こんにちは!
運動器専門のリハビリスタッフです!!
いつもお世話になります。
今回は、『慢性腰痛に対する胸郭モビライゼーションの効果は?』について解説させていただきます。
慢性腰痛は腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛、筋筋膜性腰痛など原因が様々です。
関節症を包括的に考える理論の中に、Joint-by-Joint theoryという理論があります。
Joint-by-Joint theoryは、可動性が必要な関節と安定性が必要な関節が、隣同士に配列されているというセオリーです。
可動性が必要な胸郭が拘縮し、可動性が失われると、近隣関節である頚部、肩関節、腰椎に負担がきて故障することがあります。
よって頚椎、肩関節、腰椎に障害がある時、もしくは障害予防の際に、胸郭へのアプローチは重要になります。
胸郭は鎖骨、肋骨、胸骨、胸椎、肩甲骨で構成されており、60歳以降から柔軟性が失われていくとされています。
よって慢性腰痛に対して、胸郭のモビライゼーションは有効であること可能性が高いと予測されます。
そんな中、2020年に、慢性腰痛をもつ患者への胸郭モビライゼーションと腰椎スタビライズ・エクササイズの効果を検証した論文が海外で報告されております。
この論文の検証結果が気になるところです。
◆論文紹介
J Complement Integr Med (IF: 1.26; Q2)
. 2020 Jul 27;18(2):419-424.
doi: 10.1515/jcim-2019-0327.
Effect of lumbar stabilization exercises and thoracic mobilization with strengthening exercises on pain level, thoracic kyphosis, and functional disability in chronic low back pain
慢性腰痛の疼痛レベル、胸椎前彎、機能障害に対する腰椎安定化エクササイズと胸郭モビライゼーションによる強化エクササイズの効果
Divya 1, Adila Parveen 1, Shibili Nuhmani 2, Mohammed Ejaz Hussain 1, Moazzam Hussain Khan 1
- PMID: 32712591
- DOI: 10.1515/jcim-2019-0327
Abstract
Objectives: The purpose of this study was to compare the effect of lumbar stabilization exercise and thoracic mobilization with strengthening exercise on pain level, thoracic kyphosis, and functional disability in patients with Chronic Low Back Pain (CLBP).
目的は以下の通りです。本研究の目的は、慢性腰痛(CLBP)患者の疼痛レベル、胸椎後彎、機能障害に対する腰椎安定化エクササイズと胸郭モビライゼーションによる強化エクササイズの効果を比較することであった。
Methods: Thirty patients with CLBP were recruited based on inclusion and exclusion criteria. They were randomly allocated into two groups i. e., Group A (n = 15) and B (n = 15). Group A has received lumbar stabilization exercise and thoracic mobilization with strengthening exercises and Group B received only lumbar stabilization exercises, three sessions per week for 4 weeks both the groups. The conventional moist hot pack and interferential therapy was given to both the groups before the administration of exercise. Pre- and post-treatment pain level, Thoracic kyphosis, and functional disability were taken and statistical analysis was done.
方法は以下の通りです。慢性腰痛患者30名を対象とし、除外基準を設けた。彼らは無作為に2つのグループ、すなわちグループA(n = 15)とB(n = 15)に割り当てられた。A群は腰椎安定化エクササイズと胸郭モビライゼーションに加えて強化エクササイズを行い、B群は腰椎安定化エクササイズのみを行い、両群とも週3回、4週間のセッションを行った。両群ともに、運動を行う前に従来のホットパックと干渉療法を行った。治療前と治療後の痛みのレベル、胸椎の後彎、機能障害を測定し、統計的な分析を行った。
Results: The result of this study showed significant improvement from pre-intervention to post-intervention on pain level, thoracic kyphosis, and functional disability for both the groups i. e., Group A and group B but Group A showed greater changes in Numerical pain rating scale (NPRS), Kyphotic index, and Oswestry disability index (ODI), than Group B.
結果は以下の通りです。本研究の結果、A群とB群の両群において、疼痛レベル、胸椎後彎、機能障害について、介入前から介入後にかけて有意な改善が見られたが、A群はB群に比べ、Numerical pain rating scale(NPRS)、Kyphotic index、Oswestry disability index(ODI)の変化が大きかった。
※Numerical pain rating scale(NPRS):疼痛スコア
※Kyphotic index:脊椎弯曲の程度の測定値
※Oswestry disability index(ODI):患者立脚型の腰痛評価チャート
◆論文の結論
Conclusions: The 4 week of therapeutic intervention including lumbar stabilization exercise with thoracic mobilization and strengthening exercise showed significantly reduction of the thoracic kyphosis, pain level and functional disability in patients with Chronic Low Back Pain.
結論としては 慢性腰痛患者に対して、腰部の安定化エクササイズと胸郭モビライゼーション・強化エクササイズを含む4週間の治療介入を行ったところ、胸椎後彎、疼痛レベル、機能障害が有意に減少した。
◆まとめ
上記論文では慢性腰痛患者30名を腰部の安定化エクササイズ+胸郭モビライゼーション群15名と腰部の安定化エクササイズ群15名で比較しています。両群ともに、運動を行う前に従来のホットパックと干渉療法を行っています。両群とも週3回、4週間治療を行ったところ、両群ともに疼痛レベル、胸椎後彎、機能障害が有意な改善しています。
特に、腰部の安定化エクササイズに胸郭モビライゼーションを追加すると治療効果がより大きいと結論付けています。
やはりJoint-by-Joint theorであるように、腰椎の近隣関節である胸郭へのアプローチは慢性腰痛に対して有効のようです。
◆胸郭モビライゼーションの方法
胸郭のモビライゼーションは下記の過去の記事でご紹介していますので参考にしていただけたらと思います。
今回は、『慢性腰痛に対する胸郭モビライゼーションの効果は?』について解説させていただきました。