こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『胸郭可動性の評価方法~前胸部柔軟性テスト~(Tr-AFD測定)』
について解説させていただきます。
胸郭は鎖骨、肋骨、胸骨、胸椎、肩甲骨で構成されており、おおよそ60歳以降から胸郭の可動性が低下するとされています。
胸郭に関わる関節は下の図のように、胸鎖関節、肩鎖関節、胸肋関節、椎間関節、肩甲胸郭関節、肋椎関節などがあります。
胸郭の可動性を保つ(回復させる)ためには上記の関節へアプローチする技術は重要になるかと思います。
◆胸郭の可動性(柔軟性)が低下するとどのような影響がある?
この図はJoint-by-Joint theoryの図です。
可動性が必要な関節と安定性が必要な関節は隣同士に配列されているというセオリーです。
可動性が必要な胸郭が拘縮し、可動性が失われてしまいますと、隣の関節である頚部、肩肩関節、腰椎に負担がきて故障してしまいます。
よって、頚椎、肩関節、腰椎に障害がある時、もしくは障害予防の際に胸郭へのアプローチは重要になります。
胸郭の可動性が回復すれば、頚部、肩関節、腰椎へ良い影響をおよぼす可能性が高くなるかと思われます。
◆胸郭可動性(柔軟性)の評価方法①~胸郭拡張差測定~
簡便な胸郭可動性の評価方法として、最大吸気と最大呼気の胸郭拡張差をテープメジャーで測定する方法があります(田平一行:理学療法学.1996)。
詳しくは『胸郭可動性の評価方法~胸郭拡張差測定~』の記事をご参照ください。
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◆胸郭可動性(柔軟性)の評価方法②~前胸部柔軟性テスト~(Tr-AFD測定)~
胸郭可動性の評価方法として前胸部柔軟性テスト(Trunk-Acromion-Floor-Distance;以下、Tr-AFDテスト)の有用性が報告されています(伊藤孝信 他, 2012)(篠田光俊 他, 2015)。
Tr-AFDテストは胸椎伸展や肩甲骨後傾、内転、胸郭の機能的変形まで包括し、投球動作において必要となる可動性を評価するものとして考案されています。
★Tr-AFD測定の方法
・被検者の測定肢位はベッド上にて側臥位とします
・枕は頚部中間位となるように高さを調整します
・両股関節・膝関節を屈曲90°位とし、体幹は中間位にいます
・検者は骨盤と腰椎を徒手にて固定した状態で,肩甲帯を背側へ最大限に捻転させます
・肩峰後角とベッドとの距離をメジャーにて1㎝単位で測定します
※肩甲帯を捻転させる際に、頚椎も一緒に回旋させるか、させないかでTr-AFDの数値が大きく変わります。どの論文にも頚椎の操作は記載がないため、検者が方法を統一させることが重要かと思います
篠田ら(2015)はTr-AFDテストでは肩甲胸郭関節、肩鎖関節、胸鎖関節、胸郭の可動性が関与し、それぞれを構成する靭帯、関節包、筋の柔軟性が影響すると述べています。
つまりTr-AFDテストは前胸部だけでなく、胸郭可動性を評価できるテストである可能性があると思われます。
Tr-AFDテストはメジャーにて簡便に測定可能であり、臨床上でも使いやすいテストであると思います。
また、メジャーがない場合でも、〇〇横指や拳1つ分などで距離をおおまかにとらえておいても良いかと思います。
健常者に対するTr-AFDテストの信頼性については、検者内信頼性がICC(1,1)=0.80-0.92、検者間信頼性が検者間信頼性はICC(2,1)=0.71-0.9014)と比較的高い信頼性が報告されています(小坂健二 他:2020)。
また、上記論文では健常成人15名30肩(男性9名,女性6名,平均年齢25.9±4.3歳)において、Tr-AFDテストの測定値は最大24cm、最小7cm、平均は約15cmと記載されています。
今回は、『胸郭可動性の評価方法~前胸部柔軟性テスト~(Tr-AFD測定)』
について解説させていただきました。