こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『ランナー膝(腸脛靭帯炎)は手術と体外衝撃波のどちらが有効か?』
について解説させていただきます。
ランナー膝は通称:腸脛靭帯炎と言われており、腸脛靭帯に対するオーバーユース(過用)であるとされています。
腸脛靭帯Iliotibial band (ITB)は大腿外側組織である大腿筋膜張筋、大殿筋、中殿筋、外側広筋の筋膜が合流し、分厚くなった組織です。
腸脛靭帯は大殿筋、大腿筋膜張筋から起始し、膝に近い脛骨前外側部の隆起であるGerdy結節に停止します。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)は主にランニングによる膝関節周辺傷害のひとつです。
膝関節の屈伸を繰り返すことで、腸脛靭帯が大腿骨外顆と接触することで滑膜炎(炎症)を起こし、疼痛が発生するとされています。
海外では腸脛靭帯症候群Iliotibial band syndrome (ITBS)と表現されることが多いようです。
マラソンやバスケットボール、自転車競技等のアスリートに発生しやすいです。
大腿骨外顆での圧痛やgrasping test(大腿骨外顆部で腸脛靭帯を圧迫し膝を90°屈曲位から伸展させる)、Ober testで疼痛が誘発されることが多いです。
『Oberテスト変法の方法と有用性』https://undoukirehazemi.com/%e3%80%8eobel%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e5%a4%89%e6%b3%95%e3%81%ae%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a8%e6%9c%89%e7%94%a8%e6%80%a7%e3%80%8f/
外因性の要因として走行距離や頻度の急激な増加、踵の外側が摩耗した靴の使用などが報告されています
内因性の要因として内反膝、回外足、大腿筋膜張筋の短縮や中殿筋筋力不足などが報告されています。
そんな中、2016年に、ランナー膝(腸脛靭帯炎)に対して、手術と体外衝撃波のどちらが有効かを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆体外衝撃波治療(shock wave)
体外衝撃波治療(shock wave)は衝撃波を患部に照射する新しい整形外科の治療法です。腱付着部炎などの有痛性疾患の痛みをとるために応用されています。
1回の治療時間は約10分で、一定の期間をあけて、複数回照射を実施します。
体外衝撃波治療は集束型衝撃波と拡散型圧力波の2種類あり、集束型の方が治療効果は高いですが、治療者は医師に限定されます。拡散型については収束型と比較すると効果は少し劣りますが、医師の指示の下、理学療法士が治療を実施することが可能です。
日本では集束型においては難治性足底腱膜炎に対して、保険が適応されています。(2022年7月現在)
拡散型については消炎鎮痛の分類で保険適応されています。
よって、日本での体外衝撃波治療(shock wave)は、自費診療で行っている診療機関も多くあります。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Back Musculoskelet Rehabil (IF: 1.4; Q4)
. 2016;29(1):161-70.
doi: 10.3233/BMR-150612.
Radial extracorporeal shockwave therapy compared with manual therapy in runners with iliotibial band syndrome
腸脛靱帯症候群のランナーにおける体外衝撃波療法と手技療法との比較
Kristoffer Weckström 1, Johan Söderström 2
Affiliations expand
- PMID: 26406193 DOI: 10.3233/BMR-150612
Abstract
Background: Although different conservative treatment options have been proposed, there is a paucity of research on the management of iliotibial band syndrome (ITBS) in runners.
概要
背景 様々な保存的治療法が提案されているが、ランナーにおける腸脛靭帯症候群(ITBS)の管理に関する研究は少ない。
Objective: To compare two treatment protocols for ITBS; radial shockwave therapy (RSWT) and manual therapy (ManT). Both therapies were administered concurrently with an exercise rehabilitation programme.
目的 ITBSに対する2つの治療法、体外衝撃波療法(RSWT)と手技療法(ManT)を比較すること。両療法は、運動リハビリテーションプログラムと同時に実施された。
Methods: The study was designed as a randomised controlled clinical trial. Twenty-four runners with ITBS received 3 treatments at weekly intervals of either RSWT (n= 11) or ManT (n= 13). In addition, all subjects followed an exercise programme for at least 4 weeks. Main outcome measures were established as mean differences (MD) in pain during treadmill running.
方法 本研究は、無作為化対照臨床試験としてデザインされた。ITBSを持つ24人のランナーは、1週間間隔で3回、RSWT(n=11)またはManT(n=13)のいずれかの治療を受けた。さらに、すべての被験者は少なくとも4週間、運動プログラムに従った。主なアウトカム指標は、トレッドミル走行時の痛みの平均差(MD)として設定された。
Results: There was no significant difference in pain reduction between the two interventions at 4 weeks (p= 0.796), and 8 weeks (p= 0.155) follow-up. Thus, both groups reported similar magnitude of reduced pain during the intervention (p= 0.864). The shockwave therapy (SWT) group reported a 51% decrease in pain at week 4 (p= 0.022), and a 75% decrease at week 8 (p= 0.004). The ManT group showed a 61% reduction in pain at week 4 (p= 0.059), and a 56% reduction at week 8 (p= 0.067).
結果 4週間後(p=0.796)、8週間後(p=0.155)には、2つの介入方法の間で痛みの減少に有意差はなかった。したがって、両群とも介入中の痛みの減少の大きさは同程度であったと報告された(p= 0.864)。衝撃波治療(SWT)群は、4週目に51%の痛みの減少(p= 0.022)、8週目に75%の痛みの減少(p= 0.004)を報告した。ManT群では、4週目に61%の痛みの減少(p= 0.059)、8週目に56%の痛みの減少(p= 0.067)を示した。
◆論文の結論
Conclusions: RSWT and ManT were equally effective in reducing pain in subjects with ITBS.
結論 RSWTとManTは、ITBSを持つ被験者の痛みを軽減するのに等しく効果的であった。
◆まとめ
上記論文ではランナー膝24名に対して、体外衝撃波群11名、手術群13名の22群に振り分け、どちらの治療が有効かを検証しています。
対象者は体外衝撃波を1週間間隔で3回受けるか、手術を受けています。
すべての対象者は4週間の運動プログラムを実施し、トレッドミル走行時の痛みを評価項目としています。
結果として、両群ともに4週間後、8週間後は痛みが減少していますが両群間に有意差はなかったようです。
痛みの減少率は体外衝撃波の方が高かったようです。
上記論文の結果を踏まえると、体外衝撃波および手術のどちらもランナー膝(腸脛靭帯炎)症状に効果があり、その差はないようです。よって、まずは体外衝撃波など保存治療を受けて、難治性の場合には手術なども検討していくとよいのではないかと思いました。
今回は、『ランナー膝(腸脛靭帯炎)は手術と体外衝撃波のどちらが有効か?』
について解説させていただきました。