸とPRP(多血小板血漿)の併用(n=31)の治療を受けた患者と比較された。

PRP was shown to improve patient outcome scores at follow-up at 6 and 12 months; however, there was no significant difference seen between patients treated with PRP or hyaluronic acid alone.

PRP(多血小板血漿)は、6ヵ月および12ヵ月のフォローアップで患者の転帰スコアを改善することが示された;しかしながら、PRP(多血小板血漿)またはヒアルロン酸単独で治療した患者の間には、有意差は見られなかった。



◆論文の結論

Following this systematic review, we cannot currently recommend the use of intra-articular injections of PRP for the treatment of hip OA. Given that intra-articular steroid injections are the only such injection recommended by international guidelines for the treatment of hip OA, further studies comparing PRP to steroid would be of benefit to determine the value of PRP injections in hip OA.

このシステマティックレビューによると、股関節OAの治療にPRPの関節内注射を使用することは、現時点では推奨できません。股関節OAの治療において、関節内ステロイド注射が国際的なガイドラインで推奨されている唯一の注射であることを考えると、股関節OAにおけるPRP(多血小板血漿)注射の価値を判断するために、PRP(多血小板血漿)とステロイドを比較するさらなる研究が有益であると思われます。



◆まとめ

上記論文では変形性股関節症の治療におけるPRP(多血小板血漿)注射の有効性を公表済みの前向き研究の文献を検索し、効果を検証しております。

185名の変形性股関節症患者に対して、ヒアルロン酸関節内注射群148名とPRP(多血小板血漿)併用群31名の2群に分けて、WOMACスコアとVASスコアを比較しております。

結果としてPRP(多血小板血漿)は治療から6ヵ月および12ヵ月の際は改善を示していますが、ヒアルロン酸単独で治療した患者との比較では有意差は見られなかったそうです。

上記論文の結果を踏まえると、変形性股関節症に対するPRP(多血小板血漿)療法は効果が得られますが、ヒアルロン酸注射と差がないとのことです。

よって、現時点では変形性股関節症に対するPRP(多血小板血漿)療法はあまり推奨できないと思われます。

上記論文の結果から考えると、多血小板血漿(PRP)療法は、様々な外傷や障害に適応されていますが、変形性股関節症においては、効果は乏しいようです。

今回は、『変形性股関節症患者への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。