こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『橈骨遠位端骨折に対するモビライゼーションの効果は?』
について解説させていただきます。
橈骨遠位端骨折は転倒して手をついた際に発生することが多く、高齢者の4大骨折のうちの一つとされています。
超高齢社会に突入する日本においては、今後ますます増加傾向になることが予測されます。
また、橈骨遠位端骨折は以下に示す条件において、発生リスクが高いと報告されています。
・女性
・グルココルチコイド使用歴あり
・骨粗鬆症や骨量減少
・血清ビタミンD低値
・中手骨における骨皮質の多孔性や橈骨遠位端部の骨微細構造の劣化
・片脚起立時間15秒未満
・氷晶雨や路面の凍結、低気温といった気象
そんな中、2020年に、橈骨遠位端骨折の保存療法においてマリガンコンセプトのmobilization with movement (MWM)というモビライゼーションの効果を検討した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところですね。
●mobilization with movement (MWM)
徒手療法で著名なMulliganのConceptに他動的なモビライゼーションに患者自身の自動運動を組み合わせるmobilization with movement (MWM)という主義が存在しますす。
本記事においては「自動運動を伴うモビライゼーション」と訳させていただきます。
関節周囲の筋群が繰り返し収縮させることで、関節運動の軌道が正常に戻り、神経筋協調性も改善すると推測されています。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Physiother (IF: 7; Q1)
. 2020 Apr;66(2):105-112.
doi: 10.1016/j.jphys.2020.03.010. Epub 2020 Apr 11.
Adding mobilisation with movement to exercise and advice hastens the improvement in range, pain and function after non-operative cast immobilisation for distal radius fracture: a multicentre, randomised trial
運動とアドバイスに自動運動を伴うモビライゼーションを加えることで、橈骨遠位端骨折に対する非手術的ギプス固定後の範囲、疼痛、機能の改善を早める:多施設共同無作為化試験
Susan A Reid 1, Josef M Andersen 2, Bill Vicenzino 3
Affiliations expand
- PMID: 32291223 DOI: 10.1016/j.jphys.2020.03.010
Abstract
Question: Does adding mobilisation with movement (MWM) to usual care (ie, exercises plus advice) improve outcomes after immobilisation for a distal radius fracture?
概要
質問 橈骨遠位端骨折の固定後の転帰は、通常のケア(すなわち、運動とアドバイス)に加えて、自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)を追加することで改善されるか?
Design: A prospective, multicentre, randomised, clinical trial with concealed allocation, blinding and intention-to-treat analysis.
デザイン。プロスペクティブな多施設共同無作為化臨床試験で、割り付け、盲検化、intention-to-treat解析が行われた。
Participants: Sixty-seven adults (76% female, mean age 60 years) treated with casting after distal radius fracture.
参加者 橈骨遠位端骨折でギプス固定を行った成人67名(女性76%、平均年齢60歳)。
Intervention: The control group received exercises and advice. The experimental group received the same exercises and advice, plus supination and wrist extension MWM.
介入。対照群にはエクササイズとアドバイスが行われた。実験群には、同じエクササイズとアドバイスに加え、回外と手関節伸展の自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)が行われた。
Outcome measures: The primary outcome was forearm supination at 4 weeks (immediately post-intervention). Secondary outcomes included wrist extension, flexion, pronation, grip strength, QuickDASH (Disabilities of Arm, Shoulder and Hand), Patient-Rated Wrist Evaluation (PRWE) and global rating of change. Follow-up time points were 4 and 12 weeks, with patient-rated measures at 26 and 52 weeks.
アウトカム評価 主要評価項目は、4週間後(介入直後)の前腕の回外支持であった。副次的アウトカムには、手関節伸展、屈曲、回内、握力、QuickDASH(腕、肩、手の障害)、患者評価手関節評価(PRWE)、変化に対する全体評価などがあった。フォローアップ期間は4週と12週で、26週と52週には患者評価による測定を行った。
Results: Compared with the control group, supination was greater in the experimental group by 12 deg (95% CI 5 to 20) at 4 weeks and 8 deg (95% CI 1 to 15) at 12 weeks. Various secondary outcomes were better in the experimental group at 4 weeks: extension (14 deg, 95% CI 7 to 20), flexion (9 deg, 95% CI 4 to 15), QuickDASH (-11, 95% CI -18 to -3) and PRWE (-13, 95% CI -23 to -4). Benefits were still evident at 12 weeks for supination, extension, flexion and QuickDASH. The experimental group were more likely to rate their global change as ‘improved’ (risk difference 22%, 95% CI 5 to 39). There were no clear benefits in any of the participant-rated measures at 26 and 52 weeks, and no adverse effects.
結果 対照群に比べ、実験群では回外が4週目に12°(95%CI 5~20)、12週目に8°(95%CI 1~15)大きくなっていた。4週間後の様々な副次的成果は、実験群で良好であった:伸展(14度、95%CI 7~20)、屈曲(9度、95%CI 4~15)、QuickDASH(-11、95%CI -18~-3)、PRWE(-13、95%CI -23~-4)。12週間後にも、回外、伸展、屈曲、QuickDASHで効果が見られた。実験群では、グローバルな変化を「改善」と評価する傾向が強かった(リスク差22%、95%CI 5~39)。26週と52週では、参加者が評価したどの指標にも明確な利点はなく、有害作用もなかった。
◆論文の結論
Conclusion: Adding MWM to exercise and advice gives a faster and greater improvement in motion impairments for non-operative management of distal radius fracture.
結論 橈骨遠位端骨折の非手術的治療において、運動とアドバイスに自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)を追加することで、運動障害の改善がより早く、より大きくなることが示された。
◆まとめ
上記論文では橈骨遠位端骨折の保存療法でギプス固定を行った成人67名(女性76%、平均年齢60歳)を対象に自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)の効果を検証しております。
対象者を手関節回外、伸展の自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)が行われたモビライゼーション群と対照群の2群に分けています。
評価は介入4週後、12週後、26週後、52週後の回外支持、手関節伸展、屈曲、回内の関節可動域、握力、機能スコアとしてQuickDASH(Disabilities of Arm, Shoulder and Hand)、Patient-Rated Wrist Evaluation (PRWE)を測定しております。
結果として対処群に比べモビライゼーション群では、介入4週目の伸展、屈曲、回外の関節可動域、QuickDASH、PRWEが良好であったそうです。
12週間後にも、モビライゼーション群において、回外、伸展、屈曲の関節可動域とQuickDASHの成績が良好であったとされています。
上記論文の結果を踏まえると、橈骨遠位端骨折の保存療法においては、通常の運動療法に加えて自動運動を伴うモビライゼーション(MWM)を追加することで、機能改善がより良好になる可能性が考えられますね。
やはり、知識だけでなく、モビライゼーション等のスキルも探求していくべきかと思われます。
今回は、『橈骨遠位端骨折に対するモビライゼーションの効果は?』
について解説させていただきました。