こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『テニス肘(上腕骨外側上顆炎)への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は中年以降のテニスプレイヤーに生じやすいことから、通称:テニス肘と称されています。
(Nirschl 1979)はテニス肘を短橈側手根伸筋(ECRB)起始部の腱付着部症としており、
(Kraushaarら 1999)は腱起始部の変性と使い過ぎによる腱の微小断裂であると報告しております。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は通常 1年以内に 80%~ 90%は自然治癒するとも報告されております。(Nynke Smidt:THE Lancet.2002)
一般的な治療は、症状を誘発するような動作を控えるようにし、短橈側手根伸筋(ECRB)に負担をかけないよう、物を持つ際には、回外位にするなどのADL指導を行ったりします。
また、手関節伸筋群のストレッチやステロイドの局所注射により、多くの症例は改善します。
中には症状が長期に及んでしまい、手術の適応となる症例も存在します。
◆テニス肘の診断
テニス肘の診断には以下の3つの整形外科的テストが用いられます。
●Thomsenテスト:患者に対して肘関節伸展位で、抵抗下にて手関節を背屈してもらう
●Chairテスト:患者に肘を伸展したままで椅子を持ち上げてもらう
●中指伸展テスト:検者が中指を上から押さえるのに抵抗して、患者に肘を伸展したまま、中指を伸展してもらう。
そんな中、2014年に、 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法が効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。
PRP療法とは自分の血液を採取し、特殊な技術を駆使して、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。そして、自分の傷んでいる部位に注射することで早期治癒を図ります。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Am J Sports Med (IF: 6.2; Q1)
. 2014 Feb;42(2):463-71.
doi: 10.1177/0363546513494359. Epub 2013 Jul 3.
Efficacy of platelet-rich plasma for chronic tennis elbow: a double-blind, prospective, multicenter, randomized controlled trial of 230 patients
慢性テニス肘に対する多血小板血漿の有効性:230名の患者を対象とした二重盲検前向き多施設ランダム化比較試験
Allan K Mishra 1, Nebojsa V Skrepnik, Scott G Edwards, Grant L Jones, Steven Sampson, Doug A Vermillion, Matthew L Ramsey, David C Karli, Arthur C Rettig
Affiliations expand
- PMID: 23825183 DOI: 10.1177/0363546513494359
Abstract
Background: Elbow tenderness and pain with resisted wrist extension are common manifestations of lateral epicondylar tendinopathy, also known as tennis elbow. Previous studies have suggested platelet-rich plasma (PRP) to be a safe and effective therapy for tennis elbow.
概要
背景 肘の圧痛と手関節伸展時の疼痛は、テニス肘として知られる外側上顆腱障害によく見られる症状である。これまでの研究で、多血小板血漿(PRP)はテニス肘の安全かつ効果的な治療法であることが示唆されている。
Purpose: To evaluate the clinical value of tendon needling with PRP in patients with chronic tennis elbow compared with an active control group.
目的:慢性テニス肘患者におけるPRPを用いた腱針治療の臨床的価値を、積極的対照群と比較して評価すること。
Study design: Randomized controlled trial; Level of evidence, 2.
研究デザイン 無作為化比較試験;エビデンスレベル、2。
Methods: A total of 230 patients with chronic lateral epicondylar tendinopathy were treated at 12 centers over 5 years. All patients had at least 3 months of symptoms and had failed conventional therapy. There were no differences in patients randomized to receive PRP (n = 116) or active controls (n = 114). The PRP was prepared from venous whole blood at the point of care and contained both concentrated platelets and leukocytes. After receiving a local anesthetic, all patients had their extensor tendons needled with or without PRP. Patients and investigators remained blinded to the treatment group throughout the study. A successful outcome was defined as 25% or greater improvement on the visual analog scale for pain.
