こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『足関節捻挫に対するPNFおよびバランストレーニングの効果は?』について解説させていただきます。
足関節捻挫は、最も頻度の高い足部、足関節外傷であり、またスポーツ外傷の約30%を占めるとされています。
足関節捻挫のうちの約85%が足関節外側靭帯損傷(Reed ME,et al:AAOS.2009)で、中等度以上の捻挫では、受傷後1年後に30~50%で痛みや不安定感の症状が残存する(Doherty C,et al:Sports Med.2014)と報告されています。
また、初回、捻挫受傷後3年以内に3~34%で再捻挫する(van Rijn RM ,et al:Am J Med.2008)とされています。
足関節捻挫は再発率が高く、内反捻挫の繰り返しにより症状が慢性化し、40~75%が慢性足関節不安定症(CAI)に移行すると報告されています。(Geber JP ,et al:Foot Ankle Int.1998)
そんな中2018年に、足関節捻挫に対するプロプリオセプティブ(自己受容性感覚)・トレーニングの治療効果を報告している論文が海外で報告されています。
プロプリオセプティブ(自己受容性感覚)・トレーニングで代表的な
・PNF:proprioceptive neuromuscular facilitation(固有受容性神経筋促通法)
・バランストレーニング
この2つの治療効果を検証しているようです。
内容が気になるところですね。
ちなみにPNFは1940年代にアメリカの神経生理学者である医師や理学療法士によって神経生理学的原理基に開発されたリハビリテーション手技とされています。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
J Back Musculoskelet Rehabil (IF: 1.4; Q4)
. 2018;31(3):437-446.
doi: 10.3233/BMR-170836.
Effects of two proprioceptive training programs on ankle range of motion, pain, functional and balance performance in individuals with ankle sprain
2つのプロプリオセプティブ(自己受容性感覚)・トレーニング・プログラムが足関節捻挫者の足関節可動域、疼痛、機能およびバランスパフォーマンスに及ぼす影響
Lazaros Lazarou, Nikolaos Kofotolis, Georgios Pafis, Eleftherios Kellis
- PMID: 28946541 DOI: 10.3233/BMR-170836
Abstract
Background: Following ankle sprain, residual symptoms are often apparent, and proprioceptive training is a treatment approach. Evidence, however, is limited and the optimal program has to be identified.
背景 足関節捻挫後、残存する症状が明らかになることが多く、プロプリオセプティヴ(自己受容性感覚)・トレーニングが治療アプローチの一つとなっている。しかし、エビデンスは限られており、最適なプログラムを特定する必要がある。
Objective: To investigate the effects of two post-acute supervised proprioceptive training programs in individuals with ankle sprain.
目的 足関節捻挫をした人を対象に、2つの急性期後の指導付きプロプリオセプティブ(自己受容性感覚)・トレーニング・プログラムの効果を調査すること。
Methods: Participants were recruited from a physiotherapy center for ankle sprain rehabilitation. In a pre-post treatment, blinded-assessor design, 22 individuals were randomly allocated to a balance or a proprioceptive neuromuscular facilitation (PNF) group. Both groups received 10 rehabilitation sessions, within a six-week period. Dorsiflexion range of motion (ROM), pain, functional and balance performance were assessed at baseline, at the end of training and eight weeks after training.
方法は以下の通り。参加者は、足関節捻挫のリハビリテーションを行う理学療法センターから募集した。事前-事後治療の盲検下で、22名をバランス群と固有受容性神経筋促通(PNF)群に無作為に割り付けた。両群とも、6週間の間に10回のリハビリテーションを行った。ベースライン時、トレーニング終了時、トレーニング8週間後に、背屈可動域(ROM)、疼痛、機能的パフォーマンス、バランスパフォーマンスを評価した。
Results: Follow-up data were provided for 20 individuals. Eight weeks after training, statistically significant (p< 0.017) improvements were found in dorsiflexion ROM and most functional performance measures for both balance and PNF groups. Eight weeks after training, significant (p< 0.017) improvements in the frontal plane balance test and pain were observed for the balance group.
結果は以下の通り。20名のフォローアップデータが得られた。トレーニングの8週間後には、バランス群とPNF群の両方において、背屈ROMとほとんどの機能的パフォーマンス指標に統計的に有意な(p<0.017)改善が認められた。バランス群では、トレーニング8週間後に、前額面バランステストと疼痛において、有意な(p<0.017)改善が認められた。
◆論文の結論
Conclusions: Balance and PNF programs are recommended in clinical practice for improving ankle ROM and functional performance in individuals with sprain. Balance programs are also recommended for pain relief.
結論 バランスプログラムとPNFプログラムは、捻挫患者の足関節ROMと機能的パフォーマンスを改善するために、臨床現場で推奨される。また、バランスプログラムは疼痛緩和にも推奨される。
◆まとめ
上記論文では足関節捻挫をした人22名を、バランス群と固有受容性神経筋促通(PNF)群の2群に振り分け、2群とも、6週間の間に10回のリハビリテーションを行っています。
介入前、介入後、介入8週間後に、背屈可動域(ROM)、疼痛、機能的パフォーマンス、バランスパフォーマンスを評価しています。
気になる結果は、トレーニングの8週間後に、バランス群とPNF群の2群において、背屈ROMとほとんどの機能的パフォーマンス指標に統計的に有意な改善が認められています。バランス群では、トレーニング8週間後に、前額面バランステストと疼痛において、有意な改善が認められています。
よって、バランストレーニングとPNFは、足関節捻挫患者の足関節ROMと機能的パフォーマンスを改善させることがわかりました。
さらに、バランストレーニングは疼痛緩和にも推奨されるという結果となっています。
今回は、『足関節捻挫に対するPNFおよびバランストレーニングの効果は?』について解説させていただきました。