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『半月板断裂に対して長期成績は半月板切除術と理学療法どちらが有効か?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『半月板断裂に対して長期成績は半月板切除術と理学療法どちらが有効か?』

について解説させていただきます。

 



半月板は大腿骨と脛骨の間にある膝関節のクッションと安定性の役割をする組織です。

半月板損傷は若年者のスポーツ外傷や、高齢者の退行変性(老化)による損傷まで幅広い疾患として知られています。

半月板は加齢とともに変性しますので高齢者の場合、変形性膝関節症の方では半月板が脱転(亜脱臼)していたり、損傷していることもあります。

高齢者においては保存療法が選択されることが多いですが、若年者やスポーツ選手においては、半月板縫合術や半月板切除術(変形性膝関節症に移行しやすい)など手術療法も選択肢になることがあります。

そんな中、2022年に、半月板断裂に対して半月板切除術と理学療法のどちらが有効か5年後の成績について検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところですね。
 



◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

 JAMA Netw Open (IF: 8.48; Q1)

. 2022 Jul 1;5(7):e2220394.

 doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.20394.

Effect of Physical Therapy vs Arthroscopic Partial Meniscectomy in People With Degenerative Meniscal Tears: Five-Year Follow-up of the ESCAPE Randomized Clinical Trial

変性半月板損傷患者における理学療法と関節鏡下半月板部分切除術の効果: ESCAPE無作為化臨床試験の5年後の追跡調査

Julia C A Noorduyn 1 2Victor A van de Graaf 1 3Nienke W Willigenburg 1Gwendolyne G M Scholten-Peeters 2Esther J Kret 1Rogier A van Dijk 4Rachelle Buchbinder 5Gillian A Hawker 6Michel W Coppieters 2 7Rudolf W Poolman 1 8ESCAPE Research Group

Affiliations expand

Abstract

Importance: There is a paucity of high-quality evidence about the long-term effects (ie, 3-5 years and beyond) of arthroscopic partial meniscectomy vs exercise-based physical therapy for patients with degenerative meniscal tears.

概要

重要なこと 変性半月板断裂の患者に対する関節鏡下半月板部分切除術と運動ベースの理学療法の長期効果(つまり、3~5年以降)に関する質の高いエビデンスが少ない。

Objectives: To compare the 5-year effectiveness of arthroscopic partial meniscectomy and exercise-based physical therapy on patient-reported knee function and progression of knee osteoarthritis in patients with a degenerative meniscal tear.

目的 変性性半月板損傷患者において、患者報告による膝機能および変形性膝関節症の進行に対する関節鏡下半月板部分切除術と運動療法による理学療法の5年間の有効性を比較すること。

Design, setting, and participants: A noninferiority, multicenter randomized clinical trial was conducted in the orthopedic departments of 9 hospitals in the Netherlands. A total of 321 patients aged 45 to 70 years with a degenerative meniscal tear participated. Data collection took place between July 12, 2013, and December 4, 2020.

デザイン、設定、参加者。オランダの9病院の整形外科において、非劣性多施設無作為化臨床試験が実施された。45歳~70歳の退行性半月板損傷患者321名が参加した。データ収集は 2013 年 7 月 12 日から 2020 年 12 月 4 日の間に行われた。

Interventions: Patients were randomly allocated to arthroscopic partial meniscectomy or 16 sessions of exercise-based physical therapy.

介入を行った。患者を関節鏡下半月板部分切除術または16セッションの運動ベースの理学療法に無作為に割付けた。

Main outcomes and measures: The primary outcome was patient-reported knee function (International Knee Documentation Committee Subjective Knee Form (range, 0 [worst] to 100 [best]) during 5 years of follow-up based on the intention-to-treat principle, with a noninferiority threshold of 11 points. The secondary outcome was progression in knee osteoarthritis shown on radiographic images in both treatment groups.

主なアウトカムと測定法 主要評価項目は,intention-to-treat原則に基づき,非劣性閾値を11点とし,5年間の追跡期間における患者報告式の膝機能(国際膝関節文献委員会主観的膝フォーム(範囲,0[最悪]~100[最高]))であった.副次的アウトカムは、両治療群におけるX線画像に示される変形性膝関節症の進行とした。

Results: Of 321 patients (mean [SD] age, 58 [6.6] years; 161 women [50.2%]), 278 patients (87.1%) completed the 5-year follow-up with a mean follow-up time of 61.8 months (range, 58.8-69.5 months). From baseline to 5-year follow-up, the mean (SD) improvement was 29.6 (18.7) points in the surgery group and 25.1 (17.8) points in the physical therapy group. The crude between-group difference was 3.5 points (95% CI, 0.7-6.3 points; P < .001 for noninferiority). The 95% CI did not exceed the noninferiority threshold of 11 points. Comparable rates of progression of radiographic-demonstrated knee osteoarthritis were noted between both treatments.

結果 321例(平均[SD]年齢58[6.6]歳、女性161例[50.2%])のうち、278例(87.1%)が5年間の追跡調査を完了し、平均追跡期間は61.8カ月(範囲、58.8~69.5カ月)であった。ベースラインから5年後のフォローアップまでの平均(SD)改善度は、手術群で29.6(18.7)点、理学療法群で25.1(17.8)点であった。粗い群間差は3.5ポイント(95%CI、0.7~6.3ポイント、非劣性のP < 0.001)であった。95%CIは非劣性の閾値である11ポイントを超えなかった.X線写真で証明された変形性膝関節症の進行率は、両治療法で同等であった。

 



◆論文の結論

Conclusions and relevance: In this noninferiority randomized clinical trial after 5 years, exercise-based physical therapy remained noninferior to arthroscopic partial meniscectomy for patient-reported knee function. Physical therapy should therefore be the preferred treatment over surgery for degenerative meniscal tears. These results can assist in the development and updating of current guideline recommendations about treatment for patients with a degenerative meniscal tear.

結論と妥当性 5年後のこの非劣性無作為化臨床試験において、運動ベースの理学療法は、患者報告による膝の機能に関して、関節鏡下半月板部分切除術に対して非劣性を維持した。したがって、理学療法は、退行性半月板断裂に対する手術よりも好ましい治療法である。これらの結果は、退行性半月板損傷患者の治療に関する現行のガイドラインの推奨事項の作成および更新に役立つものである。

 



◆まとめ

上記論文ではオランダの9病院での退行性半月板損傷患者321例(男性160例、女性161例、平均58歳、45~70歳)を関節鏡下半月板部分切除術群と理学療法群の2群に振り分け、5年間追跡し、治療効果について検証しております。

評価項目は膝関節機能評価とX線画像による変形性膝関節症の進行とし、5年間追跡しているようです。

結果として、321例中278例(87.1%)が5年間の追跡調査を完了し、平均追跡期間は61.8カ月であったそうです。

ベースラインから5年後の平均改善度は手術群で29.6点、理学療法群で25.1点であったそうで手術群の方がわずかに高いようです。

X線写真で証明された変形性膝関節症の進行率は、両治療法で同等であったとのことです。

上記論文の結果を踏まえると、退行性半月板損傷患者に対しての5年の長期成績は、関節鏡下半月板部分切除術の方が理学療法よりもやや改善度が高いようですが、成績の差はほとんどないようです。

理学療法に関しては手術と違いリスクはほとんどありませんので、長期成績に関しても有効な手段と考えられますね。

今回は、『半月板断裂に対して長期成績は半月板切除術と理学療法どちらが有効か?』

について解説させていただきました。