こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『腱板損傷に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきます。
●腱板断裂
腱板とは肩関節周囲筋である棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋で構成されています。
腱板断裂は50~60代で増加していく傾向にあると報告されています。
腱板断裂の代表的な症状は上肢の挙上機能不全ですが、痛みに関しては、ある人とない人がいらっしゃいます。
腱板断裂の受傷機転としては主に2つあるとされています。
●外傷による腱板断裂
●退行変性(老化)による腱板断裂
そんな中、2021年に、腱板損傷に対して多血小板血漿(PRP:platelet-rich plasma)療法の効果があるのかを検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果がとても気になるところです。
◆PRP療法とは
platelet-rich plasma:PRP療法(多血小板血漿)とは自分の血液を採取して、特殊な技術を駆使し、血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出して、PRP(多血小板血漿)を作成します。
そして、自分の傷んでいる部位に注射することで早期治癒を図ります。
早期の競技復帰のために、PRP療法を行っているプロスポーツ選手なども多くいらっしゃいます。
ヨーロッパやアメリカでは、自己治癒力をサポートする治療として頻繁に行われているようです。
現時点(2022年4月)で多血小板血漿(PRP)療法は自費診療ですので、少し治療費は高くなります。
◆論文紹介
Randomized Controlled Trial
Arthroscopy (IF: 4.77; Q1)
w. 2021 Feb;37(2):510-517.
doi: 10.1016/j.arthro.2020.10.037. Epub 2020 Oct 28.
Platelet-Rich Plasma in Patients With Partial-Thickness Rotator Cuff Tears or Tendinopathy Leads to Significantly Improved Short-Term Pain Relief and Function Compared With Corticosteroid Injection: A Double-Blind Randomized Controlled Trial
腱板部分断裂または腱板障害患者に対する多血小板血漿(PRP)は、ステロイド注射と比較して短期的な疼痛緩和および機能の有意な改善をもたらす。二重盲検無作為化比較試験
Cory A Kwong 1, Jarret M Woodmass 2, Eva M Gusnowski 3, Aaron J Bois 4, Justin Leblanc 4, Kristie D More 5, Ian K Y Lo 4
Affiliations expand
- PMID: 33127554 DOI: 10.1016/j.arthro.2020.10.037
Abstract
Purpose: To perform a randomized controlled trial comparing platelet-rich plasma (PRP) with standard corticosteroid (CS) injection in providing pain relief and improved function in patients with rotator cuff tendinopathy and partial-thickness rotator cuff tears (PTRCTs).
概要
目的】腱板障害および腱板部分断裂(PTRCT)患者の疼痛緩和と機能改善について、多血小板血漿(PRP)と標準的なコルチコステロイド(CS)注射を比較する無作為化比較試験を実施すること。
Methods: This double-blind randomized controlled trial enrolled patients with ultrasound-proven or magnetic resonance imaging-proven PTRCTs who received either an ultrasound-guided PRP or CS injection. Patients completed patient-reported outcome assessments at baseline and at 6 weeks, 3 months, and 12 months after injection. The primary outcome was improvement in the visual analog scale (VAS) score for pain. Secondary outcomes included changes in American Shoulder and Elbow Surgeons (ASES) and Western Ontario Rotator Cuff Index (WORC) scores. Treatment failure was defined as subsequent injection, consent to undergo surgery, or operative intervention.
方法 この二重盲検ランダム化比較試験では、超音波で証明された、または磁気共鳴画像で証明されたPTRCTの患者を登録し、超音波ガイド下PRPまたはCS注射のいずれかを投与した。患者は、ベースライン時、注入後6週間、3ヶ月、12ヶ月の時点で患者立脚型のアウトカム評価を行った。主要アウトカムは,疼痛に関する視覚的アナログスケール(VAS)スコアの改善であった.副次的アウトカムは,米国肩肘外科医学会(ASES)スコアと西オンタリオ腱板指数(WORC)スコアの変化であった.治療失敗の定義は、その後の注射、手術の同意、または手術の介入とした。
Results: We followed up 99 patients (47 in the PRP group and 52 in the CS group) until 12 months after injection. There were no differences in baseline patient demographic characteristics including age, sex, or duration of symptoms. Despite randomization, patients in the PRP group had worse baseline VAS (46.0 vs 34.7, P = .01), ASES (53.9 vs 61.8, P = .02), and WORC (42.2 vs 49.5, P = .03) scores. At 3 months after injection, the PRP group had superior improvement in VAS (-13.6 vs 0.4, P = .03), ASES (13.0 vs 2.9, P = .02), and WORC (16.8 vs 5.8, P = .03) scores. There were no differences in patient-reported outcomes at 6 weeks or 12 months. There was no difference in the rate of failure (P = .31) or conversion to surgery (P = .83) between groups.
結果 99名の患者(PRP群47名、CS群52名)を注射後12ヶ月までフォローアップした。年齢、性別、症状の持続期間など、ベースラインの患者人口統計学的特徴に差はなかった。無作為化にもかかわらず、PRP群の患者はベースラインのVAS(46.0 vs 34.7, P = 0.01)、ASES(53.9 vs 61.8, P = 0.02)、およびWORC(42.2 vs 49.5, P = 0.03)スコアが悪化していた。注入後3ヵ月では、PRP群はVAS(-13.6 vs 0.4, P = 0.03)、ASES(13.0 vs 2.9, P = 0.02), WORC(16.8 vs 5.8, P = 0.03)スコアに優れた改善を示している。6週間後および12ヵ月後の患者報告アウトカムに差はなかった。失敗(P = 0.31)または手術への転換(P = 0.83)の割合に群間差はなかった。
◆論文の結論
Conclusions: Patients with PTRCTs or tendinopathy experienced clinical improvement in pain and patient-reported outcome scores after both ultrasound-guided CS and PRP injections. Patients who received PRP obtained superior improvement in pain and function at short-term follow-up (3 months). There was no sustained benefit of PRP over CS at longer-term follow-up (12 months).
結論 PTRCTsまたは腱板炎の患者は、超音波ガイド下CS注入とPRP注入の両方により、疼痛および患者報告アウトカム・スコアの臨床的改善を経験した。PRPを投与された患者は、短期追跡調査(3ヵ月)において、痛みと機能において優れた改善を得た。より長期の追跡調査(12 ヵ月)では,CS に対する PRP の持続的な利点は認められなかった.
◆まとめ
上記論文では部分腱板断裂患者99名に対して、疼痛および機能改善について、PRP(多血小板血漿)療法群47名とコルチコステロイド 群52名の2群に振り分け、治療効果比較をしております。
治療前、治療6週間後、3ヶ月後、12ヶ月後の時点で疼痛(VAS)、American Shoulder and Elbow Surgeons(ASES)スコア、Western Ontario Rotator Cuff Index(WORC)スコアにて評価しております。
治療後3ヵ月のPRP群はVAS、ASESスコア、WORCスコアで改善を示していたそうです。
6週間後および12ヵ月後の評価では2群間での差はなかったとのことです。
よって、上記論文の結果から考えると、腱板部分断裂に対する多血小板血漿(PRP)療法は、治療後3か月での成績は優れていることがわかりました。
比較的短期成績では効果がありますが、長期成績についての効果は乏しいかもしれませんね。
今回は、『腱板損傷に対する多血小板血漿(PRP)療法の効果は?』について解説させていただきました。