スポンサーリンク

『半月板断裂にヒアルロン酸注射は効果があるのか?』

リハビリスタッフ向け
スポンサーリンク

こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『半月板断裂にヒアルロン酸注射は効果があるのか?』

について解説させていただきます。



半月板は大腿骨と脛骨の間にある膝関節のクッションと安定性の役割をする組織です。

半月板損傷は若年者のスポーツ外傷や、高齢者の退行変性(老化)による損傷まで幅広い疾患として知られています。

半月板は加齢とともに変性しますので高齢者の場合、変形性膝関節症の方では半月板が脱転(亜脱臼)したり、損傷していることもあります。

高齢者においては保存療法が選択されることが多いですが、若年者やスポーツ選手においては、半月板縫合術や半月板切除術(変形性膝関節症に移行しやすい)など手術療法も選択肢になることがあります。

そんな中、2021年に、半月板断裂に対してのヒアルロン酸注射は効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところです。



◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

 J Back Musculoskelet Rehabil (IF: 1.4; Q4)

. 2021;34(5):767-774.

 doi: 10.3233/BMR-200284.

Comparison of physical therapy and arthroscopic partial meniscectomy treatments in degenerative meniscus tears and the effect of combined hyaluronic acid injection with these treatments: A randomized clinical trial

変性性半月板断裂における理学療法と関節鏡下半月板部分切除術の治療法の比較と、これらの治療法にヒアルロン酸注入を併用した場合の効果について: 無作為化臨床試験

Betül Başar 1Gökhan Başar 2Mehmet Özbey Büyükkuşçu 3Hakan Başar 3

Affiliations expand

Abstract

Background: Symptomatic degenerative meniscus tears are common in middle and old age. Arthroscopic partial meniscectomy (APM), physical therapy (PT) and hyaluronic acid injection (HAI) are the most commonly used treatment options.

要旨

背景 症候性変性半月板裂傷は中高年に多くみられる。治療法としては,関節鏡下半月板切除術(APM),理学療法(PT),ヒアルロン酸注入(HAI)がよく用いられている.

Objectives: The aim of our study is to compare the effectiveness of APM and PT in degenerative meniscus tears and to investigate the effect of HAI with a prospective, randomized, single-blind study.

目的 本研究の目的は、変性半月板断裂に対する APM と PT の有効性を比較し、HAI の効果を前向き無作為化単盲検試験で検討することである。

Methods: The study included 192 patients with symptomatic degenerative meniscus tears. The patients were randomly divided into the four groups. The first group consisted of patients who underwent APM, the second group received HAI with APM, the third group received PT, and the fourth group received HAI with PT. Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC), Visual Analog Scale (VAS) scores, and range of motion (ROM) values were used for evaluation.

方法 症候性変性性半月板断裂の患者192名を対象とした。患者は無作為に4群に分けられた。第1群はAPMを受けた患者、第2群はAPMとともにHAIを受けた患者、第3群はPTを受けた患者、第4群はPTとともにHAIを受けた患者で構成された。評価にはWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)、Visual Analog Scale(VAS)スコア、Range of Motion(ROM)値を用いた。

Results: There was no difference between four groups according to age, gender, BMI, affected side, grade of osteoarthritis. In the 4 groups, WOMAC and VAS results at the 2nd and 6th months were better than pre-treatment. There was no difference between the groups in terms of WOMAC and VAS. In terms of ROM, the results were found better in PT group (Group 3, Group 4) at the 2nd and 6th months. However, the results were found worse in APM group (Group 1, Group 2). In addition, it was found that HAI applied with APM and PT had no effect on VAS, WOMAC, and ROM. It was determined that the increase of knee osteoarthritis negatively affected both the results of APM treatment and PT. VAS, WOMAC, and ROM results were found worse in patients with stage 3 osteoarthritis than grade 1 and 2, but there was no difference between grade 1 and 2.

結果 年齢、性別、BMI、患側、変形性関節症のグレードによる4群間の差はなかった。2ヶ月目と6ヶ月目のWOMACとVASの結果は、4群とも治療前より良好であった。WOMACとVASに関しては、群間差はなかった。ROMについては,PT群(第3群,第4群)で2ヶ月目と6ヶ月目に良好な結果が得られた.しかし、APM群(Group1, Group2)では、より悪い結果が得られた。また、APMとPTを併用したHAIは、VAS、WOMAC、ROMに影響を与えないことがわかった。変形性膝関節症の増加は、APM治療とPTの両方の結果にマイナスの影響を与えると判断された。VAS、WOMAC、ROMの結果は、変形性膝関節症ステージ3ではグレード1、2よりも悪化していたが、グレード1と2の間には差がなかった。



◆論文の結論

Conclusions: APM and PT give good results in terms of pain and functional results. However, ROM limitation develops after APM. Conversely, there is an increase in ROM after PT. Administration of HAI with these treatments has no effect on the results. PT is an easily applicable noninvasive method. Adding HAI to the treatment has no effect on the results and increases the cost.

結論 APMとPTは痛みと機能的な結果において良好な結果をもたらす。しかし、APM後にはROM制限が生じる。逆に、PT後はROMの増加が見られる。これらの治療と同時にHAIを投与しても、結果に影響はない。PTは簡単に適用できる非侵襲的な方法である。HAIを追加しても治療効果に影響はなく、コストが増加する。



◆まとめ

上記論文では症候性の変性半月板断裂患者192名を4群に分けて関節鏡下半月板切除術、理学療法、ヒアルロン酸注射の効果について検証しております。

第1群:関節鏡下半月板切除術群

第2群:関節鏡下半月板切除術+ヒアルロン酸注入群

第3群:理学療法群

第4群:理学療法+ヒアルロン酸注入群

2か月目および6か月目にWOMAC(膝関節機能スコア)、VAS(疼痛)、ROM(関節可動域)を評価しております。

結果としては

4群ともにWOMACとVASは治療前よりは良好であったそうです。

4群間の比較においてはWOMAC、VASは差がなかったようです

2ヶ月目と6ヶ月目のROMについては、理学療法群(第3群,第4群)で良好な結果が得られたが、関節鏡下半月板切除術群(第1群、第2群)では、悪い結果になったとのことです。

また、ヒアルロン酸注射群(第2群、第4群)は、VAS、WOMAC、ROMに影響を与えないそうです。

上記論文の結果を踏まえると、関節鏡下半月板切除術および理学療法は機能的に良好な結果であることがわかります。

ただし、関節鏡下半月板切除術にはROM制限が生じやすいようです。

また、ヒアルロン酸注射においては関節鏡下半月板切除術に併用しても、理学療法に併用しても効果は乏しいようです。

今回は、『半月板断裂にヒアルロン酸注射は効果があるのか?』

について解説させていただきました。