こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『半月板断裂後の半月板縫合術と半月板切除術はどちらが膝OAになりやすい?』
について解説させていただきます。
半月板は大腿骨と脛骨の間にあり、膝関節のクッションの役割をする組織とされています。
半月板損傷は若年者のスポーツ外傷や、高齢者の退行変性(老化)による損傷まで幅広い疾患となります。
高齢者に注目すれば、変形性膝関節症例では半月板が脱転(亜脱臼)していたり、損傷していることもあります。
高齢者においては保存療法が選択されることが多いですが、若年者やスポーツ選手においては、半月板縫合術や半月板切除術など手術療法も選択肢になることがあります。
そんな中、2018年に、半月板断裂後の半月板縫合術と半月板切除術はどちらが変形性膝関節症(膝OA)になりやすいかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
◆論文紹介
Osteoarthritis Cartilage (IF: 6.58; Q1)
. 2018 Feb;26(2):195-201.
doi: 10.1016/j.joca.2017.08.020. Epub 2017 Nov 14.
The risk of symptomatic knee osteoarthritis after arthroscopic meniscus repair vs partial meniscectomy vs the general population
関節鏡下半月板修復術と半月板部分切除術後の症候性変形性膝関節症のリスクと一般集団の比較
F Persson 1, A Turkiewicz 2, D Bergkvist 3, P Neuman 4, M Englund 5
Affiliations expand
- PMID: 29146386 DOI: 10.1016/j.joca.2017.08.020
Free article
Abstract
Objective: To compare consultation rate for knee osteoarthritis (OA) after meniscus repair, arthroscopic partial meniscectomy (APM), and in general population, respectively.
概要
目的 半月板修復術、関節鏡下半月板部分切除術(APM)、一般集団のそれぞれにおける変形性膝関節症(OA)の受診率を比較すること。
Method: We identified patients aged 16-45 years having had meniscus surgery due to traumatic meniscus tear in 1998-2010 in southern Sweden by a healthcare register. Patients were followed from surgery until a diagnosis of knee OA, relocation, death, or December 31st, 2015. We studied the consultation rate for knee OA compared to the general population.
方法 1998~2010年にスウェーデン南部で外傷性半月板断裂により半月板手術を受けた16~45歳の患者を医療機関登録により確認した。手術から膝OAの診断、転居、死亡、または2015年12月31日まで患者を追跡調査した。一般人口と比較して、膝OAの受診率を調査した。
Results: We identified 2,487 patients diagnosed with traumatic meniscus tear (mean [SD] age 30.5 [8.6] years); 229 (9.2%) of them had had meniscus repair. The absolute risk of having consulted for knee OA during the study was 17% after APM, 10.0% after meniscus repair, and 2.3% in the general population. Hazard ratio (HR) (95% confidence interval (CI)) for knee OA after repair vs APM was: 0.74 (0.48, 1.15). Excluding cases with OA within 2 years post-surgery, yielded the HR of 0.51 (0.27, 0.96). The consultation rate for knee OA standardized to the general population was then 42 per 10,000 person-years (95% CI 12, 71) in the meniscus repair group, 118 per 10,000 person-years (95% CI 101, 135) after APM, and 20 per 10,000 person-years (95% CI 19.9, 20.1) in the general population.
結果は以下の通り。外傷性半月板断裂と診断された患者2,487名(平均[SD]年齢30.5[8.6]歳)を特定し,そのうち229名(9.2%)が半月板修復術を受けていた。調査期間中に膝関節OAの相談を受けたことのある絶対リスクは、APM後17%、半月板修復後10.0%、一般集団では2.3%であった。修復術後とAPM後の膝OAのハザード比(HR)(95%信頼区間(CI))は、0.74(0.48、1.15)であった。術後2年以内の症例を除くと、HRは0.51(0.27、0.96)であった。一般人口に標準化した膝関節OAの受診率は、半月板修復群では1万人年当たり42人(95%CI 12, 71)、APM後は1万人年当たり118人(95%CI 101, 135)、一般人口では1万人年当たり20人(95%CI 19.9, 20.1) となった。
◆論文の結論
Conclusion: The point estimates suggests about 25-50% lower risk of consultation for knee OA after meniscus repair as compared to APM. However, the consultation rate for knee OA after repair was still at least two times higher as compared to the general population.
結論 点推定では、半月板修復術後の膝OAの受診リスクはAPMに比べ約25~50%低いことが示唆された。しかし、修復後の膝OAの受診率は、一般集団と比較して少なくとも2倍以上高かった。
◆まとめ
上記論文では外傷性半月板断裂により半月板手術(半月板修復術、半月板部分切除術)を受けた229名(16~45歳)と一般集団における変形性膝関節症(膝OA)の受傷率を比較しております。
結果として、変形性膝関節症(膝OA)の受傷率は、半月板修復後が10.0%、半月板切除術後が17%、一般集団では2.3%であったそうです。
一般人口に標準化した変形性膝関節症(膝OA)の移行するリスクは、
半月板修復群では1万人年当たり42人
半月板切除術後は1万人年当たり118人
一般集団では1万人年当たり20人
にあたるとのことです。
上記論文の結果を踏まえると、半月板修復術後の膝OAのリスクは半月板切除術後に比べ約25~50%低いことがわかっております。
しかしながら、半月板修復後の膝OAの受診率は、一般集団と比較して少なくとも2倍以上高いことも事実です。
今回は、『半月板断裂後の半月板縫合術と半月板切除術はどちらが膝OAになりやすい?』
について解説させていただきました。