方法 慢性外側上顆腱障害患者230名を対象に、12施設で5年間にわたり治療を行った。すべての患者は、少なくとも3ヶ月の症状があり、従来の治療が無効であった。PRP投与に無作為化された患者(n = 116)とアクティブコントロール(n = 114)には差がなかった。PRPは、治療の時点で静脈全血から調製され、濃縮された血小板と白血球の両方が含まれていた。局所麻酔を受けた後、すべての患者は、PRPを使用するかしないかで伸筋腱に針を刺された。患者および研究者は、研究期間中、治療群について盲検のままであった。成功の定義は、痛みのVisual Analog Scaleで25%以上の改善であった。
Results: Patient outcomes were followed for up to 24 weeks. At 12 weeks (n = 192), the PRP-treated patients reported an improvement of 55.1% in their pain scores compared with 47.4% in the active control group (P = .163). At 24 weeks (n = 119), the PRP-treated patients reported an improvement of 71.5% in their pain scores compared with 56.1% in the control group (P = .019). The percentage of patients reporting significant elbow tenderness at 12 weeks was 37.4% in the PRP group versus 48.4% in the control group (P = .143). Success rates for patients at 12 weeks were 75.2% in the PRP group versus 65.9% in the control group (P = .104). At 24 weeks, 29.1% of the PRP-treated patients reported significant elbow tenderness versus 54.0% in the control group (P = .009). Success rates for patients with 24 weeks of follow-up were 83.9% in the PRP group compared with 68.3% in the control group (P = .037). No significant complications occurred in either group.
結果 患者の転帰は、最大24週間まで追跡された。12週間後(n = 192)、PRP治療群では痛みのスコアが55.1%改善したのに対し、アクティブコントロール群では47.4%だった(P = 0.163)。24週目には(n = 119)、PRP治療を受けた患者は、コントロールグループの56.1%と比較して、71.5%の疼痛スコアの改善を報告した(P = 0.019)。12週目に有意な肘の圧痛を報告した患者の割合は、PRP群で37.4%、対照群で48.4%であった(P = 0.143)。12週目の患者の成功率は、PRP群で75.2%、対照群で65.9%であった(P = 0.104)。24週目の時点で、PRP治療を受けた患者の29.1%が有意な肘の圧痛を報告したのに対し、対照群では54.0%であった(P = 0.009)。24週間の追跡調査を行った患者の成功率は、PRP群で83.9%であったのに対し、対照群では68.3%であった(P = .037)。両群とも重大な合併症は発生しなかった。
◆論文の結論
Conclusion: No significant differences were found at 12 weeks in this study. At 24 weeks, however, clinically meaningful improvements were found in patients treated with leukocyte-enriched PRP compared with an active control group.
結論 本試験では、12 週間の時点で有意差は認められなかった。しかし、24週目には、積極的な対照群と比較して、白血球濃縮PRPで治療した患者において、臨床的に意味のある改善が認められた。
◆まとめ
上記論文では慢性外側上顆腱障害(テニス肘)患者230名を対象に、PRP療法群116名と対照群114名でPRP療法の治療効果を検討しています。
治療効果ありの判定は、痛みのVisual Analog Scaleで25%以上の改善としています。
治療12週目ではPRP療法群は痛みのスコアが55.1%改善したのに対し、対照群では47.4%だったそうです。
また、肘の圧痛があった症例は、PRP群で37.4%、対照群で48.4%であったとのことです。
治療効果があった者は、PRP群で75.2%、対照群で65.9%であったそうです。
しかしながら、治療12週目では、これらの数値に有意差はなかったようです。
治療24週目では、PRP療法群71.5%疼痛スコアが改善し、対照群は56.1%であったそうです。
肘の圧痛があった症例は、PRP群で29.1%、対照群で54.0%であったとのことです。
治療効果があった者は、PRP群で83.9%、対照群で68.3%であったそうです。
なおかつ、治療24週目のこれらの数値は有意差を認めていたようです。
今回の論文から、12 週間の時点で有意差は認められせんでしたが、24週目には、対照群と比較して、PRP療法で治療した患者の治療成績は良好であったそうです。
現時点(2022年1月)でPRP療法は自費診療ですので少し治療費は高くなりますが、テニス肘症状にとっては有効な治療方法の一つと言えそうです。
今回は、『テニス肘(上腕骨外側上顆炎)への多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。