こんにちは！

運動器専門のリハビリスタッフです！！

いつもお世話になります。

今回は、『妊婦のこむら返りに対してマグネシウム摂取は有効か？』について解説させていただきます。

いわゆる“こむら返り”は、骨格筋に不随意に出現する疼痛を伴った急激な筋攣縮であり、ふくらはぎ（こむら）に高頻度に生じることが多いため、このように称されています。（髙山ら.2002 ）

こむら返りの発生頻度は年齢とともに増加し、多くの高齢者を苦しめる疾患の一つでもあります。（辻隆宏.2019）

高齢者では夜間によく起きることがあり、海外では”Night cramps”といわれてたりしています。

その発生機序についてはさまざまな報告があります。

変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアおよびこれらの疾患に対する手術後によく起こることが知られています。

それ以外にも、脱水症、人工透析、肝硬変、糖尿病、下肢静脈瘤など多くの内科的疾患も原疾患となり得るともされています。

また、妊婦との関連についても報告されています。

33～50％の妊婦はこむら返りを経験しており、週数が進むにつれて、症状が増悪する傾向にある。（Hensley JG:J Midwifery Womens Health.2009）

妊娠中のこむら返りの発生頻度は明らかにされていいませんが、血中のカルシウム、マグネシウムの減少、下肢の筋肉疲労、循環不全（中島義之.2013）、末梢神経の異常興奮（Miller TM,et al.2005）などの影響が考えられます。

妊婦に起因するこむら返りの治療としては、非薬物療法として下肢のストレッチ（Zhou K,et al.2015）、薬物療法として海外ではマグネシウム、カルシウム、ビタミンBなどの内服をさせることが多いようですが、エビデンスとしては不十分であるとされています。（Blyton F et al.2012）

そんな中、2020年に妊婦に対して経口マグネシウム摂取が有効かを調査した論文が海外で報告されています。

どのような内容が記載されているか気になるところです。

◆論文紹介
Abstract
◆論文の結論
◆まとめ

◆論文紹介

Randomized Controlled Trial

PLoS One (IF: 3.24; Q2)

. 2020 Jan 10;15(1):e0227497.

doi: 10.1371/journal.pone.0227497. eCollection 2020.

Oral magnesium supplementation for leg cramps in pregnancy-An observational controlled trial

妊娠中の下肢痙攣に対するマグネシウムの経口補給-観察的比較試験

Carla Adriane Leal de Araújo¹, Suélem Barros de Lorena², Guilherme Camelo de Sousa Cavalcanti², Gabriel Landim de Souza Leão², Geraldo Padilha Tenório², João Guilherme B Alves¹

Affiliations expand

PMID: 31923242　PMCID: PMC6953803　DOI: 10.1371/journal.pone.0227497

Abstract

Background: Oral magnesium for leg cramps treatment in pregnancy is a controversial issue according to recent Cochrane systematic review. This study aims to evaluate the efficacy of Mg++ supplementation in leg cramps treatment in pregnancy.

概要

背景妊娠中の下肢痛治療における経口マグネシウムは、最近のCochrane系統的レビューによると、議論のある問題である。本研究は、妊娠中の下肢痙攣治療におけるMg++の補給の有効性を評価することを目的とする。

Methods: This observational clinical trial studied 132 pregnant women with leg cramps in the first trimester of pregnancy. At baseline, 74 (56.3%) had two leg cramps episodes per week, 28 (21.1%) three episodes, 13 (9.8%) four episodes and 9 (6.8%) five or more episodes. They were randomized 1:1 to 300 mg/day of oral Mg++ citrate (n = 66) or placebo (n = 66). The primary outcome was the frequency of leg cramps episodes per week reported by pregnant women. Secondary outcomes were the ocurrence of leg cramps and oral magnesium side effects.

方法この観察臨床試験は、妊娠第1期の下肢痙攣を有する132名の妊婦を対象とした。ベースライン時、74名（56.3%）が週に2回、28名（21.1%）が3回、13名（9.8%）が4回、9名（6.8%）が5回以上の下肢けいれんを経験していた。彼らは、クエン酸Mg++の300 mg/日経口投与（n = 66）またはプラセボ（n = 66）に1対1で無作為に割り付けられた。主要アウトカムは，妊婦が報告した 1 週間あたりの脚のけいれんエピソードの頻度であった．副次的アウトカムは、脚のけいれんの発生と経口マグネシウムの副作用であった。

Results: 130 pregnant women completed the study and the two groups were comparable according to some sociodemographic and clinical characteristics. After 4 weeks of intervention it was observed a 28.4% (39/132) (CI 95%: 20.9-37.0) reduction of leg cramps in all participants and no difference between the two groups was found; reduction of 27.2% (18/66) (CI 95%: 17.0-39.6) in Mg++ group and 32.8% (21/66) (CI 95%: 21.6-45.7) in the placebo group. The OR of leg cramps was 1.3 (CI 95%: 0.6-2.9), p = 0.527, taking the placebo group as reference. Among pregnant women who remained with leg cramps the mean of leg cramps episodes per week showed no significance difference between the Mg++ and placebo groups; t-student test: p = 0.408. Four pregnant women showed gastrointestinal side effects; 2 in each group had nauseas and diarrhoea.

結果は以下の通りです。130人の妊婦が研究を完了し、2つのグループはいくつかの社会人口学的および臨床的特徴によって同等であった。4週間の介入後、全参加者において28.4％（39/132）（CI 95％: 20.9-37.0）の下肢痙攣の減少が観察され、2群間に差は見られなかった。Mg++群では27.2％（18/66）（CI 95％: 17.0-39.6 ）、プラセボ群では32.8％（21/66）（CI 95％: 21.6-45.7 ）減少したのだ。プラセボ群を参考にすると、下肢痙攣のORは1.3（CI 95%: 0.6-2.9）、p=0.527であった。脚のけいれんが残った妊婦では、1週間あたりの脚のけいれんのエピソードの平均値は、Mg++群とプラセボ群の間に有意差はなかった（t-student検定：p＝0.408）。4人の妊婦が胃腸の副作用を示した。各グループ2人が吐き気と下痢を起こした。