こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『頚椎症性脊髄症に対する保存療法は有効か?~牽引療法編~』について解説させていただきます。
頚椎症性脊髄症の方への頚椎持続牽引療法を実施している施設は整骨院、接骨院も多くあると思われます。
実際に医師から『牽引療法』の指示が出ることも珍しくありません。
頚椎症性脊髄症の方への『牽引療法』は効果があるのでしょうか?
◆頚椎症性脊髄症とは
頚椎症性脊髄症は、頚椎脊柱管の狭い状態で頚椎の加齢性変化による脊髄圧迫に不安定性や外傷が加わって、脊髄麻痺を発症する疾患の総称とされています。
◆症状
・四肢のしびれ感(両上肢のみも含む)
・手指の巧緻運動障害(箸が不自由、ボタンかけが不自由など)
・歩行障害(小走り、階段の降り困難など)
・膀胱障害(頻尿、失禁など)
◆症候
・障害高位での上肢深部腱反射低下
・障害高位以下での腱反射亢進、病的反射の出現、myelopathy handを認めるもの
◆画像診断
・単純X線像で、椎間狭小、椎体後方骨棘、発育性脊柱管狭窄を認めるもの
・単純X 線像でみられる病変部位で、MRI、CT、または脊髄造影像上、脊髄圧迫所見を認める。
⇒診断の目安としては、症状や症候より予想される脊髄責任病巣高位と画像所見の圧迫病変部位が一致すること
頚椎症性脊髄症は50歳以上の発症が多く、男性に多いとされている(男性が約63~70%)。
頚椎症性脊髄症の発生頻度は、要治療患者は人口10万人あたり数人とされている。
『頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020 改定第3版』
頚椎症性脊髄症においては、2005年に初版の「頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン」が出版され、その10年後である2015年に改訂第2版が出版された。
そして2020年9月に『頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020 改定第3版』が南江堂から出版されました。
ガイドラインは約6年で時代遅れの傾向になることがあり3~5年で更新するべきとの見解があります。
このガイドラインは、世界中から有用な論文を様々な視点から検証し、科学的根拠のある論文を集め、再編されています。
【頚椎症性脊髄症 診療ガイドラインでの定義】
頚椎症性脊髄症においては明確な定義がないのが現状であります。
【頚椎症性脊髄症 診療ガイドラインでの定義】
「頚椎症性脊髄症は,頚椎脊柱管の狭い状態で加齢性の頚椎変化(後方骨棘,椎間板狭小と後方膨隆)による脊髄圧迫に,頚椎の前後屈不安定性や軽微な外傷が加わって脊髄麻痺を発症する疾患の総称」とされています。
【監修】日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会
2009年10月1日から2018年9月19日で、英文2,525論文、和文1,862論文から再編されて審査し、最終的に418論文が採択されている。
軽度および中等度の頚椎症性脊髄症に対する保存療法は有用か
この中から、
『軽度および中等度の頚椎症性脊髄症に対する保存療法は有用か』
という項目がありますので見てみたいと思います。
この項目では世界中の論文8編から再編され、そのうち和文は2編です。
さらにその中から、牽引療法に関する論文は3編でした。
推奨文と推奨グレードの基準に関しては以下の通りです。
【推奨文】
軽度および中等度の頚椎症性脊髄症に対する保存療法は症状の進行を遅らせる可能性があり、施行することを弱く推奨する
・推奨度:2
・合意率:100%
・エビデンスの強さ:D
保存療法全般に関してはエビデンスD、推奨度2ということでかなりエビデンスは低いですが提案はされている状態です。
◆頚椎牽引療法について
持続牽引療法については2施設からの報告があるようです。
・ひとつめの施設では、JOAスコアが13点以上の患者を対象に、治療開始時よりgood Samartian法による頚椎持続牽引を施行した65例の保存療法群(頚椎症性脊髄症37例)と手術を施行した52例を比較している。平均3.7年の観察期間で手術療法ほどの改善はないが、保存療法群で治療前より有用なJOAスコアの改善を認めた。しかし、同施設で行われた前向き研究では、頚椎症性脊髄症55例に対して、同様の保存療法で平均78.9か月の長期経過観察をしたところ、JOAスコアの改善にはいたらなかったとのこと。そのうち41例(75%)の患者は最終観察時まで神経機能を維持していたが、14例(25%)は神経症状が悪化して、12例が後に手術を施行したと報告されている。
もうひとつのKongら(2013)の報告でも長期観察においてはJOAスコアの改善にいたっていない。
これらのことから持続頚椎牽引療法は短期的には治療効果が得られる報告もあるが、長期的に考えると治療効果については乏しい結果となっております。
しかし、報告されている症例数、論文数が少ないのが現状であるため、今後、症例数、論文数の増加に伴いエビデンスが変化する可能性もあるかと思われます。
今回は、『頚椎症性脊髄症に対する保存療法は有効か?~牽引療法編~』
について解説させていただきました。