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『頚部痛に対する胸椎セルフモビライゼーションの効果は?』

リハビリスタッフ向け
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こんにちは!

運動器専門のリハビリスタッフです!!

いつもお世話になります。

今回は、『頚部痛に対する胸椎セルフモビライゼーションの効果は?』について解説させていただきます。

 



頚部痛は頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、頚部脊柱管狭窄症、不良姿勢からくる頚部痛、変形性頚椎症など原因が様々です。

関節症の理論の中に、Joint-by-Joint theoryという理論があります。

Joint-by-Joint theoryは可動性が必要な関節と安定性が必要な関節は隣同士に配列されているというセオリーです。

可動性が必要な胸郭が拘縮し、可動性が失われてしまいますと、近隣関節である頚部、肩関節、腰椎に負担がきて故障してしまいます。

ですので頚椎、肩関節、腰椎に障害がある時、もしくは障害予防の際に胸郭へのアプローチは重要になります。

胸郭は鎖骨、肋骨、胸骨、胸椎、肩甲骨で構成されており、60歳以降から柔軟性が失われていきます。

よって頚部痛に対して、胸郭のモビライゼーションは有効であること可能性が高いです。

そんな中、2019年に、頚部痛をもつ患者への胸椎のセルフモビライゼーションの即時効果を検証した論文が海外で報告されております。

この論文の検証結果が気になるところです。

 



◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

 J Bodyw Mov Ther

. 2019 Apr;23(2):417-424.

 doi: 10.1016/j.jbmt.2018.05.008. Epub 2018 Jun 1.

Immediate effects of thoracic spine self-mobilization in patients with mechanical neck pain: A randomized controlled trial

頚部痛を持つ患者における胸椎のセルフモビライゼーションの即時効果。無作為化比較試験

Koji Nakamaru 1Junya Aizawa 2Keizo Kawarada 3Yukari Uemura 4Takayuki Koyama 5Osamu Nitta 6

Abstract

Objectives: To investigate the immediate effects of thoracic spine self-mobilization in patients with mechanical neck pain.

目的は、以下の通りです。頸部痛患者におけるセルフモビライゼーションの即効性を検討すること。

Study design: Randomized, controlled trial.

研究デザイン 無作為化比較試験。

Background: Thoracic spine self-mobilization is performed after thoracic spine thrust manipulation to augment and maintain its effects. To the best of our knowledge, no study has investigated the effects of thoracic spine self-mobilization alone in individuals with mechanical neck pain. The purpose of this randomized, controlled trial was to evaluate the immediate effects of thoracic spine self-mobilization alone without any other intervention on disability, pain, and cervical range of motion in patients with mechanical neck pain.

背景 胸椎モビライゼーションは、胸椎マニピュレーションの後に、その効果を増強・維持するために行われる。我々の知る限りでは、頚部痛を持つ人を対象に、胸椎のセルフモビライゼーションのみの効果を調査した研究はない。この無作為化比較試験の目的は、頚部痛を持つ患者において、他の介入をせずに胸椎のセルフモビライゼーションのみを行うことが、障害、痛み、頸椎の可動域に及ぼす即時的な効果を評価することであった。

Methods: Fifty-two patients (39 females and 13 males) with mechanical neck pain were randomly allocated to either a thoracic spine self-mobilization group that was performing a thoracic spine active flexion and extension activity using two tennis balls fixed by athletic tape or a placebo thoracic spine self-mobilization group. Outcome measures were collected at pre-intervention and immediately after intervention, including the Neck Disability Index, visual analogue scale, and active cervical range of motion (ROM). The immediate effect of the intervention was analyzed using two-way repeated measures analysis of variance (ANOVA). If interactions were found, a simple main effect test was performed to compare the pre-post intra-group results.

方法は以下の通り。頚部痛を有する52名の患者(女性39名、男性13名)を、アスレチックテープで固定した2個のテニスボールを用いて胸椎の自動屈曲・伸展活動を行う胸椎セルフモビライゼーション群と、プラセボの胸椎セルフモビライゼーション群のいずれかに無作為に割り付けた。アウトカム指標は、介入前と介入直後に、Neck Disability Index(頚椎機能スコア)、visual analogue scale(VAS)、頸部の自動可動域(ROM)などを収集しました。介入の即時効果については、二元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した。交互作用が認められた場合は、単純な主効果検定を行い、前後のグループ内の結果を比較した。

Results: The results of two-way repeated measures ANOVA indicated that the main effect of time was significant (p < 0.05) for all measurement outcomes. The main effect of group was not significant for all measurement outcomes (p > 0.05). The group × time interactions for cervical flexion active ROM (p = 0.005) and cervical extension active ROM (p = 0.036) were significant. The tests of simple main effect in cervical flexion active ROM (p < 0.0001) and cervical extension active ROM (p < 0.0001) showed a significant difference before and after intervention in the thoracic spine self-mobilization group.

結果 二元配置分散分析ANOVAの結果、すべての測定結果において、時間の主効果は有意であった(p<0.05)。グループの主効果は、すべての測定結果で有意ではなかった(p>0.05)。頸部屈曲自動ROM(p=0.005)と頸部伸展自動ROM(p=0.036)のグループ×時間の交互作用は有意であった。頸椎屈曲自動ROM(p<0.0001)と頸椎伸展自動ROM(p<0.0001)における単純主効果の検定では、胸椎セルフモビライゼーション群で介入前後に有意差が認められた。

 



◆論文の結論

Conclusion: Patients with mechanical neck pain who carried out thoracic spine self-mobilization showed increases in active cervical flexion and extension ROM.

結論 頚部痛を持つ患者が胸椎のセルフモビライゼーションを行った場合、頸椎の屈曲・伸展自動ROMの増加が認められた。

 



◆まとめ

この研究の目的は、頚部痛を持つ患者に対して、他の介入をせずに胸椎のセルフモビライゼーションのみを行うことで、障害、痛み、頸椎の可動域に即自的な影響を及ぼすか調査するしています。

頚部痛を有する52名の患者(女性39名、男性13名)に2個のテニスボールを用いて胸椎の自動屈曲・伸展を行う胸椎セルフモビライゼーション群と、プラセボの胸椎セルフモビライゼーション群の2群に分けています。

介入前と介入直後に、Neck Disability Index(頚椎機能スコア)、visual analogue scale(VAS)、頸部の自動可動域(ROM)を評価した結果、胸椎セルフモビライゼーション群で、頸椎屈曲自動ROMと頸椎伸展自動ROMが介入前後に有意差が認められています。

頚部痛がある方に対して胸椎のセルフモビライゼーションをすることで、即時効果としてすぐに痛みは変わらないかもしれませんが、頚椎の関節可動域(ROM)は即時的に向上する可能性があるようです。

長期的に経過をみれば、頚部痛も軽減してくるかもしれませんね。

 



 

◆胸郭モビライゼーションの方法

上部胸椎のモビライゼーションは下記の過去の記事でご紹介していますので参考にしていただけたらと思います。

 胸肋関節モビライゼーションの方法(徒手療法)

 肋椎関節モビライゼーションの方法(徒手療法)

  椎間関節モビライゼーションの方法(徒手療法)

今回は、『頚部痛に対する胸椎セルフモビライゼーションの効果は?』について解説させていただきました。